戦争見物(前編)
朝っぱらからファーマル・アンドロイド・ジョージの顔を見ることほど憂鬱なことはない。
こんな時間からの彼の訪問はトラブルの予感しかしないからだ。
そのとき俺は今世界中のネットで流行っているアニメを見ていた。
それは異星人管理課から回されてきたものだ。巨大なゾウリムシがスーパーカーに乗ったり、腰に吊るした拳銃で悪人相手に大立ち回りをしたり、美女を小脇に抱えてビルの上をジャンプしたりするアニメだ。
巨大ゾウリムシがどうしたらそんなことができるのかと尋ねられても困る。とりあえずそれはやや誇張した形でも見事に表現されていたし、それより何より美女とゾウリムシの取り合わせは見ていて鳥肌が立つほどの悍ましさだった。
そうしてこんなアニメが人気になるのか俺には分からない。きっと人類は俺の知らないところで密かに狂って来ているのだろう。
管理課の質問はこのアニメを放置してもよいのか、それともファーマル星人の機嫌を損ねる前に規制するべきかとの質問だった。
もちろん俺は放置しろと答えた。
ファーマル星人はこの地球で起こったすべてのことを知っている。何か問題があれば真っ先に俺に言ってくるはずだ。あるいは最初にアニメが描かれた時点で人知れずに作者を蒸発してガスに変えることもできる。
ファーマル星人は神よりも遥かに有能だからだ。
今もこのアニメの作者が生きているということはファーマル星人はこのアニメが気に入ったのだろう。もしかしたら彼らの母星ではこれの大々的なポスターとかが貼りだされているかも知れない。
アニメに群がる巨大なゾウリムシ。
うう、怖気が出る。しかもそのかなりの数のゾウリムシたちが俺の下半身のファンだというのだから泣けてくる。
そんなことを考えているとドアにノックがあった。
ジョージの登場だ。
誰何すると皺一つないスーツに身を包んだ彼が部屋に入って来た。高価なスーツに見えるが実際には彼を構成するナノマシンの集合体だ。
監視カメラで訪問者の正体は分かっていたが、それでも扉のロックを解かざるを得ない。何しろファーマル星人は今や五惑星植民計画の一番重要な移民宇宙船建造を手伝ってくれている最中だからだ。
彼らから提供される超空間転移装置が無ければ宇宙植民なんかできるわけがない。
植民先の惑星の一つにはもう一般公募でホープという名前が付けられている。
ファーマル星人がここ一万年の間に地球から密かに移植した植物や動物に満ち溢れた素晴らしく美しい豊かな惑星だ。地球よりも海はやや小さいがそれ以外は文句のつけようがない緑に溢れた惑星だ。
澄んだ空気の中に聳える山々は冠雪を残した見事な雄姿を誇っている。流れる川は滝で水煙を上げ、草原のただなかでは悠々と流れる。多くの動物たちが川で水を飲み、そこで狩人の肉食獣たちと命の営みを繰り広げている。空を埋め尽くさんばかりのリョコウバトの大群が夕日を追いかけて飛んでいる。
惑星の紹介動画を見ていて俺でさえ涙が止まらなくなったほどにどこもかしこも美しい。この見事な宝石とも表現すべき惑星を、これから入植する人類がさんざに汚すのかと思うと移民船を爆破してやりたいとも感じる。
もっともファーマル星人のことだ。地球人には明かしていない他のテラフォーミング惑星も五万と持っているだろう。あと数百年もすればそれら予備の惑星も順次人類に解放されていく予定なのだ。
あらゆる分野で彼らの技術は人類の技術を遥かに遥かに遥かに遥かに超越している。
まあそんなわけでジョージが何かをしたいと言えば俺は諸手を上げてそれに賛同せざるを得ない立場だ。ファーマル星人の機嫌を損ねでもすれば新国連は俺を千回でも拷問にかけて殺すだろう。
オフィスに入って来たジョージは早速に部屋の壁に映像を投射した。
それは俺にはなじみ深い映像だ。
戦車、歩兵、並み居るトラック。奥には空に延びる砲身を持った戦場の女神である榴弾砲の姿が見える。
それを見ていると鼻の奥に戦場の記憶が蘇る。血と硝煙の臭い。懐かしい俺の過去。
これはニュースで知っている。ザンルマーク国。アフリカに出来た新興国家である。
