第13話 小遣いの憂鬱

転がる石には苔がつかないーーー


 ◇  ◇  ◇


学生時代の方が、社会人の今より小遣いは多かった。


これって既婚者あるあるで、お小遣い制の男性にはよくあることだと思うのだが、自分の場合は学生の頃の方が約10倍ほどだった。


 ◇  ◇  ◇


学生時代、時給のいいバイトとボロアパートのおかけで、手元に結構なお金が残った。毎晩、飲み明かし、友人からは、冗談で「社長」と呼ばれていた。


社会人になると馬車馬のごとく働き、そのおかげで会社から評価され「次期社長候補」と呼ばれていた。独身だったので、自由にできるお金はそこそこあった。あったけど、パソコンやバイクなど好きに使ってしまい、あまり残らなかった。


そのうち、働きすぎに疲れてしまい、転職した。ちょうどその頃結婚もした。任された仕事はしっかりやるが、忙しい生活に戻るのは嫌だったので、出世する気はなかった。「平社員」のままがいいと。


人生、社長 → 次期社長候補 → 平社員と、他人から見れば「転がる石のように」転落したように見えてしまう。


今月も嫁さんからお小遣いをもらい、ふと考える。

自分は、あの頃に戻りたいか。と。


 ◇  ◇  ◇


時間は有り余り、酒ばかり飲んでいた学生には戻りたくない。

物に囲まれていたが、いつも寝不足で通勤電車に揺られていた、前の会社には戻りたくない。


今はどうだろうか。と自問自答する。

夜遅くまで塾で勉強頑張っている。部活も手を抜かない。そんな子供達がすぐ隣にいる。

勉強しろ!部活入れ!なんて言ったこともない。

自ら勉強も部活も頑張っている。

勝手に良くできた子供に育っている。


いつも飲んでいる珈琲に、ほっと癒やされていた。

家族がいる。という当たり前の事に、感謝している。

そして、これからの未来を、とても楽しみにしている。


A rolling stone gathers no moss.

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