6
「
双眼鏡の向こうの小さな影を数えていく。
教練で
戦闘、索敵、運搬など役割によって
1週間、廃墟で野宿した末の成果に手が震える。心を落ち着かせてひとつずつ観察する。髪は皮脂でべっとりしてるしかゆいし、下着も3日同じで気持ち悪い。それでも集中して敵に注視する。
ケイコが小声で素早く指示を出していく。
「
「
「はい、わかりました」
教練ではそこまでは教わらなかった。
ケイコは、アイカに赤外線を遮断する迷彩シートをかぶせて一緒にその中へ入った。ケイコの息遣いが耳元で聞こえ、触れ合う肩から熱い体温が伝わってきた。
ケイコは高倍率の望遠鏡を差し出して「はいこれ。数えながら映像を記録して。機械、得意なんでしょ」
「はい、がんばります」
ずっしりと重く高そうな機材を任せられた。伏せた姿勢のまま低い三脚で望遠鏡を固定する。そしてそれをラップトップPCに接続する。
大きなレンズとデジタル処理で目標を拡大し、ピントを合わせて「録画」のボタンを押して記録を開始する。赤外線の白黒映像と光学の両方で記録していく。バッテリーは十分。半導体メモリは1TB。十分だ。
双眼鏡を覗くとはっきりと
「大丈夫、落ち着いて」ケイコが耳元でささやいた。「あんな気持ち悪いの、誰が見たって嫌になるから」
やっぱり優しい隊長だ。頬が触れ合うくらい近くで双眼鏡を持ち一緒の光景を見てくれている。落ち着きを取り戻していた心拍数が再び上昇した。ケイコの声が耳元で発せられてこそばゆい。
「
「はい、教練で習いました。護衛役の強攻型が前列に。後ろは荷役の運搬型です。引いている台車に載っているのは、あの口径だとたぶん155mm」
「ふーん、賢い。記憶力もいいわね」
「エヘヘッ」
「あれは野砲よ。15門、か。でも弾薬が見えないわね。野砲っていうのは100発撃って1発の命中を狙うような兵器なの。妙だけれど、たぶん別動隊で弾薬を運んでいるかもしれない」
「じゃあ、2班の方に?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。偵察部隊は私たちだけじゃない。大丈夫、それぞれの部隊がそれぞれの役割をこなす。軍隊っていうのはみんなでひとつの生き物みたいに行動するの。全部自分でどうにかしようと、思わないことよ」
「エヘヘ。隊長は強いですね」
自信のある言葉たちに勇気づけられる。初の任務で
優しいのに、この人はそれを人に伝えるのが苦手なんだ。優しい人で不器用な人だ。
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