あるいはそれのライバルであるマウタム国かも知れない。ぱっと見で彼らは元は同じ民族なので見分けようがない。国旗も良く似ている。服装も良く似ている。言語も同じで、顔付きも体格も同じ。国旗も意匠は同じでただその向きが左向きか右向きかの違いでしかない。
それにも関わらずお互いにひどく憎みあっている。紛争の原因はお馴染みの宗教解釈の違いだ。
どうしてまだ戦争をしている国があるのかは謎でしかない。ファーマル星人が持ち込んだ数多の技術のお陰で今や全世界的に戦争は縮小の一途にある。ありていに言えば戦争という行為はもう時代遅れなのだ。
「ずいぶん長い間両者は睨みあっていましたがついに始まるようです」
ジョージは嬉しそうに言った。もちろんアンドロイドに感情はない。人間シミュレーターによる嬉しさの表現をどこかの巨大ゾウリムシの命令に従ってそのナノマシンの顔の上に作り出しているだけだ。
おやおや。俺は嘆息した。ジョージは今度は戦争見物に付き合わせるつもりだ。
「もう一万年も我々を観察してきたのでしょう。別に戦争は珍しくないでしょうに」
一応文句を言ってみる。これぐらいではファーマル星人は五惑星植民計画を反故にしたりはしない。
「確かに我々は今まであなた方の戦争を見てきました。しかし禁制処置が解除された今、我々は戦争に直接に参加できるのです。
人類の特徴であるセックスと暴力。その暴力の最たるものが戦争です。我々の手元には試してみないといけない多くの実験計画が大量に溜まっているのです」
実験計画?
俺はとても嫌な予感がした。
ファーマル星人は戦場で何を実験するつもりなのだろう?
*
目的地は地球の裏側だったので、俺たちが乗り込んだ偽装タクシーは空を飛んだ。
偽装タクシーは慣性駆動装置と反重力装置を使って空に舞い上がると、シールドで全体を包んでからマッハ112で高空を飛んでみせた。
この偽装タクシーが使っている動力はファーマル星人が未だ人類には公開していない何かだと俺は考えていた。つまりそれはこのタクシーの動力が万一暴走したら地球の半分は削り取られる可能性があるということだ。まあファーマル技術にはその万一が無いのだが。
さすがに惑星上なので超空間移送装置が使われなかったのは有難かった。あれを使われると俺は酔うのだ。それもひどく。
偽装タクシーは大気との摩擦は完全に無視した。わずかに八分間で目的地上空に到達すると熱放射フィールドを使ってブレーキングの際に生まれた廃熱を宇宙空間に投棄する。もしかしたらその赤外線に当たって隕石の一つや二つは蒸発したかもしれない。
この奇跡とでも言うべき科学技術の祭典の中でもジョージは隣の席で平然としている。ファーマル科学の中ではこの程度は児戯なのだ。
二つの国の境界の今まさに戦端が開かれようとしている場所のど真ん中に偽装タクシーを降ろす。
「おい、ちょっと。ジョージ。これは流石にまずいんじゃないか」
タクシーが止まったのは戦車や装甲車が並び歩兵が展開されているそのすぐ目の前だ。
ごく普通の黄色に塗られたタクシーが戦場のど真ん中に駐車している。見方によってはシュールな光景だ。
「大丈夫ですよ」
タクシーを降りながらジョージは言った。
「今我々は加速時間フィールドに包まれています。つまり我々は周囲の時間の一万倍の速度で動いています」
俺は仰け反った。ファーマル星人が時間操作技術を見せるのは最初のアメリカ合衆国ワシントンDCへの着陸時に見せて以来のことだ。あのときジョージはこれを使い、並み居る合衆国要人たちのズボンやスカートを脱がせたものだった。
「ちょっと待て。その場合の空気抵抗は? つまり俺たちが走ったりすれば衝撃波が起きたりするんじゃないか?」
「あと、重力もそうですね。本当なら普通の一万分の一に感じることになります。それと分子運動の関係で我々は爆発的な熱を周囲に放射することになります」
ジョージは俺の先頭に立って歩き始めた。俺は慌ててその後を追った。
