8.2日目行動開始
野鳥のさえずりと共に目を覚ますと、目の前が青い。
青空ではない。テント地の青だ。
テント地の内側を触ると、夜露が降りたらしくしっとりとしている。
夜間に気温が下がったのだろう。
山間の川べりのキャンプ場なので自然な事だ。
テントから出ると三浦が歯磨きをしていた。
「おはよう。」
「おあおう。」
三浦が歯ブラシを咥えたまま曖昧に返す。
「腹減ったな。」
岩清水がテントから出てきながら挨拶代わりに空腹を訴える。
「そうだな、食うもんもないし、さっさと出発するか。」
朝6時。
日常からすると早起きであるが、特にすることもないし、寝直すでもない。
身支度とテントの撤収を済ませると早々にキャンプ場を後にした。
空模様は悪くない。
快晴とは言わないが、晴れ間が見え隠れしている。
キャンプ場への脇道から国道277号線に戻り、来た方向とは逆の日本海側を目指す。
すると、すぐに
「あのカントリーサインの反対側に
「よし、写真撮るか」
八雲町のカントリーサインは牛の絵であるが、かなり色褪せているようだった。
ここのカントリーサインは西向きであるから、西日に毎日晒されているので仕方がない。
峠道を西に進むと日本海に突き当たる。
ここを左に折れて南に向かう。
右に日本海を眺めながらの絶好のドライブルートだ。
やがて
ここを右に曲がると江差町の市街地に入るが、目的の
左折するとすぐ目の前に厚沢部町のカントリーサインが見えた。
「おいもの坊や、居たな。」
昨晩検索したところ、厚沢部町のカントリーサインのキャラクターはメイクイーンらしい。
細長くて粘りが強い品種のじゃがいもだ。
厚沢部はメイクイーンの発祥地らしい。
「じゃあ、写真撮るか。」
3市町村目のカントリーサインとの記念撮影を済ませると次の市町村の抽選である。
ここまできたらもう抽選しない理由がない。
今回は僕が引くことにした。
「♪何が出るかな何が出るかな チャララ ラ ラ ララララン」
遥々道南の日本海まで来た高揚感に乗って朗らかに唄う。
「よし、ここだ!」
カントリーサインには茶色い大きな洋館が描かれていた。
「あれ?これはもしかして近所なんじゃないか?」
「どこだ?」
「
「上磯ってどこ?」
「上磯?」
岩清水と三浦にはピンときていないようだが上磯は函館の隣だ。
現在位置からだと紛うことなき近所である。
「また近所引いちゃったよ!」
「すごいな!」
「それはそうとまだ南に向かうの?」
三浦だけはどうやら不満げである。
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