第2章 その10
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夜の首都高晴海線・豊洲出口――警察車両とバリケードで豊洲出口を狭めて複数の武装制服警官らが一般車両を流しとおしている。
屋根にパトランプを出したレックーザ800(覆面車)に乗った高山浩司と芝山淳司が、ミラーや窓の外を見ては、しまりない表情を見せる。
車内無線機のランプが光る。
「こちらスノーマン。今のところレッドらしき赤のスポーツカーは姿を見せていないわ」と、沖勇希の声がする。
レックーザ800の横で単車に跨る沖勇作が、マグナムを出て、シリンダーを開ける。
(実弾6発、OKだ。マグナム弾ではだめだ。357の貫通段でないと)と、シリンダーを閉じて、腰にコンバットマグナムを収める沖勇作。
「ナンバー444だ」と、レシーバーを抑えて話す沖勇作。跨っている単車の右ミラーにかかっている黒いヘルメット。
「新情報ありきですよ、皆さん。かなり有利です」と、望月遥の声。
「今夜こそお縄にするわよ」と、沖勇希の声。
跨ったままサイドスタンドを立てて、立って……腰を回す沖勇作。
TOYOSU―SYO1階フロア――掛け時計6時59分からの模様。
海晴が『免許更新』の受付で、残務整理している。
舞花が上から階段を下りてきて、カウンター越しに海晴に話しかける。
「あれ。海晴って、残務整理?」と、舞花。
海晴が笑ってパソコンを使いつつ……舞花に話を返す。
「あ、お疲れ、舞花。ん、でも終わる。最後のオバサンには参ったわ」
「大変なんだね、交通課の受付嬢も」と、玄関外に気が行ってしまっている舞花。
ガラスドアの玄関外に、ド、ド、ド、ド……と音を立てて徐行している沖勇作が運転する単車。
舞花と海晴が外を見る。
一時停止して、エンジン音を棚引かせて……一般道路へと出て行く沖勇作の単車が玄関ガラス外に見える。
「あれって、沖警部補だよね、舞花」と、晴海がキーボードとマウスを使用する。
ジーっと外を見ている舞花。
「さあ、終わった。舞花、飲みに行く」と、海晴が手を止めて、外を見て話す。
海晴がパソコンのマウスをクリックして、笑顔で話す。
舞花が外を見つめたまま、口を動かす。「う、ううん……いくぅ」
「え、何? 舞花って、やばい感じ?」と、海晴。
「アタシってバディだし。おじいちゃまの」と、舞花。
海晴が受付から出て、舞花と向き合う。
「絶対にありえないし!」と、舞花が筋違いなことを口走る。
「ああ、そっち、舞花、閉まって……」と、海晴が外を見つつ、クリックして画面を消す。
舞花が走って、開かなかった自動ドアに頭をぶつけて、蹲る。
海晴が小走りにカウンターを出て……出した手を振って舞花に近寄る。
舞花が海晴の顔を見上げて、自ら立ち上がりつつも、オデコを擦って痛がる。
「ああ、いったああい、し!」
舞花と海晴が見合って吹き出し……大笑いする。
「あ、イケない。私、着替えて来るよ」と、襟を掴んでお道化る海晴。
「じゃあ、勇希さんらも! 呼んで女子会だし」と、舞花。
海晴が頷いて、笑顔で行く。
舞花が階段陰の通用口ドアへと歩き……止まってバッグからスマホを出して、電話する。
「遥先輩。今から遊びませんか?」
と、電話をしながら、通用ドアから外に出る。
掛け時計はアナログ電波時計で、7時20分。
その無数の塵ばんだ様な明かりが夜景の一部と化している七色橋は、レインボーブリッジ袂の首都高・有明ジャンクション――『一車線規制中』の看板。
一般車両が渋滞して、パイロンと警官らに誘導され……ひと車両ごとに通過している。
