閑話 日本人との出会い

 ポーカーテーブルには様々な人種が集まる。アメリカ人だけではない。意外とアジア系が多く集まっている。中国人、韓国人が多く、東南アジアから来た人は稀だ。意外にも、ヨーロッパ系もあまりいない。通常ならかなり多いらしいのだが、入国規制の関係で少ないようだ。

 日本人と知り合うこともある。何人かと知り合ったのだが、特に親しくしたのは3人である。



 1人目はNさん。Nさんはプロ歴の長いベテランだ。俺の大体10歳くらい年上。子持ちだが若々しく、気さくな方だ。コロナ前にはマカオをメインにしていたらしいが、最近はアメリカをメインにしている様だ。

 彼との出会いはロサンゼルスのポーカーテーブルだった。


 いつものようにカジノへ行くと見知らぬアジア人多分日本人と同卓した。しかも強い。驚くようなブラフキャッチやブラフを捕まえたりバリューベットをしている。気になって観察していたら、「日本の方ですか?」と声をかけられた。それで少し話しながらプレイしていたら、その日はテーブルがブレイク解散してしまった。

 せっかくなので、食事に誘うと、Nさんの車でIn-N-Outとうハンバーガー屋まで連れて行ってもらうこととなった。


 In-N-Outはロサンゼルスで人気のハンバーガーチェーンだ。日中はドライブスルーに行列ができるほどの人気ぶりである。ロサンゼルスで一番美味しいハンバーガーだという人もいるほどの店である。

 夜の11時頃に入店し、オーソドックスなハンバーガーとポテト、コーラのセットを頼む。そして、Nさんにポーカープロとしての経歴や経験談、他のカジノの情報などを聞き、俺も自分の旅のこと、これまでの経緯などを話して過ごした。

 Nさんは近隣のBicycle Casinoというカジノへ通っており、この日はなんとなくHustlerハスラー Casino へやって来たようだった。いつも打っているステークスは俺よりももっと上で、5/10や10/20を打っているそうだ。俺の打っている5/5の2~4倍のステークスである。道理で強いわけである。


 「テーブルがかなり美味しい弱いけど、これはいつもなの?」と聞かれたので、正直にハスラーの状況などを話した。本当は強いプロに情報を提供するべきではないのかもしれないが、俺はそういうことを気にはしない。それよりも彼のプレイをもっと見てみたいので、「良いカジノですよ」と話をした。

 すると翌日から高頻度でハスラーカジノへ来るようになった。勿論、同じテーブルにいればチップを奪い合う関係だ。それでも、会うたびに世間話なんかをしたり、戦略を教えてもらったりしていた。



 そして、もう2人の日本人との出会いが、俺のその後を左右するえんであった。PちゃんとH君。同年代の男性だ。2人ともプロである。彼らはカジノ周辺にあるホテルに泊まっていた。

 2人とも同年代なので話が弾んだ。帰り道に24時間営業のドーナッツショップで検討会。一緒に出掛けることもある。ダウンタウンへ行きたいというので、リトルトーキョーまで市バスで案内した。ラーメンを食べてふらふら観光をした。もちろん、夜にはポーカーである。


 3人でMLBメジャーリーグへ行った。もちろん試合はエンゼルス。大谷選手を見に行ったのだ。

 夕方にホテルから球場へ向かった。エンゼルス・スタジアムはUberで30分ほどの距離だ。チケットは事前にPちゃんが予約していたので、球場の外観を記念撮影してから入場する。そして球場内部。私は日本の球場へ行ったことがなかったので違いは分からない。野球ファンのH君曰く、日本よりも観客席とグラウンドの距離が近いようだ。露店も沢山あり、ホットドッグやビールなんかが売っている。3人でビールとつまみを買い観戦席へ行く。ビールが一本8ドル程度。日本円で1000円以上である。球場価格なので仕方ないとは思うのだが、インフレの影響も大きいのだろう。ちなみにビールはPちゃんが奢ってくれた。


 内野の3階席。ピッチャーの正面ではないが、ベンチ側で全体が良く見渡せる。

 試合は国歌斉唱から始まる。人気の歌手が出てきて観客と一緒に歌うのだ。そして試合開始。

 MLBの特徴は、観客の応援がないことだろう。だから打球音が良く聞こえる。野球好きにはたまらないだろう。この日は幸運にも大谷選手のホームランを見ることが出来た。ホームランを打つと、花火が上がるなど派手な演出があり、興奮も高まっていく。残念ながら試合は負けてしまったのだが、見たいものが見れたので満足だ。

 大谷選手は俺と同い年だ。同年代が海外の大舞台で活躍している姿を見ると俺にも感ずるところがある。

 。俺も全力で戦うのだ。WSOP世界大会のメインイベントへ出場を決心した。参加費は1万ドル。日本円で約130万円。大きな賭けになるが、挑戦しなくては何も得られない。この旅に後悔を残さないためにも、俺は参加を決めた。



 追い風もあった。ラスベガスの宿をH君とシェアすることとなったのだ。Pちゃんの代わりである。

 Pちゃんは入国審査に引っかかっていた。なんだが理由はよく分からないが、6月末までしかアメリカに滞在できないらしい。つまり、ラスベガスで開催されているWSOP世界大会へ参加できないのだ。しかし、H君とシェアするホテルをすでに予約してしまっている。その部屋を譲ってもらうことになったのだ。

 Pちゃんには申し訳ないが、ラスベガスでの宿を見つけていなかった俺には渡りに船である。WSOPの時期にラスベガスで滞在経験のあるH君が一緒というのも心強い。


 というわけで、この不思議な縁から俺のラスベガス行きが決まったのだ。

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