第9話 元カノの憂鬱

二日酔いのせいか、珈琲がいつもより苦かった。

元カノを思い出し、ついでに昨日の会話も苦々しく思い出していた。

 職業じゃなくて人なんだと思うーーー


 ◇  ◇  ◇


「ナースて、エッチだよね」そんな与太話をしてしまうのは、学生のころと変わらない。


今日は久しぶりに学生時代の友人と二人で飲んでいた。

もうお互い年齢を重ね、仕事ではそれなりの役職になっていたのに、変わらず、ろくでもない話をしていた。


看護師さんは、世間から、勝手にそんなイメージを持たれてしまっている。

ナース服なんて、コスプレの代名詞だ。

日頃からお世話になっている自分からすると、偏見にしか思えない。


友人は、一人で盛り上がり、話は止まらない。

「ナースもいいけど、保母さんも、エロいらしいよ?!」


まったく、いい加減な雑誌の「エッチな女性」特集みたいな話だ。

こんな会話をしてるなんて、友人も自分も、いつまでもガキってことだな。


そんな会話の中、自分は、曖昧な相槌を返していた。


自分のひきつっていたであろう顔には気づかず、友人の話はさらに続いた。

「そういえば、お前って、学生の時、保母さんの彼女いたよな?」


そう、当時、付き合っている彼女がいた。

実際には、まだ専門学校に通う保育士の卵だったので、なんとなく否定するような返事を返した。

昔の彼女と、どんな付き合い方をしていたかなんて、聞かれたくない。という気持ちもあったからだ。


話をそらすように、お店のテレビに顔を向けると、ニュースが流れていた。

内容は「(とあるお堅い職業の人が)仕事中に、みだらな行為をした」というもので、「ゆるせません」みたいなコメントで締めくくられてた。


その職業の人の全員が、そんな事をしてるわけじゃないと思う。


結局、何事も、

職業じゃなくて、人なんだと思う

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る