第16話 彼女が服と一緒に脱いだものは・・・

「女性はいつだって怖いんだよ。する前も。した後のことを想像したときも。」


そう呟く彼女に、自分は何度も頷いた。

その気持ちわかるよ。と伝えるために。


でも、本当は、わかっていなかったのかもしれない。

女性には妊娠するリスクもあるな位にしか、考えていなかったと思う。


 ◇  ◇  ◇


この弱肉強食の世界では、弱い生き物ほど、交尾の時間が短い。

交尾の間、生き物は無防備になってしまうからだ。

クモにいたっては、交尾ではなく交接というものをするらしい。

ある意味、子孫を残す本能の究極なのかもしれない。


子孫を残すためだけではなく、性欲を満たすためにも、SEXをする人間は、生き物として強いのか?


いや、人間は弱い生き物である。

ただ、安全な部屋の中、ベッドの上、なんとなくの安心が、人間を快楽の世界へ誘っていく。


 ◇  ◇  ◇


彼女が「怖いんだよ」と呟いたのは、二人がそういう関係になる前だった。


いつしか、二人の愛情は深まっていき、関係を持つようになった。

いや、愛情だけではなく、もしかしたら、欲望が恐怖に勝っただけなのかもしれない。


彼女が「怖い」と言っていたことも忘れかけていた頃、彼女はベッドの上で、呟いた。


「恋をすると体だけでなく、心も裸になる」


彼女の初めの言葉を思い出し、何が怖いのか、少しわかった気がする。

もしかしたら、勘違いしてるかもしれない。

でも、彼女は、体だけでなく、心ごと、自分に委ねてくれた。ということはわかった。


より愛おしく感じた彼女の体を、心ごと、自分は抱き寄せた。

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