安全地帯に止まった、パトランプを光らせている覆面車の運転席に乗っている望月遥。
助手席に乗っている沖勇希が、窓から見える搭載無線機に向かって話している。
「まるで警察に挑むかのように、平均時速160キロで走り向けて行く。作戦概要、22時ジャストでいったん規制を緩めるからね」と、勇希が外を見る。
車内無線機のランプがチカチカしては、無音の点灯状態になる。
勇希が助手席で、遥が向けたスマホを見る。『若井舞花』表示の着信コマンドが出ている。
「舞花ちゃんなら」と、頷く勇希。
「はい」と、画面のボタンをタッチする遥。
スマホ画面隅のデジタル時計は、19時20分。
隼田の赤いスポーツカーの車内――車窓外に見る夜空と螺旋状の天に向かうような道を背景にする『大黒サービスエリア』の標識看板。
エンジンがかかった車内。フロントガラス外に、大黒パーキングエリアの風景。左右の窓に、大型トラックが止まっている。
――交通情報。只今レインボーブリッジで警視庁規制中――の、電光掲示板に輝く文字。
隼田が運転席にいて、ゆったりとシートに座って眺めている。
(沖先輩か! 357貫通弾を使ってタイヤを狙う。ランフラットタイヤの調達。間に合ってよかった)
と、フォーン! と軽いエンジンの音をまた一つ棚引かせる。
TOYOSU―SYOビルの裏手――通用口ドアに寄りかかって、スマホで電話をしている舞花。
「え、って、今ってどこかな?」と、夜空を仰ぐ舞花が前を向く。
フェンス出入り口に『関係車両駐車場』の看板。フェンスに囲まれた駐車場内に、ミニパトが3台止まっている。大型も含めて他の全枠が空車。
夜景のレインボーブリッジの袂でパトランプを光らせた覆面車――の車内。
遥が運転席で右を向いてスマホで話す。
勇希が助手席で無線機に向かって話す。
「ごめん、夜勤中なんだ。若井さん」と、遥。
「東雲ジャンクションから……」と、無線連絡確認中の勇希。
二人が眺める先に……電飾したレインボーブリッジ。
夜の首都高晴海線・豊洲出口――警察車両とバリケードで豊洲出口の道路を封鎖している。覆面車のレックーザ800に高山浩司と芝山淳司が乗っている。
『出口』脇を通る一般道の交通整理をする警察。大型バスを伴うバリケード。
単車に跨ってリラックス状態の沖勇作。
レックーザ800の覆面車、搭載無線機。
「晴海線豊洲出口へと追い込む」と、勇希の声。
沖勇作が、『豊洲出口』の標識看板横のバリケード沿いで警戒待機している不特定一人の武装警官と頷きあう。
夜景のレインボーブリッジの袂でパトランプを光らせた覆面車――の車内。
助手席で無線機に話す勇希。
「作戦名……」と、勇希。
遥が運転席でスマホに話す。
「身内にも話せないの。ごめんね」と、スマホ画面をタッチする望月遥。
TOYOSU―SYOビルの裏手――外明かりの通用口ドアに寄りかかって、スマホで電話をしている舞花。
「ん。またお誘いしますね、遥さん」
と、画面タッチして、文字を打ち込む舞花。
画面で、位置確認アプリが起動して、登録済みの遥の現在地をマップに示す。
画面のマップで、赤い点がでる。
「有明ジャンクション、かー」と、舞花。
舞花が押されて、ドアから離れる。
ドアを開けて、海晴が出てくる。
「ああ、お待たせ、いこ」と、海晴。
舞花と海晴、建物沿いに歩く。
「ああ、待って、海晴」と、足を止める舞花。
海晴が足を止めて振り向く。
「ミニパト、準備して」と、舞花。
「ええ、無理」と、海晴。
「平気平気。アタシのせいにしていいし」と、舞花。
「うん、でも……」と、海晴。
「一生のお願い。その代償を背負うから」
