Day 4 フューチャーテーブルを目指して

 翌日、いつも通り11時に会場へ到着した。しかし、誰もいない。ディーラーさえもおらず、2つの会場を覗いてもメインイベントは始まっていない。

 どうやら時間を間違えたようだ。今日だけは1時間遅れでスタートするらしい。前日はインマネが決定するまでプレイしていたため、終了したのは深夜だった。会場にアナウンスがあったのだが、聞き逃していたようだ。昨日の負けは、やはりショックだったのだろう。


 今日からはギャンブルしなければならない。もうスタックは少ない。飛ぶことを恐れ、守りに入っては負けるだけだ。積極的にオールインしなければ、上位には辿り着けないだろう。俺の実力を出し切れなければ野垂れ死んでしまう。今日は勝負の日なのだ。



 1時間ほど待ち、プレイ開始。とりあえず、30分ほど無難にプレイしながらテーブルを観察する。今日は厳しいテーブルのようだ。強いプレイヤーが多い。それでも負けてはいられない。

 早速、タイトなイメージを利用して、UTGから4♡3♡でレイズした。BBだけがコールしてフロップへ進む。


フロップ:K♦7♡4♦

 約50,000のポットに対して20,000のベットを打つ。相手はすぐにフォールドした。この調子でガンガン行こう。



 攻め続けなければ生き残れない。しかし、ハンドが続かない。十分にプレイできず、段々とスタックが削れていく。結果が振るわないまま、トーナメント開始から1時間が経った。

 それでも朗報がある。早くも300人が飛んで、賞金が2,000ドルも上昇した。昨日とは人数の減り方が違う。インマネが決まって、皆気が緩んでいる様だ。この調子で人数が減り続ければ、耐えているだけでも賞金が増え続けるだろう。


 スタックが少なくなったため、何度もオールインを繰り返す。

 8♠8♣、A♦9♦、K♣J♣をプリフロップでオールインして、ブラインドを回収していく。

 どうにか耐え続け、ブラインドは上昇した。スタックは169,000で、ブラインドは5,000/10,000だ。何もしなければ、7周弱で飛んでしまう。オールインを続けなければ、負けてしまうだろう。



 BBでK♠9♠が来た。MPのレイズにSBがコール。私もコールする。


フロップ:7♠5♠5♡

 フラッシュドローが出来た。SBはチェック。レイザーは興味がなさそうにしているように見える。俺は時々、プレイヤーの思考を感じられることがある。ブラフオールインして、全員フォールドした。この勝ちは大きい。スタックがかなり増えて、230,000だ。


 ここで、へ移動することが決まった。1時間後、次のブラインで移動だ。是非とも行きたい。フューチャーテーブルは俺の憧れだ。そこでプレイすれば、テレビで放送される。ポーカープレイヤーとして箔が付く。そのためには、リスクを負うわけにはいかない。

 この気持ちが俺の敗因だった。A♣9♠や2♡2♣など、ギリギリのハンドをオールイン出来ず、フォールドしてしまう。有名になることなど意味がない。俺の目的は勝つことだったはずだ。勝つためには負けを恐れてはいけない。フューチャーテーブルへ行くために生き残るのではなく、勝つためにプレイするべきだったのだ。

 私のスタックを考えると、オールインしてでもギャンブルするべきだ。しかし、消極的にフォールドを繰り返し、スタックは134,000まで減ってしまった。



 それでも、生き残ることだけは出来た。休憩中にフューチャーテーブルへ移動。メインのテーブルではないが、隣のテーブルだ。それでもカメラで撮影されている。憧れの舞台にやって来た。


 しかし、開始して2ハンドで負けた。

 俺はSBで、ハンドはT♦9♦だった。UTGのレイズにコールが2人。T9sならば、多人数のオールインで有利かもしれない。オールインを選択した。レイザーとコーラーが1人オールインして、ハンドを開く。相手のハンドはA♠K♠とA♡K ♣だ。運良く、勝率は45%もある。

 しかし、ボードは非情にもA♦6♡3♣4♡J♠で負け。俺のトーナメントは終わった。



 順位は690位。賞金は21,000ドル。税金として勝ち額の11,000ドルから、30%を引かれて17,700ドルを受け取った。とりあえず、賞金は得られた。

 Day 3 までは完璧にプレイ出来ていた。オールインしたハンドは有利なものばかりだ。しかし、最終日だけは最悪だ。俺は自分の欲望に負けた。名声などという、くだらない物に囚われて自分の信条を曲げてしまった。

 地位、名声、欲望。そんなもの、俺には必要ない。もっと純粋に戦うべきだったのだ。捨てるべきだ。勝ちたいならば、捨てるべきだ。俺は最後の最後で、俺自身に負けてしまった。

 それでも、今はこの結果を受け入れるしかない。


 来年、また戻ってこよう。次こそ勝つのだ。

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