第2話 邂逅②
「こいつよ!こいつだわ!」
と言われてからあれよあれよという間に俺は外に出ていた。久しぶりに太陽を浴びた。
空は快晴で太陽は俺たちを照りつけていたが、不快にならない心地よい温かさだった。
「あんた名前はなんていうの?」
前を歩いていた女は振り返って俺に聞いてきた。
「…なまえ。そういえば俺の名前はなんていうんだろうな?」
というと、二人はぎょっと目を見開いて、たちすくんでいた。
「…名前覚えていないのですか?」
と背の高い男がおそるおそる聞いてきた。
「うん。覚えてないや。」
「そう…ですか」
やや困惑気味にそう返ってきた。
「まぁ俺は物心がつく前からあそこにいたから、そもそも名前があったかどうかも曖昧なんだ。…だからといってはなんだが、あんたたちが俺の名前を決めてくれないか?」
そういうと二人は顔を見合わせ俺の方を向いた。
「分かったわ。どんな名前がいいとかある?」
「なんでもいい。名前に頓着はないんだ。」
そういうと女は腕を組み瞳を閉じて考え始めた。
〜数分後〜
まぁまぁな時間、女は悩んでいた。俺としては、ぱっと決めてもらってよかったのだけど、その旨を伝えたら、
「ダメよ!名前は一生残るものだから!」
と叱られてしまった。でも俺なんかのために悩んでくれているのだから、悪い気はしなかった。
すると彼女は目を開けて俺に指を指した。
「あなたの名前はノア。ノアにするわ!
これからは、ノア•ティメールと名乗りなさい!」
「ノアか、いい名前だな。ところでティメールってのはなんだ?」
「代々受け継がれる家系の名です。つまり、あなたの場合だとノアは個人を指し、ティメールはあなたが属する家族のことを指しています。」
と男の方が答えてくれた。
「ただお嬢様、彼はまだ奴隷の身、ですので家名を与えるのは早いのでは?」
と続けた。女の方はそうだったという顔していた。
「確かにその通りだったわ。そうね、今あなたは、ノア、ただのノアよ。いい?」
「わかったよ。俺の名前も決まったことだしあんたたちの名前も教えてくれないか?」
「私の名前はカノよ。そしてこっちの長身の男性が
レイン•レオバート。」
「これからよろしくお願いいたします。」
「レオバート?ティメールじゃないのか?」
「私はティメール家に雇われている身ですので」
「そうなのか。まぁいいや。よろしくな、カノ、そしてレイン。」
というと、カノはむすっとした顔で俺の方を見ている。
「ねぇ、なんで私のこと呼び捨てなわけ?あんたはまだ奴隷の身で私は貴族なのよ?ティメールの家名を背負うまでは私のことはお嬢様と呼びなさい。レインのことは…」
とカノはチラッとレインの方に目線をうつす。するとレインはニコッと笑い、
「私のことはどうとでもお呼びください。先ほどのように呼び捨てでも構いませんよ。」
「分かった分かった。次から気をつけるよ。」
「後、私の前ではなるべく敬語を使うように!
わかった!?」
「わかっ…りました。気をつけます。」
そういうと、彼女はそれでよし!と言わんばかりの笑顔でこちらを見てきた。
話が一区切りついたので、一つ疑問に思っていたことを口に出してみた。
「そういうば、俺と会った時に言っていた「こいつ!こいつだわ!」って一体なんだったんだ?」
「あぁ、あれね。あれはノア、あなたが王技を持っているからよ。」
……オウギ?
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