「もーしょうがないなー」
「あ、めんご。キー取って来て。着信」
と、スマホをバッグから出し見せる舞花。
「もー、和牛ステーキおごってよ、舞花」と、通用口ドアを入って行く海晴。
「OK」と、かたどった指サインも示して、微笑む舞花。
舞花がスマホ画面をタッチ操作する。
画面に『申立集団サイト』。
舞花がタッチしてチャットを打ち込む。
――今、最新情報アリ。サツが上道路ハードに張っている、レッドマターは注意されたし。ⅯIK――
舞花がスマホをバッグに仕舞う。
海晴が出て来て、キーを見せる。
『関係車両駐車場』のかかったフェンスの中にミニパトが3台止まっている。
フェンス口のカギを開ける海晴。
「3号車よ」と、海晴。
舞花と海晴が駐車場のミニパトに行く。
海晴が運転席側に行く。
「あとで、チュンナップしちゃうし」
と、助手席に乗る若井舞花。
若井舞花の回想――隼田恭介の住まい兼のコンテナカードッグ内――
赤いミッドシップカーの下に潜っていた隼田が顔を出して、笑う。
「はい、これ、恭介」と、舞花が笑顔でスパナを隼田に渡す。
恭介が、舞花が手に乗せたスパナを掴んで、何やら底部で作業する。
「舞。かかわるな。もう別れよう。これは俺と下を庇えない元職場のお歴々都の戦い……」
「アタシだって、それやられたら怒るし。なら、辞める警察だけが仕事じゃないし」
出てきた恭介の手を取って起こした反動で、抱き合う形になって、ニンマリとする舞花。
元の通用口――ドア口から見える駐車場のミニパト。
助手席の舞花が、絵空かげんに……遠くの夜空を見ている。
運転席で海晴がハンドルを握りしめる。
隼田の赤いスポーツカーの車内――車窓外に見る夜空と螺旋状の天に向かうような道を背景にする『大黒サービスエリア』の標識看板。
エンジンがかかった車内。フロントガラス外に、大黒パーキングエリアの風景。左右の窓に、大型トラックが止まっている。
――交通情報。只今レインボーブリッジで警視庁規制中――の、電光掲示板に輝く文字。
隼田が運転席にいて、ゆったりとシートに座って眺めている。
大型車両の陰に、レッドマターが止まっている。運転席に隼田が乗っている。
屋根から左サイドに『REDMATTER』と『異議申し立て奉り候!』の塗装文字。
平常速度でレッドマター車が発進する。
TOYOSU―SYO裏手――夜の駐車場で、助手席に舞花が乗ったミニパトを、海晴が強張った顔で走らせる。
ミニパトがノッキングして止まる。
「ねえ、平気? 海晴、緊張?」と、舞花。
「運転ダメ。NGなのよ」と、海晴。
「え、だって、交通課っしょ」
「だから受付嬢なの。ギヤー苦手」
「じゃ、かして、海晴」
舞花が出て前を回って、運転席に乗る。
海晴が首を傾げて、出て、後ろを回る。
舞花がシートを倒して、腕と足のポジションを調整て、アクセルを吹かす。
海晴が助手席に乗る。
「いっくよ。海晴!」と、舞花が息む顔を擦る。
キュ、キュッ! と、ミニパトがホイルスピンして、出る。
その正面――建物の陰から舞花が運転するミニパトが出て来て、一時停止して、一般道路をドリフトさせて走っていく。
夜の首都高晴海線・豊洲出口――警察車両とバリケードで豊洲出口を狭めて複数の武装制服警官らが一般車両を流しとおしている。
レックーザ800で余裕こいて、通過する一般車両や沖勇作を見る高山浩司と芝山淳司。
その背中をやや向けて、ミラーにメットを引っかけ、単車に跨ったままの沖勇作が……豊洲出口の下り坂を見て……目を瞑る。
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