第2章 その5

   その5


 TOYOSU―SYO屋上――からの東京湾の翌朝は、朝からのにわか雨で臨めるはずのレインボーブリッジの警告灯の赤いチカチカのみが誇張する。陸地の高層建造物すら……赤いチカチカを乗せた四角い輪郭が拝める。ま、豊洲市場を控える豊洲の街はその限りではなく、ひんやりとした感じの灰色状態で臨めてはいるが……。

 ライトグレーと黒のツートンカラーのレインウエアをきた見覚えにあるダビットソン社の大型単車が……ドッドドオドドド……と道を着て、少し開いている門扉を通って……ビルの裏手へと走って行く。

 ――十分ほど間をおいて! フォーン! と、乾いたエンジン音のライトグレーにピンクのラインカウルのレーシングタイプのバイク(単車)が入って来て、裏手へと行く。そのライダーもカウル同様のレインウエアを着ている。が、その体系から女子だ。

 裏手へと見えなくなった間をおいて……赤縁取りビニール傘を差したショルダーバッグに、ポニーテール女子の若井舞花が門扉を入って来て、その正面玄関に入って行く。



 豊洲署捜査課――観音ゲート上の時計は8時55分。神棚を上にした大型モニターの前にブリーフィングテーブルと六脚の椅子。Uの字デスクで、桐溝零華、真中透、若井舞花、沖勇作の面々が銘々にパソコンや手帳、スマホを眺めては……時より口を動かす鮫須保係長を見る。

