5話 熱愛、その裏に

【イシュタル・ホラーティウスとエミル・ミュラー熱愛】


「なんなんですか!この記事は!少し一緒に仕事をしただけなのに!」レオンは新聞を持ってくるなりぷんぷん!と怒っている。


「事実だからいいんじゃないか?」


事実ではないが。薔薇の門番のゲームを観戦しエミル・ミュラーとの契約をしてから四週間。彼とは一週間に一度“密会”をしている。青い顔をして固まっているレオンはまあ、いいや。大丈夫だろう。


表向きは若い恋人を演じているが裏ではそうじゃない。エミルは自分のチームメイトを救うためにイシュタルと契約し、イシュタルは皇室の情報を得るために契約をした。


『皇室から仲間を守ってほしい』というのがエミルの望みだった。皇室から莫大な援助をもらっている薔薇の門番は皇室に対して常に言いなりだ。


なかには“したくない接待”をしなければいけないメンバーもいるという。


イシュタルは「援助を受けて裕福になるならよいではないか」といったがチームはああ見えて皇室のおかげで崩壊寸前だという。薔薇の門番とのスポンサー契約に踏み切ったとして、皇室との癒着ゆえに造像していたより難航しそうだと思った。


次に開催される皇室主催の行事は来週の建国記念日に開かれる式典だ。式典の後に開かれるパーティーにエミルの恋人としてイシュタルが同行する手はずになっている。


ところが、今朝皇室からレオンへのパーティーの招待状が届いたのだ。イシュタルが参加するならば腕の立つ用心棒が必要ではないのか、と。このことはまだレオンには話していない。しかし、皇室からの招待である以上参加せざるを得ない。イシュタルはため息を一つ付いた。


「レオン、一つ頼みたいことが増えた。」


「はい、アイーダ様。なんでもお伺いしますよ。」


イシュタルは頭の中に思い描いていたとある“作戦”をレオンに説明した。



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