第27話 空の矢筒
side メイド
私の名はコニー、ミラー王国第五王女エメリン・ド・ミラー殿下のメイドだ。
今は姫様の領地を救いに来たと言っている上位貴族が率いる兵を領主館の敷地で出迎える準備をしている所だ。
スタンピードを耐える事幾数日、辛い防衛戦でした、ですが幸いと言ってよいのか怪我はあれど亡くなる人は一人も出ない状況で時は過ぎていきました。
その理由はやはりレオンさんのおかげでしょう、百発百中の弓によって強い魔物の数を減らす事で他の兵の負担も減ります、しかも常に先頭で指揮をとる事で兵や民達の士気も上がる、まさに平民の星と呼ばれるに相応しい希望の光がレオンさんです。
……姫様にレオンさんとの恋の相談をされたあの日に断ち切った想いは、憧れへと変化をしつつも私の心に残っています……今の夫はそんな想いを含めて受け入れると言ってくれた心の優しい最愛の人で、レオンさんのおかげで夫も子供も両親も生き残りました。
そうしてもうすぐスタンピードも終わりそうと成った時に上位貴族の旗を掲げる軍が視界の先に現れました……ですが一向に魔物に突撃をせずこちらの様子を街から離れた遠くから伺うばかり……。
レオンさんも姫様も彼らを放置をする事にして魔物の対応をしていたある時でした、彼ら貴族軍の方面から一般人が私達の館に向けて逃げてきたのです……まだ魔物のいる街の真っただ中を、です。
なんらかの罠だと判ってはいましたが……逃げてくる集団は子ども達でした……レオンさんは領兵部隊と共に子供達を救出しに館から出撃するしかなく、そんな時に今までまったく動かなかった上位貴族が率いる兵達が街に雪崩混んできました。
……。
領主館にいた姫様に貴族軍の連絡兵は言いました、街の中の魔物はこちらで倒すからまかせろと、そして……。
……子供を助けに行ったレオンさんは魔物にやられて倒れたと……。
彼らがいた方向から子供達が逃げてきた事に関しては、軍で保護していた子供達が急に逃げ出したと……。
それを聞いた姫様は貴族軍の連絡兵を帰らせ、屋敷に残った民に全てを話しました……そう……全てをです。
……。
今はこの戦いを切り抜けた全ての領民と領兵で、屋敷の敷地に入ってきた貴族軍の総指揮官である上位貴族と部隊指揮官である貴族達80人程を囲む様に出迎えている所です。
「救援ありがとうございます」
姫様が戦闘用の服で身を包み、敷地内に入って来た貴族軍のトップへと言葉を掛ける。
「ええ、間に合って良かったです、ですが御安心下さい、この
その上位貴族は笑いながらそう言ってきた。
そして姫様のナナメ後ろに居た私に耳打ちをしてくる領兵が一人。
貴族軍から受け取ったレオンさんと、そして一緒に子供達を助けに行った兵達の遺体の見分が終わった報告です。
私は貴族と屋敷の敷地で会話をしている姫様のうしろにそっと近づくと、その結果を小さな声で伝えていく。
レオンさんも領兵も魔物にやられたと言いたいのか酷い状態だったようですが……矢傷が確認出来……そして毒も使われたようでした……。
その報告は姫様だけではなく、貴族兵を出迎えた私達の領民や領兵にも耳打ちで伝えていっています。
……戦闘系の能力のない私でも、兵や民の中から怒りが立ち上るのが判ります。
貴族は能力持ちが多いが実践はほとんど経験しないとレオンさんが言っていました、なれば。
あの人たちは気づいているのでしょうか?
私達の領兵や民が、スタンピードが終わったにも関わらず、全員が完全装備で隊列を組んで囲むように貴族兵を出迎えている事に。
そうして姫様との結婚の話を持ち出している上位貴族の話を、姫様が遮った。
「そのお話はまた後程……×××様、私はこの戦いで命を賭けてくれた勇者達にこの銀髪を捧げようと思いますの……髪を切る為に剣を貸して下さらないかしら?」
姫様のその言葉に一瞬躊躇した上位貴族でしたが、『未来の嫁の頼みなら』とか馬鹿な事を言いつつ、その業物であろう片手剣を姫様に渡した。
姫様はその剣を抜くと頭上に掲げ、剣先で青々と晴れた空を指し、そして……。
振り下ろした。
……。
……。
――
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リザルト
〈財布〉×2〈水生成〉〈光生成〉〈精神耐性〉〈槍術〉〈格闘術〉〈演奏術〉
〈弓魔術〉〈夜目〉
〈魔力+11〉〈体力+2〉〈腕力+4〉〈脚力+2〉〈器用+2〉〈精神+2〉
称号〈下町の聖女〉 効果 治癒魔法効果+1
称号〈酒場の歌姫〉 効果 歌唱+1
称号〈平民の星〉 効果 民兵士気+1 平民好感度+1
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