「我々が展開している加速時間フィールドの周囲には見えない形でナノマシンが展開されています。それらはネットワークを構築し、周囲の物理法則を我々の感覚が混乱しないように書き替え続けています。ですから貴方はこの空間の中でもご自身が考える通りに普通に動くことができます」
ジョージは手を振った。
「例えばこうすると本来ならば私の手は音速を越えて衝撃波が生じます。しかしその前に手の前面にある空気を構成する分子は力場に捕まって個別に高速で移動し、手の後ろ側へと運ばれそこで解放されます。結果として衝撃波は生じません」
俺は目がくらんだ。ファーマル星人の超技術力はこんなくだらない行為をするために浪費されている。そうとしか思えない。
もっともファーマル星人はジョークを理解しない。彼らはいつでも真剣で真面目な学術的興味を持って物事に向き合う。
実際には俺たちの偽装タクシーが着陸する寸前に戦争は始まっていたらしい。
どうしてそれが判ったかと言うと、機関銃の弾が目の前を飛んでいるからだ。こちらの感覚にすると秒速5インチ。思わず手を伸ばしてそれを摘まんでしまった。
銃弾はしばらく俺の指の中で暴れていたがやがて静かになった。
「これもナノマシンのお陰かい?」
ジョージに聞いてみた。発射直後の銃弾は当然の如くに手のひらが焼けるぐらいには熱いはずだがそれは感じなかった。
「そうです。ナノマシンは貴方の行為を銃弾を止めようとしていると解釈し、銃弾を構成する金属原子に慣性制御をかけたのです。今その銃弾は普通の時間域でも停止状態にあります。それとナノマシン構築体の知性は貴方の二十倍ぐらいはあるので、どのような突飛な行動を取ろうがほぼ問題なく対処してくれるはずです」
「そうか」
目を点にしながら俺は銃弾を後ろに投げ捨てた。それは俺から離れると空中に留まった。
しばらくその辺りを二人で歩き回った。
急ごしらえの塹壕の中に兵隊たちが緊張の面持ちで籠っている。いったいいつ前進の命令が下りるかと死を覚悟した形相でこちらを見つめている。
もちろん彼らの目にはこちらの動きは速すぎて見えていない。彼らの視線は宙にある。つまりは迫りくる自分たちの運命を見つめているのだ。
「怯えているのですね」
ジョージが何だか嬉しそうに言った。もちろん音は俺とジョージの間の空間を渡るには遅すぎる。ナノマシンたちが骨伝導を媒介して普通の会話に聞こえるように偽装している。
「当たり前だな。好きで戦うヤツはごく一部だ。それにこの戦争に大義はない。ただの・・遊びだ。遊びに付き合わされる方は堪ったもんじゃないがな」
「遊びですか?」ジョージは首を傾げた。
「確かにこの戦争の要因を解析したウチのチームは混乱していました。これと言って理由が見つからなかったのです。しかし遊びとすれば多少おかしなことがあります。ここの兵士の多くは蘇生サービスに登録されていないのです。つまり死ねばそこで本当に人生が終わるということです。遊びでそこまでやるものなのでしょうか?」
「彼らの多くは貧しいんだ」
「でも年単位の記憶バックアップサービスはすべて無料です。なのにここの人々はそれすらもしていない。これに関してはどうやら軍上層部からのバックアップ禁止命令が出ているようですね」
それが人間の歪んだ心の産物なのだとは指摘できなかった。
将軍たちに取っては自分の号令一下で兵が死地に赴くのがこの上なく支配欲を満たして楽しいのだ。そして兵士たちに訪れるのが仮の死ではなく真の死であればもっとそのエゴは満足する。そういうことだろう。
だがファーマル星人がこのことを理解し始めれば厄介なことになる可能性がある。人間の俺でさえも人間には絶望しかけているのだ。ファーマル星人が俺たち人類に失望すれば、五植民惑星への入植中止という事態にもなりかねない。
「いいか。ジョージ。遊びってのはときに命を賭ける方が面白く感じるものなんだ」
「そうなのですか。確かに人類の物語の中にはそういった傾向が見て取れますね」
その頭の中で超光速通信機がうなりを上げているのが感じ取れた。数千光年内の巨大ゾウリムシたちがこの遊びによる戦争の実例を大声で議論しているのだろう。
誤魔化せただろうか?