「……と言うことで、本日も管内で犯罪が起こった時のために、待機していて下さい」と、鮫須係長が朝のミーティングを締める。

 桐溝零華、真中透、若井舞花、沖勇作と、姿勢を正す敬礼をする。

「お早う御座います」「昨夜の反省会をしましょ、ガンマンさん」

 と、Pパッドを持った望月遥と、沖勇希が入って来て、ブリーフィング席に座る。

「お早う御座います。勇希警部補。風見警部から連絡がありました」と、鮫須係長。

「でもどうしてここで、です? 勇希さん」と、真中。

「だあって、うるさくて。コバエどもが」と、勇希が遥と向き合ってとっぷりと頷く。

「おは、遥ちゃん先輩」と、舞花。

「ん。お久―、舞花」と、遥。

「ああ、確か、君たちは」と、鮫須係長。

『ん。前の署で。係長さん』と、舞花と遥の声がダブル。

「捜査課と交通課だったけれど、人員が少数だったからねー」と、遥。

「てへへ……」と、ポニーテールの付け根下を掻く舞花。

「鎌田配属直後に、重要参考人からの疑いで謹慎だものね」と、遥。

 鋭い目つきを一瞬舞花に向ける――零華。

「あああ……あ! そこは、ね、遥ちゃん先輩」と、手を前に出して、機敏に振る舞花。

「ああーあ、ごめん、舞花」と、両手で自らの口を追い、目を左右に動かす遥。

「なんか、訳ありってか、その若さで」と、沖勇作。

 沖勇作を、遠くを見るような目で見た舞花が、「いいでしょ、オジちゃまには関係ないし」

「それで。不意を突かれたようですね、先輩。レッドに」と、真中。

 真中を見る沖勇作ら全視線――。

「あれ? その反省会ですよね」と、真中。

「そうだな。脱線したな話が」と、沖勇作。

 舞花が真中を見て、つつましく頷く。

「では、Pパッドの首都高カメラの映像を見ながら……」と、遥がPパッドを起動させる。

 ――二分割してモニターに昨夜の首都高レインボーブリッジ付近の映像と、マッピングによる車両の流れの情報が映る――

「私たちも加わっても。望月遥巡査部長」と、零華。

「うん。皆さんの意見も聞きたいわ」と、遥。

「まさかの逆回りとわな」と、沖勇希。

「今までは、上り車線でした」と、望月遥。

「ま、レインボーブリッジを通過する目的意志には違いないぜ!」と、沖勇作。

「REDMATTERって。どれくらい? 情報あるの、かな」と、舞花。

「うん、舞花。首都高カメラでは、横浜の方から来るのよ」と、遥。

「東京管轄外か!」と、沖勇作。

「情報共有は、勇希さん。望月さん」と、真中。

「うん、そうねー」と、勇希。

「神奈川県警にも打診してはいるのですが、住まいなどは絞り込めては居ません」と、遥。

「どうして? 爆走行為をしているのですか?」と、零華。

「それも、謎です」と、遥。

「まあー現行犯逮捕ね」と、勇希。

「ま。あのチュンナップっぷりは、手練れだな。たいしたオプション装備ではないが、出しゃばっているものもない並列な装備だったぜ! 下から見た感じでは」と、沖勇作。

「へえー、オジちゃまって。詳しいんだ、車にも」と、舞花。

「ま。単車も車も基本は一緒だろ。二本か四本かだ」と、沖勇作。

「二本? 四本? ……ああ! タイヤの本数か」と、鮫須係長。

「そうだし、オジちゃま。800メートルのストレートを時速140キロ以上で快走するには走り屋テクも、だし」と、舞花。

「ん?」と、舞花を見る勇希……。

「次の金曜日だな!」と、挑む喜びに満ち溢れる表情の沖勇作。

「アタシ、外回りで、マンション寄ってきます」と、立っていく舞花。

「なら、一緒に行っていい? 舞花ちゃん」と、零華。

『じゃあ、私達も』と、意思の疎通ができてきたように同時に立つ遥と勇希。

「戻ります」と、勇希が反省会を締めて。敬礼をして、観音ゲートを出て行く二人。

「あ、ごめん。女の子の事情、だしー。零華ちゃん。今日は一人で……」と、バッグを肩にかけ、ポニーの尻尾を小刻み縦に揺らし……とっとと行ってしまう舞花。

「では俺も、お出かけします。デカ長」と、立って、ニヒルに敬礼していく沖勇作。



 首都高1号線――俄かに雨が名護る高速道路でも、各車両の混雑ぶりは相変わらずだ。他の車両と同様に……水しぶきを上げてレインウエアを着た沖勇作が単車で行く。

 追尾するRGV1100明記のグレー系ピンクラインカウルのスポーツタイプの単車の、同様にグレー系にピンクラインのレインウエアのライダーは、その感じから女子体形だ。

「オジ様。現場でしょ」と、インカム越しに声をかける零華。

「ああ、よく分かったな、零華」と、ミラーを見た沖勇作が応答する。

「ご一緒していい?」

「ああ、構わないぜ、零華なら」

 と、黒の単車と並走するグレー系ピンクラインのスポーツタイプの単車。



 京浜東北線下り――電車の中でシートに座ってスマホで『申立サイト黒板』のチャットをする若井舞花。

 REDMATTERのチャット閲覧

 ――ゆうべも出し抜いてやったぜ。いかに警察が無能かを。上層幹部連中はまたトカゲのシッポ切か、スカンクの最後っ屁噛ますんだろうがな――REDMATTER――

 スマホを見つめる舞花――物思いにふけるその意識を、アナウンスが現在に呼び戻す。

「鎌田ぁー鎌田ぁー」と、車内アナウンス。

 スマホを握ってずれていたショルダーバッグの紐を肩にかけ、立つ舞花。

電車が停車して、ドアを開ける……。赤縁のビニール傘を片手に降りる後ろ姿にポニーテールが湿りがち……。



 レインボーブリッジ――首都高下り車線の入口から……ダビットソン社の黒の単車をレインウエア姿の沖勇作が運転してくる。その後ろから横へと……レインウエア姿の桐溝零華がRGV1100明記カウルのレーシングタイプの単車で追走してくる。

