4.士別市へ

何はともあれお腹が空いた。


市街地に向かって食事する場所を探そう。


今居る岩尾内湖いわおないこから市街地までは15kmほどある。


北海道において15kmというのは15分で着くことを意味する。


市街地に着いて食事出来る店を探してみるものの、とんと見当たらない。


そもそも店が少ない上に、今はお盆なのである。


田舎の食事処がお盆に開いていないのは必定である。


「どこも開いてないな。コンビニすら無いよ。」


「ここまで来てコンビニ飯も嫌だけどな。」


「仕方ない、隣の士別市しべつし行ってみるか。」



僕らは朝日町あさひちょうに見切りをつけて士別に向かう事にした。


すなわちカントリーサインの旅の最初の目的地でする事はもう何もない。


士別市はそれほど大きな街ではないが、食事処くらいはあるだろう。


朝日町から士別市までは15分ちょっとで着いた。


はたして、士別市ではすぐに食堂を見つけられた。


食堂はいかにも地方の食堂といった佇まいで、メニューには各種定食、ラーメン他にカレーなどが揃っている。


僕は不味いカレーというものを食べた記憶がない。


ここは無難にカレーを注文しよう。


いや、カツくらいは載せてカツカレーにしようか。


岩清水は生姜焼き定食、三浦は醤油ラーメンを注文した。


いずれも無難な選択肢といえよう。


不味くなりようがないと思う。


なんというか、無難ではないメニューを頼んでみようとは思えない佇まいの店である。



10分ほど待って出てきたカレーは店のカレーというよりは人んちのカレーと言ったほうが適しているような見た目をしている。


野菜がたくさん入っていて、カツは豪快に載っている。


端の方にちょっとしたサラダも載っており、赤いウィンナーも載っていた。


人んちのカレーにさすがにサラダは載っていないか。


そこにこの店の矜持を感じたが、味は人んちのカレーといった感じである。


まぁ、美味しい。カレーであるからして、とりあえずは美味しい。


岩清水の生姜焼き定食も、三浦の醤油ラーメンも無難な見た目である。


三人とも無表情で完食し、店を出た。



「普通だったな。」


「まぁ、普通だろう。」


「いいよ、夜はもっと美味いもの食おう。」


「夜はキャンプでカレーだろ?」


「今カレー食ったけどカレーだな。」

夜もカレーだからといって昼にカレーを食べてはいけないという法は無い。


カレーは何食連続で食べても構わない食べ物だと思っている。



北海道の高速道路は南北に延びている。


現在のところ、その最北地点はここ士別市である。


八雲まではおよそ400kmある。


僕らは八雲町でキャンプがしたい。


今日はキャンプをするために江別を出発したのだ。


下道を走っていたのではキャンプ場でカレーを作る時間はおろか、テントを建てる時間もない。


僕らはここからしばらくは高速道路に乗ることにした。

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