狭間

第75話 地上と天の狭間にて3

〈財布〉×3〈水生成〉〈光生成〉〈格闘術〉×2〈醸造〉〈調理〉〈回復魔法特〉〈身体強化〉

〈魔力+16〉〈体力+4〉〈腕力+5〉〈脚力+4〉〈器用+3〉〈精神+4〉


 称号〈ハーレム王〉 効果 精力+1 性技+1 異性友好度+1

 称号〈百合騎士〉  効果 同性友好度+1 同性好感度+1

 称号〈百合の君〉  効果 同性好感度+1 同性魅了+1

 称号〈希望の星〉  効果 異性好感度+1 異性魅了+1

 称号〈百合の聖女〉 効果 同性魅了+1 カリスマ+1

 称号〈百合の聖騎士〉効果 同性好感度+1 カリスマ+1

 称号〈百合の園の主〉効果 同性魅了+2 体力+2

 悪名〈百合の性女〉 効果 精力+1 性技+1 男性友好度-1

 悪名〈百合の性騎士〉効果 精力+1 性技+1 男性好感度-1



 俺は……ステータスを感じている、この謎な空間では俺の体も無いし、これを感じる事しか出来ない。


 神気の数値、仮に神気ポイントと呼ぼう、はアホな程の数値が溜まっている、だが今の俺はそれを喜ぶ事も無い、ただじっとステータスを感じるのみだ。


 目をつぶる事も寝る事も出来ない、ただひたすらに時間経過と共に神気ポイントが減るのを待っている。


 せっかくだ、その時が来るまで俺の前世に何があったかを整理して思い出してみよう。


 今は特にやる事もないしな……。



 もう一度自分のステータスをちゃんと確認してみる、その称号の一番上にある〈ハーレム王〉は俺が前にわざわざ残した物だ。


 前回の貴族女性であるリリアンの子供時代に、やけに男共と仲良くなれたのはこれのせいっぽい。


 そうか……友好度+1だもんな……そりゃね……に成ったら男性とすぐ仲良くなれちゃう訳だよなぁ!


 ああ、くっそ……効果の文言の意味をよく考えずに残したのは失敗だった……でもさぁ……だよ? 男なら残すよねぇ? 仕方ないよねぇ!?


 これは仕方ないという意見が賛成多数で可決されました。


 次の称号がえっと……〈百合騎士〉と〈百合の君〉か。


 これはまぁ、社交パーティで泣きそうなお嬢さんを助けた時の演技やなんかが貴族のお嬢様方の心に刺さってしまって噂が広がったからだろうね……中二病な本を出回らせた奴のせいでもあるよね、つまり自業自得だったんだよな。


 記憶というか前世の知識を呼び出すと、この頃からやけに女性から好かれ始めているんだよね、友好度も好感度も上がって、尚且つ魅了もするって……そりゃ今まで異質さを見抜かれて忌避されてた孤児院の娘っ子達にも好かれる訳だよな……。


 貴族学校で大量の姉妹契約を結ぶはめになったのもこの称号が悪さをしていたのかね……まぁリリアン本人が超がつくほどの美少女だからね、それで余計に魅了が効いちゃったんだろうね。


 そして〈希望の星〉か、男がやる遊びとか普通に好きだからなぁ、喜々として付き合ってりゃ……そりゃ好かれちゃうよね……そして称号ついてさらにブーストかかったんだろうね、それまでは友好度しか上がらなかったのに、好感度も上がって魅了まで……。


 隙あればキスとかしてこようとす男子とか居たみたいだからなぁ……拳でボコっても嫌われないとか、魅了系効果やばくね?


 そして〈百合の聖女〉と〈百合の聖騎士〉か。



 男に告白されて心がキュンキュンして受け入れそうになった時に、やっとそれに気付く切っ掛けが出来たって所だね。


 そう……恐らく転生ガチャ運営による……をね。


 心を少しづつ女性寄りにさせる物だったのではと思って居る、あのイケメン王子が居なかったらもう少しで完全に女性人格になっていて……その後にどうなっていたのやら……クソ運営めが……。


 それで精神操作に気付いた俺はユリアにある程度の事を説明をしてから、教会に逃げ込んだ。


 家族には男と結ばれたくないと説明をして強引にね。


 クリエイト教会には〈回復魔法特〉の存在があれば断られる事は無かった。


 教会の上層部である男共に、聖女という看板を背負わされて利用されそうになったが、もう俺は自重しなかったみたいだ。


 なんでか女性にすごく好かれる事を最大限利用して、女性の女性による女性の為の教会と教会領を獲得するまで頑張った、現代地球の尼寺とか修道院の規模がでかい奴みたいな物だね。


 そして民を……いや民の半分を救済する事に尽力をした、それゆえの〈百合の聖女〉であり、現実的な力で自身と周りを守るために設立した聖百合騎士団の団長であるがゆえの〈百合の聖騎士〉なのだろう。


 前世の〈回復魔法特〉で一瞬だけ精神操作を跳ねのける事が出来たが、すぐ元に戻り、女性であらんとする心が湧いて来る。


 当時の俺はこれにすっごい恐怖を感じていたみたいで。


 そりゃ自分の心が操られて居ると知ったらねぇ……、貴族学校の頃のリリアンが百合方向に傾きがちだったのは、基礎人格である男の感情を守る為だったんじゃないかなって思うんだよね。


 そうして、前世の俺は、自分自身の心を守る為に……そりゃもう……。


 ……。


 ……。


 滅茶苦茶百合に走った!