本当にファーマル星人との会話は疲れる。それに賭けられているものが大きすぎる。
その間も俺たちはこちらの塹壕、あちらの塹壕と見て回った。
塹壕から頭を出した兵を目掛けて銃弾が飛んで来る。俺はその銃弾を掴まえて軌道を捻じ曲げる。
その兵隊はたった今、目に見えない黒い幽霊が自分の命を救ってくれたとは思いつきもしないだろう。
ジョージはそんな俺をじっと見つめていた。
「ミスター・カネル。今の行為の意味を教えてください」
「今の行為?」
俺は少し考えた。きっと弾丸を止めたことだ。
「ああ、あのままならあの兵士は死んでいただろう」
「それを止めることが貴方の利益になるのですか? もしかしたらあの兵士は貴方の知り合いなのですか?」
「そういうわけではないのだが・・」俺は頭を掻いた。
「だがあいつも死にたくはないだろう」
「それは両軍の兵士すべてが同じだと思います。あの兵士が生き延びることで相手側の兵士が死ぬことになるかもしれません。でも我々が知るところでは貴方はこの戦争の当事者のどちらにも関係がありません」
「人間には同情と言う感情がある。俺もかっては傭兵だったからな」
そう。傭兵だ。俺の元々の名前であるボブ・マーリイが暗黒街の連中に知れ渡って、ありとあらゆる所から暗殺者が送り込まれたときに逃げ込んだ場所だ。
傭兵はあまり身元を煩くは言われない。偽名でも滅多に調査は入らない。それが俺にはとても都合が良かったんだ。
「でも貴方は大量殺人鬼ですよ?」ジョージは指摘した。
「痛いところを突くな」
本当に自分自身でも不思議だ。だがそれでも俺の行動は変わらない。大して面倒でないなら俺は他人のために手を貸す。その結果の生き死にの数の計算は俺の役目じゃない。たぶんこれが俺の持つ生きるための美学の一部なのだろう。
ファーマル星人は俺の行動の端々まで透徹した論理が通っていることを期待しているが、俺はもとよりそこまで几帳面ではない。
「きまぐれだよ。いわゆる殺人鬼のきまぐれってヤツだ」
俺はちょっと恥ずかしくなってジョージから顔を背けた。
きっといまファーマル星人たちは『殺人鬼のきまぐれ』なる言葉について幾つもの学説を作って議論していることだろう。どこかの宇宙の果ての記念文学碑にこの言葉が刻まれねば良いが。
次の塹壕を覗き込む。三人の兵士がその中で縮こまっている。アサルトライフルをまるで自分の守り神のように抱きしめている。それを握りしめていれば自分は死なないと信じこんでいるかのようにだ。
「左側がマウル・ダノン兵卒。年齢17歳。三人兄弟の末っ子です。真ん中はアウク・ベイリ兵卒。年齢18歳。高校卒業後のパーティで酔って車の事故を起し、刑罰として徴兵されました。右側はジャン・ベイリ兵卒。女性との婚約中です」
「どちらもベイリか。兄弟か?」
「いえ、この国では多い名前というに過ぎません」
兵士に関するジョージの説明は間違いないだろう。ファーマル星人の監視網は地球の隅々まで行き届いている。彼らは人間が好きで好きでたまらないのだ。
研究者が実験動物に好意を寄せるかのように。
目の前を砲弾がゆっくりと落ちて来た。塹壕直撃コースだ。
思わずその弾体を両手で捕まえてしまう。
俺はジョージに目で問いかけた。
「大丈夫です。高速モードでも私たちのシールドは動作しています」
ということは核兵器の直撃を受けても大丈夫ということだ。
手の中で砲弾が膨らみ始めた。俺が纏っているナノマシンは砲弾の勢いを処理しようとしたがその結果砲弾の雷管が作動したのだ。
ファーマル技術にも限界があることに俺はむしろ安堵した。
砲弾の前に回り込み、体で包み込むようにする。
榴弾の爆発をこれだけ間近で見る事が出来るとは思いもよらなかった。
