閑話 朝に目が覚めたなら
7時に目が覚めた。偶にこんな日がある。昨夜は遅くまでプレイしていたのに、目が覚めてしまう。俺の自律神経は壊れているようだ。
こんな日は観光だ。せっかくアメリカへ来ている。日中を寝て過ごすだけではもったいない。
移動にはバスを使う。ロサンゼルスにはかなり良心的な値段でバスが走っている。それもかなり頻繁に。だいたい、15分に一本はバスが来る。ベンチが設置されていることが多いので、待つのも苦痛ではない。
値段は1路線で1ドル〜1.75ドル。一度乗ればその路線はどこで降りても同じ料金なのだ。
1日乗車券だと3.5ドル。通常は7ドルなのだが、今は割引されている。何故だか分からないが、ラッキーだ。
ただし、1日券を買うには別途tapと呼ばれるカードが必要になる。pasは日本のSuicaのようなもので、バスや電車に乗る際に使える。tapの値段は2ドルなので買って損はない。
バスの車内は有色人種ばかりだ。車社会のアメリカだ。この街でバスという乗り物は、車を持たない貧困層の移動手段。それでも治安が悪すぎるということはない。たまに喧嘩を見るが、近づかなければ巻き込まれることもない。
バスに乗って博物館や美術館へ行く。もしくは、ダウンタウンをフラフラ歩く。夕方になる前には宿に戻る。仮眠を取って、夜はポーカーだ。
ある日には、ロサンゼルス自然史博物館へ行った。ガーデナからは1時間弱。入場料は15ドル。日本と比べると少し高く感じるが、円安なので仕方がない。
この博物館のユニークなところは、カルフォルニアの歴史が展示されているところだ。コロンブル入植以前、先住民の生活から現代に至るまでをその時代の物品と一緒に紹介されている。どんな経緯で入植し、開拓を行ってきたのか。メキシコとの国境をめぐる戦争など興味は尽きない。
中南米の滅んだ文明も紹介されている。マヤ文明に代表される文明における装飾品などがずらっと展示されているのだ。これも興味深い。
治安さえ良ければ、中南米には行きたいと思っているのだが、いつか行けるだろうか。
北アメリカやアフリカの哺乳類や鳥類が剥製で並ぶ。それぞれの動物がどのような生活をしているのか、環境まで模型を作ってある。まるで生きているかのようだ。一つの動物につき一つの展示スペースで、幅は2mから大きなものでは15mほどの展示もある。
多くを展示するのではなく、興味を引くような展示を重視している博物館だ。
ちょうど俺が訪問したタイミングでは幼稚園児や小学校の校外学習が行われており、動物を見ては騒がしくはしゃいでいた。静かに鑑賞する日本とは違い、他の入場者も皆楽しそうに話している。これくらい賑やかな方が俺の好みでもある。極力音を出しちゃいけないなんて、日本の博物館は窮屈だ。
目玉は恐竜の化石だ。恐竜化石といえばアメリカだ。博物館へ入場するとエントランスにはティラノサウルスとトリケラトプスの化石が展示されている。まるで闘っているかのような迫力ある配置。日本ではティラノサウルスの化石をこのように見た目重視で展示しない。流石はアメリカである。
もちろん、その他にも恐竜は展示されている。大きな部屋を複数使って恐竜の全身骨格や発掘風景を展示してあるのだ。
ティラノサウルスは3体ほど展示されている。他にもステゴサウルス、トリケラトプス、ラプトルだけではなく、翼竜や海竜の展示もある。おそらく、個々の展示内容だけでも日本なら恐竜展を開けそうな規模だが、これが常設されているのだから驚く。また、太古に絶滅した過去の哺乳類も展示されている。この大陸から発掘されるのは恐竜だけではない。当たり前の話だが、恐竜が滅んだら次の生物が覇権を握るのだ。太古より存在する大陸なのだから、各時代の化石が発掘されるのだ。
それぞれの展示はテーマがあるようで、ただ展示されているわけではなく、その化石の何が面白いのか、どこに学術的な疑問があるのかなどが解説されており、飽きがこない。
そして、外には花園がある。バラを中心に花々が育てられている大きな庭で、その大きさは歩くだけでも30分以上はかかるだろう。
晴れている日だったので、カップルや家族連れが多い。先ほどの子供たちも外で走り回っており、すごく賑やかだ。個々の客を目当てにお菓子やジュースの露店も出ている。
このように和やかな空間は、実に久しぶりだ。毎晩カジノでポーカーをする生活。他にするのは食事だけ。毎日会うのはプレイヤーだけ。通りを歩いているのはホームレスばかり。
かなり非人間的な環境だ。それが、博物館という公共の施設で無邪気な笑い声を聞けただけで、ささくれた心が浄化される気がするのだから不思議である。
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