第4話 みんなロマンチストだよ
若い頃、付き合いはじめたら、プラチナの指輪を彼女にプレゼントする。というのが自分の中でのお約束だった。
彼女に自分が贈ったものを身に着けていてほしかったからだ。
当時は今ほどシルバーが流行っておらず、プラチナということで彼女もすごく喜んでくれた。
しかし、そうは言ってもお金はなかった。
指輪もブランドものではなく、小さな石のついたシンプルな指輪で、けっして高価なものではなかった。
普段は、海沿いの公園に行ってただ海を眺めたり、お互いのアパートで過ごしたり、そんな貧乏デートばかりだった。
貧乏デートばかりでも、交際は順調で、そろそろクリスマスが近づいてきた。
彼女がプレゼントに欲しがったものは「クマのぬいぐるみ」か「ピアス」だった。
いや、どちらかというと、ピアスの一択。
彼女は付き合いはじめに貰った指輪にあわせ、プラチナのピアスをつけたかったんだ。
でも、デート代も節約していた二人。
プラチナのピアスなんて買えないのはわかりきっていて、はっきりと無理だよ。と伝えてあった。
そして、クリスマス当日、自分は彼女にクマのぬいぐるみをプレゼントしたんだ。
彼女は喜んでくれた。
でも、実は、ただのクマじゃない、「リュックを背負ったクマのぬいぐるみ」だった。
彼女がぬいぐるみを抱きしめると、リュックが固いというような違和感を感じているようだった。
「何か入っている?」と聞いてくる。
自分は無言で、ただ微笑みかえすだけ。
彼女がリュックを開ける。
すると、可愛らしい小箱が出てくる。
相変わらず微笑んでいるだけの自分の前で、彼女は箱の中身を確認する。
その中には、彼女が欲しがったプラチナのピアスが入っている。
そう、ちょっとしたサプライズを仕掛けたんだ。
ピアスを見つけた彼女の顔は、いまだに忘れられない。
◇ ◇ ◇
今でも、
飲み会などで恋バナが盛り上がり「今までで一番、恋人にしたロマンチックな事は?」と聞かれたら、迷わずこの話をする。
鉄板エピソード、女性からのウケもいい。
涙を流しながら喜んでくれた彼女を思い出し、ロマンチックだった自分に、自分で酔ってるだけかもしれない・・・
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