白と黄色の閃光が抱え込んだ手の中で膨らみ続け、顔の前を衝撃波が背景を歪ませながら何度も通り過ぎる。光と色の乱舞が次から次へと胸の前の爆発点から湧き出てくる。
俺がつけているシールドはそれらすべてをそよ風か何かのように弾いた。衝撃波さえ俺の体を通ることはなく、すべて正面に向けてはじき返される。そこにあるはずの高熱も全く感じない。
爆発が収まると、シールドの表面に貼りついた金属煤がボロボロと足下に落ちる。逸らされた爆風で周囲の地面が抉れている。
背後を見るとまだ自分たちが奇跡的に助かったことを知らない三人の兵が目を見開いたまま座っている。彼らに取っての一瞬はまだ過ぎ去っていないのだ。
「さあ、行こう」
俺はジョージを促した。ここでいつまでも彼らの守護天使をやっているわけにはいかない。
一通り現地調査とやらが終わるとジョージは本格的に実験とやらに入った。
そのほとんどは戦場心理の実験とやらだが、俺にはそのすべてがただのタチの悪いイタズラに見えた。だがもちろんそんなことはない。ファーマル星人はジョークというものを解さないからだ。
戦車の一台の操作系統を麻痺させて囮にする。敵側の戦車がそれを射撃するたびに、発射された砲弾をどこかに転送して破棄する。
撃っている側はおかしいなと何度も撃っている間についにパニックになって、戦車を捨てて逃げ出した。
その間の彼らの心拍などをモニタして記録するのだ。
透明化したこちらの姿は彼らには見えない。
埋められた地雷の上に赤い布を置く。見渡す限りの地雷にそれをやる。
じきに歩兵も慣れて、これがどういうことか分からずに赤い布を避けるようになるが、そこで赤い布を置いていない地雷を踏む。
するとそこからピエロの顔が飛び出す。
悲鳴と共に腰を抜かして座り込む兵士にすばやく計測器を取り付け、全身の生体情報を入手する。
きっとどこかの銀河の片隅で爆笑しているファーマル星人がいるに違いないと思うが、そんなことはない。
ファーマル星人はジョークというものを解さないからだ。
こういうことをあちらこちらで繰り返しながら最終的にザンルマーク側の司令部についた。
「我々の間で長い間議論になっていたのです。それはここ数千年、あなた方が衣服というものを発明してからの疑問なのです」
ジョージは真剣な顔で説明した。
「それはどんな議論なんだ?」
聞きたくはないが聞いてみる。きちんと相槌を打たないとジョージの背後で俺たちの会話を分析しているに違いない大勢のファーマル星人がまたグランザップやフィトリップルなんかの自殺儀式をやりかねない。
俺は彼らの自殺に責任を負いたくはないのだ。
「あなた方にあって私たちに無いのは『セックス』と『暴力』です」
それと『ユーモア意識』だな。俺は心の中で付け加えた。ついでに『常識』も。
「そこで議論の中心となるのはこれら二つの結びつきです。すなわちあなた方の暴力はセックスというコミュニケーションの一形態ではないかという論があるのです」
これには俺も驚いた。
「ちょっと待ってくれ。それじゃ戦争はサドとマゾの絡み合いが大規模になった乱交パーティだとでも言うのか?」
「大筋はそうです。特にあなたは大量殺人鬼であり、なおかつ性豪であるという二つの特質を見せています」
「馬鹿な」俺は吐き捨てた。
「否定的なのですね。そういうわけで我々は推論を立てたのです。軍隊の司令官は戦争の最中にあって性的な興奮状態にあるのではないかと。しかし数千年前からあなた方は衣服を着るようになり、それを確認することができなくなりました。私たちの監視昆虫もズボンの中までは観察できませんでした」
「じゃあこれからやることは・・まさか」
「そういうことです」
ジョージはさっさと建物の中に入っていった。俺は慌てて後を追った。
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