 いやーちょっと前世のリリアンの知識を覗いたら……教会に出向いた頃から、ものすごい量を食って食って食って食って食って食って食って食って食いまくったみたいだ……そうして得た称号が〈百合の園の主〉だからね……。


 たぶん自分の心を守る為でもあったと思うんだけど……さすが俺の女体化と言えるかもしれん。


 まぁ俺は別に女子に生まれ変わる事自体には忌避感は無い。


 すでに数回女子として人生を過ごして居たし、その頃の知識を読んでもそれほど嫌がっては居ない事が判る。


 つまりは洗脳とか精神誘導をされていた事が問題なだけだ。


 むしろ女性での人生は女子の気持ちが少し理解出来て嬉しかったくらいだ、男子による胸への視線があんな風だとか、月の物の苦しさとか、そういうのを知れて女子に優しく成れる気がしたもんだよ。


 まぁ……吟遊詩人の時の最後はちょっと……あれだったけどね……。


 いや……この話はいいか……。


 そうして百合百合と過ごす私には、世界の半分が味方をして……世界の半分が敵に成った訳だ。


 男性に虐げられる女性を助けて百合に巻き込む、貧困にあえぐ女性を助けて百合で絡めとる、好きでもない男に迫られて困っている女性を助けて百合の園の住人と為す。


 そんな事をしていれば、男共に嫌われる事間違い無しだよね、だから。


 悪名である〈百合の性女〉と〈百合の性騎士〉なんてのがついている、どれだけの男を泣かせたかって話だ。


 たぶん俺のせいで、あの時期の百合の園の周辺地域では男の独身率がすげー高かったと思う。



 そして最後は……記憶にないって事は、寝ている間か何かに死んだか殺されたんだろうね、まぁ碌な死に方してなさそうだ。



 まぁ前世に有った事の整理はこんな所かなぁ……。


 ……あ、ユリアさんの事があったか。


 ぶっちゃけると、リリアンはユリアさんも食った、そりゃもう食いまくった。


 でもロバートさんは最後まで友好的な男性の一人だったね、恐らく子供の頃から積み上げた友好度が最後まで勝ったんだろうね……リリアンは父親とか弟ともそこそこ上手くやってた記憶が残ってるし。


 ユリアさんは教会には入らずにロバートさんと共に、百合の園と呼ばれたリリン教会領に引っ越しをして過ごしており、リリアンの側に最後まで居続けた。


 ロバートさんはリリアンとユリアさんの関係を許してくれたんだよね、リリアンのことも好きなユリアさんを、その心も含めて丸ごと嫁にするって宣言してた……器のでっけぇ男だなーと思う。


 なのでユリアさんが産んだロバートさんとの子供を、リリアンは自分の子供の様に思っていたみたい、このあたりは母性本能が出ちゃってたみたいだけどリリアンも気にせずそのままにして子供を可愛がっていた記憶が見える。


 まぁ……ユリアさんの何人かいる子供のうちの男の子には最終的には嫌われちゃったみたいだけどね……。


 まぁ、こんな感じの人生だったみたいだ。



 そして俺はまた神気ポイントが減るのを待つ。



 なんでか?



 そりゃぁ……このまま転生をせずに消えたいからだよ。


 神気ポイントが切れたらどうなるのかとか説明が有る訳じゃないけども、たぶん魂の消滅なんじゃないかなーと思って、その時が来るのをじっと待っている。


 リリアンの生前の所業が物凄かった為に神気ポイントがやべー数値になってるんだけどね……本の影響力ってすごいね、それだけ沢山の人を幸せにしたって事かね。


 その後も民の半分を救い続けたって訳だ、もう半分には嫌われたけど……別に男を殺した訳じゃないからマイナスも無いっぽい。



 それだけのすごい神気ポイントがあって何故消えようとしているのか?


 だって俺の称号を見てくれよ……。


 称号〈ハーレム王〉 効果 精力+1 性技+1 異性友好度+1

 称号〈百合騎士〉  効果 同性友好度+1 同性好感度+1

 称号〈百合の君〉  効果 同性好感度+1 同性魅了+1

 称号〈希望の星〉  効果 異性好感度+1 異性魅了+1

 称号〈百合の聖女〉 効果 同性魅了+1 カリスマ+1

 称号〈百合の聖騎士〉効果 同性好感度+1 カリスマ+1

 称号〈百合の園の主〉効果 同性魅了+2 体力+2

 悪名〈百合の性女〉 効果 精力+1 性技+1 男性友好度-1

 悪名〈百合の性騎士〉効果 精力+1 性技+1 男性好感度-1


 これだぜ? これは残す訳に行かないだろ?


 今回のこの精神操作が為された原因を考えると……『特殊転生ガチャ』って奴が怪しいと思わないか?


 そしてあのガチャは……メリット称号を神気へと変換したら現れて、しかもガチャがそれに固定してしまうというクソ運営っぷりだった!


 いやもうメリット称号という呼び名すら間違えていたかもしれない……なんだよ魅了って……それは小説の中に出て来る悪役令嬢が使う様なザマーされる側の能力じゃんか……。


 つまり、この称号を残して転生はしたくない、でも消すとまた精神操作をされそう、ここでの記憶が転生先で残らないのなら次の転生も運よく精神操作に気付くとは限らない。


 もし女性に転生して、男と結婚をし子供を産み、幸せに暮らしたらどうするよ……。


 そして寿命で死んだ後に全ての記憶が甦るここに来た時に俺の精神はどうなると思う?


 幸せに暮らしたからメデタシメデタシ? んな訳あるか!!!


 ……もう諦めて魂ごと消えちまうしか……ねーじゃんかよ……。



 ……。



 ……。



 ――

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