 その中ほどの路肩にウインカーを左にあげて止まる二台の単車。手押しで単車を白線(車線)外側へと移動させ……センタースタンドで立てる二人。

「いい単車だ」と、目深に来て……しゃがんでRGV1100をまじまじと見る沖勇作。

「バイクもありよね、都心では」と、零華が屈んでみている沖勇作を上から見る。

「ああ、渋滞知らずだ」と、見上げる沖勇作。

「うん」と、零華。

「昼ではやっぱ、違うなぁ」と、立ち上がる沖勇作が、豊洲方面から左へと景観を臨む。

「でも今日は空が薄暗いから、少しは近いのでは」と、零華が空を見上げる。

 もう雨が止んでいて……時より薄日も差し込む空模様……。

「奴は向こうからきて……」と、沖勇作が手を伸ばす。

 零華も示す方向を見て……。

「俺がそこで、上を取られて、悔し紛れに撃ってやったがシャーシーだった」と、沖勇作。

 零華が入り口を直視する……その目が仄かに青く輝く……して、消灯し通常の目に戻り、「瞬間速度142キロで、片輪走行……!?」と、首を傾げる。

 入口を見ていた沖勇作が、途中から零華を見て……への字眉で口を少し尖らせる。

「反省会では、神奈川から来ることは明らかよね、オジ様」と、レインウエアを脱ぐ零華。

「じゃ、昨夜は横羽線できたか」と、沖勇作が脱いだレインウエアをコンパクトにたたむ。

「この橋を通過するにはふたルートよね、オジ様」と、単車を押してスタンドを戻す零華。

「よおし、行ってみるか、時計回りルートで。県警に」と、単車に跨る沖勇作。

「神奈川? じゃあ、休暇届するね、オジ様」と、セルスタートでエンジンをかける零華。

「え、あ、ああ。気が利くなあー零華」と、インカムを通じて話す沖勇作。

「……あ、係長さん。私たち、これから休暇を取ります」と、インカムで届けを出す零華。

「え? いきなり、なんでです?」と、インカム向こうの鮫須係長の声。

「ちょいっと、神奈川まで、オジ様と」

「ああ、そういうことですか。ま、あちらになるべくご迷惑にならないようにお願いしますよ」と、鮫須係長が了承した声。

「はい。では」と、声紋認証自動通信が切れて、グローブの手で親指を立てる舞花。

 ニヒルVサインをかまし、単車を発進させる沖勇作……続くRGV1100の桐溝零華。

 お台場方面へと並走して走り去っていく……二台の単車。



 警視庁交通課――フロアで、上原公一が、高山浩司と芝山淳司に叱咤激励!

