第74話 どうしてこうなった?
「リリアン嬢、私と結婚してくれないだろうか?」
どうして……どうしてだろうか……。
こん……にち……はリリ……アン・ミルス……ター13歳で……す?
貴族学校……二年になった私、今季も色々……ありましたが、今は……夏季休暇に入る直前……です。
普段は男と……二人っきりになろうとは……しないの……ですが、王族のお召とあらば……簡単には断われません……なので個室ではなく庭園の……東屋ならばとお受けしたの……ですが……。
このイケメンで優しくて頭が良くて周りへの配慮も忘れない王子に告白を……されて……しまいました……。
かなり前、去年の秋頃……から男子の動きがおかしく……なった気がします、女子と同じ様に……やけに私に……近づいて来るのです。
別に男子とは……友達関係なら良い、だけど私は私は……私とは……誰だ?
頭を抱えて東屋の柱に寄りかかる……第三王子は慌てて私を抱きかかえると……心配そうに私を見て来る……。
やめて……近づかないで……なんでこんなに胸がドキドキと……そんな訳が……。
「リリアン嬢? 大丈夫? 保健室に運ぼうか?」
その優しい声と、本気で私の事を……心配しているという事が……判る王子の姿に……私の心はキュンッと……いや……違う……こんな訳が……。
「ちょっとごめんね」
王子はそう言って返事をしない私をお姫様だっこしようと……。
違う! 違う違う違う!!!
私は王子を……殴り飛ばした、錐もみ状態で飛び……生垣に飛び込んで……行った王子、従者が近くに……居ないで良かった……。
私は庭園の……生垣に刺さった王子……を引っ張り出す、うあ……顔がへこんでいる……鼻も……折れて気絶……して……いるようだ……。
キョロキョロと……周囲を確認して……から王子……に〈回復魔法特〉を……使用、うん、顔が元に……戻った、そして〈身体強化〉を使い……東屋のベンチに……王子を寝かせる。
これで……良し。
後は……私は……〈回復魔法特〉で自身に対して呪いと状態異常を……解除する魔法を魔力を全部使ってフルパワーで……かけた……。
……。
……。
――
――
「学期末の挨拶をする予定だったのに良かったのですか? リリアン様」
「いいんだよ、もう行く事は無いかもな場所だ」
今はミルスター家の離れである小屋に来ている。
夏季休暇前の期末の終わりの集まりで挨拶をする予定だったみたいだが……ユリアを連れて実家に帰ってきた所だ。
「帰るとだけ仰った後はほとんど説明を頂けませんでしたけど、体の調子でも悪いのですか? リリアン様」
この子は優しい良い子なんだな……。
「そうだね……なぁユリア? 君は俺がこの後、教会に駆け込むと言ったら……どうする?」
その時、ユリアの表情が激変した。
「リ、リリアンさ……いえ……貴方は……貴方は……誰ですか?」
「お……私はリリアン・ミルスターだよ」
「違います、いえ、リリアン様の体ではあるけども……心が違います、リリアン様に何をしたのですか!?」
はは、すごいなこの子は、どれだけ俺の事を丁重に事細かく見ていたのだろうか……。
「落ち着けユリア、もうすぐ君の知る私に戻る、だけども……それは私では無いんだ」
「意味が……あ、前に本に書いた事のある二重人格というやつですか? それともゴーストに憑りつかれたとか! きょ、教会に聖水を貰いに!」
「だから落ち着けユリア、あー……チッ……もう効果が……大丈夫よユリア、座りなさい」
「リリアン様! ご無事で……一体何があったのですか?」
一言で私の変化を見破るなんてさすが私のユリアね!
「そうね、私も混乱しているのだけど……大事な大事なユリアには説明をしないといけないわね」
「ああ、リリアン様が戻ってこられた……良かった……一体何が?」
「ユリアに分かるように説明をしないとね、ちょっと考えさせて」
私は目を瞑り、自身の考えを思考でまとめていく。
前々から私はおかしいのだと心の底で彼は叫びを上げていたのだ、それが本当の意味で貞操の危機を前にしてやっと表に出て来たという訳だ。
何がおかしいのか?
それは、私の心が女である事が、おかしいのだ。
前世でも何度か女性の体で過ごした事はある。
でも前世知識によると、意識は男性だったみたいで、周りにバレない様に女性っぽく振る舞った事はあれど……今生の私の様に、イケメンの男の子達に心がドキドキキュンキュンする事など無かったのだ……。
それが最近、周りの男子が私に性的にアプローチをする事でこの違和感に気付けた。
最後の決め手はイケメンで優しくてカッコイイ第三王子……くそ……今でも彼の事を考えると心がキュンッっとなる……。
……あのまま王子に告白をされていたら、私はたぶん告白を受け入れていたかもしれない、そして……キスくらいなら余裕で許していたかもしれない。
王子が男として最高の部類であったおかげで、しかも周りに誰も居ない状況で助かった……あそこでぶん殴れなかったら……私の真の心には強固な蓋をされて、今の私のまま将来は王族の一員になっていたかもしれない。
そして王族の子供を産んで……うぐぐ、落ち着いて……大丈夫判ってるから……。
はぁ……。
まぁ、顔がへこむくらいのパンチを食らわせたのは、ちょっと王子に申し訳なかったかもね。
この、私の心が女性になるという変化、私が使った呪いや状態異常に対する〈回復魔法特〉で、ある程度対抗出来た……が、時間が立てば元に戻った……最高クラスの魔法で解除出来ない? その時点で予想は確信に変わる。
そんな強力な呪いなんてこの世界だと亜神クラスの相手をまず考えるが、私には一つ神の力に心当たりがある。
そう……転生の力だ。
この訳の判らない神の如き所業、それが真に神の力ならば……〈回復魔法特〉で対抗出来ない状態異常も納得がいく、今までの前世ではこんな事が無かったが……今回初めて赤ん坊からの転生である事が関係をしている可能性が高い。
つまり……私は神によって精神を操られている訳だ……いや誘導と行った方が? どちらにしろ、今ここに居る私は彼では無い……その違和感には前々からたびたび気づいていたのだ、弟のアーサーに感じる母性本能の時だって……それなのにいつのまにか忘れてしまっていた。
何にせよ。
このままだと男に惚れてお嫁さん一直線コースなのは間違いない。
それだけは防がねば、私の中の彼もそれに賛成してくれている……。
所で私の中の俺さん、王子相手のドキドキキュンキュン告白を受けそうになった故の貞操の危機で出て来てくれたけど、女性相手の貞操の危機の時には一切気配を感じなかったんだけど……あ、そう……俺さんからは、そっちは大いにやってよろしいという感情が届いた。
まぁ……それしかないよね、私も私になってしまったけど、元が俺さんなのでやっぱり女の子が好きだしさ、ふざけた神だか運営だかに対抗するにも、やってやろうじゃないの。
となるとやはり……あ、ユリアにどうやって説明しようか?
っと俺さんから助言の感情が届く。
ふんふん、繰り返しじゃなくて一回だけの男の前世記憶持ちって? なるほど……。
多少嘘を混ぜるのは心苦しいけど……仕方ないわよね……。
よっし!
「ねぇユリア、聞いてくれる?」
「はい、リリアン様のお話ならいくらでも」
「ありがとうユリア、実は私はね――」
……。
……。
――
――
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