「新車をあんなにしやがって。一日も持たんとはどんな運転を擦れば!」

 付近のデスクに着いている望月遥と、横の空き椅子に座ってパソコンを見ていた沖勇希が、驚いてそっちを見る。

「沖勇作が」「撃ったんですよ」「マグナムで」「踏み台にしやがった」

 と、矢継ぎ早の言い訳すら気が合う二人は、高山浩司と芝山淳司。

「彼奴かー。査問にかけてやるうー!」と、上原公一。

「でも、あの場合」と、否が応でも耳に届いてしまっていた遥が口を挟む。

「対向車線のREDの前に早急に出るには、致し方なかったかと」と、沖勇希。

「踏み台にすることは……」「ねえよな、浩司」「ああ、淳司」と、二人。

「今度こそ首に出来る、沖勇作を」と、出口へと怒り心頭で出て行く上原公一。

「でも、三発」「ああ、撃ったのに。前輪左右のタイヤだけって」と、不思議がる二人。

 向き合ってくすくすと笑う遥と勇希。

 眉間に皺寄せして首を傾けて二人の女子を見る高山浩司と芝山淳司。

「ふふっ。あおいのねお二人って」と、遥。

「なりだけいっちょ前のメッキ男子だね、二人は」と、勇希が言って、「お茶しにいこ、遥ちゃん」

 と、すっと立って、捜査課を出て行く望月遥と沖勇希。「駅ビルの、新参なカフェのあそこ行く」「ああいいですね、私も行ってみたいと……」



 タワービル最上階のリビング――テーブルに置かれたパソコン画面に、REDMATTERの『申立サイト黒板』のチャットを見て頷く近藤孝道。

 ――ゆうべも出し抜いてやったぜ。いかに警察が無能かを。上層幹部連中はまたトカゲのシッポ切か、スカンクの最後っ屁噛ますんだろうがな――REDMATTER――

 鼻で笑って立ち上がり……ベランダに出る近藤孝道。

「年の差はあれど。似た者同士、だな。勇作」と、呟く近藤の後ろ姿。

 その前方に広がるレインボーブリッジを含む東京湾の景観。



 鎌田商店街アーケードで天井無しの――賑やかな車両も通行可能な通りを路地裏へと入って行くショルダーバッグにポニーテールの若井舞花。



 曇り空の下の中層階マンション――玄関を入るポニーテールの舞花の後ろ姿。


 舞花のプライベートルームワンルームリビングテーブル上に置かれた舞花お気に入りのショルダーバッグ。狭いドアが手前に開いていて、掠れるように物音が時頼する。


 洗面所――鏡下の洗面台にカップに立てかけてある赤い歯ブラシ二つ。

「ここはもうー遠い、かな?」

 と、鏡に写った姿を見て、筋肉を動かし変顔体操をして……しまいに作り笑顔の舞花。



 コンテナの住処――ガレージで、REDMATTERをメンテナンスする隼田恭介。

 シャーシー四カ所にウマをかって浮いている『・444』ナンバーの赤い車体。コロ付きお手製台車に仰向けになり、潜って底部を見ている赤繋ぎ作業着姿の隼田。

「流石マグナム弾。シャーシーが傷ついている。亀裂はないから交換はいいかな」

 と、ぶつくさ言って出て来て、外ベリした右リヤタイヤを見て、奥を覗き込む隼田。

「車軸はイってないな。ジャンプするには台となるものが無かったし」

 と、装着しているリヤタイヤを手で揺さぶり、ガタを見る隼田が、作業に入る。

 浮いたタイヤの下に先を斜めにカットした木製の角材を小槌でかまし……接地面を造る。

 タイヤナット用のⅬ字レンチを肉厚パイプで延長して梃の原理を使ってナットを外す。

 外したタイヤを……工具がお行儀よく並んだコンテナ内壁に設けてあるマシンにセットする。手際よくアルミホイルとタイヤを分離させ……タイヤとアルミホイルと一旦床に置く。車体の左側にいって同じくタイヤを外し。これまた同じくホイルからタイヤを離脱させる隼田。

 マシンにセットしたままのホイルに片ベリしたタイヤをセットする隼田。ホイル裏側に減った個所が来ていることを確認した隼田は……コンプレッサーで耐圧ホースの三丹についたゲージを見ながら空気圧調整して……バランス調整をして、車体後ろ左へとセットする。ついたタイヤをよく見ると、回転方向を指定するデザインがかった矢印が、前回りする方向にある!

 と、右後ろ……と、前も左右のタイヤを同じく入れ替え装着して、車体をウマからジャッキを四カ所交代にアップして……外し下す。

 繋ぎ上部を脱いでまるめて腰に袖で巻き付け、手袋を外し、運転席に乗る隼田が笑う。



 神奈川県警警察署――10階建てのビル。玄関横に白黒パトカーが止まっている。その横の空き駐車枠に……沖勇作の黒い単車と……グレーにピンクラインカウルの桐溝零華の単車が止まる。メットを外してミラーにかけて……沖勇作が見た腕時計は、3時半。

 打ち合わせるまでもなくほぼ同時に建物を見上げて……玄関を入って行く零華と沖勇作。

「ああ、交通課の係長さんに……」と、受付で案内を乞う桐溝零華の声。


 その交通課――壁一面に神奈川県内道路交通網の状況を締めるモニターがかかっていて、混雑や渋滞状況を示している。

 それを背景に、沖勇作と対峙する沢村トオル係長、四十四歳が話す。

 傍らで、桐溝零華がメインモニターをガン見して……瞳を青く光らせる。

「その昔は、僕だって、危ない先輩二人とドンパチやったものですよ。東京のあぶデカさん」と、目を輝かせて言う。

 沖勇作が眉間に皺寄せする。

「まあその所為で、僕は交通課に回されたけれど……」と、下を向く沢村係長。

 その間、零華が青く輝かせた瞳を通じて――カメラデータハックして……人工知能の海馬に記憶している。

「係長。本牧三丁目交差点で交通事故です」

「なんだ! 処置対応はマニュアル通りに」と、沢村係長。

「それが」

「なに?」

「赤いスポーツカーで」

「モニターに出してっ」と、沢村係長がモニターを差す。

 マップ横のモニターに――交差点事故の模様が映る。ハイブリットカーと赤いスポーツカーの出会い頭事故の模様――

「これはミッドシップカーではないぜ」と、沖勇作。

「まあ、とにかく、通常で処置すればいい」と、沢村係長。

「それで係長さん。その後の何か情報は入りましたか?」と、零華が通常の瞳に戻す。

「ああーそれなら」と、沢村係長がパソコンキーボードの『Enter』キーを叩く。

 ――モニターに四つのミッドシップカーが出て来て――三人が見る。

「ナンバー。何れも横浜・333で・444。4444で。平仮名はまちまちですが、意味深な番号です」と、沢村係長。

 再び――目を輝かす零華。見ようによってはモニターの光が瞳に映っている様にも……。

 手帳を出して書き込む沖勇作。

「所有者の特定は、神奈川のトールさん」と、沖勇作。

「こちらに」と、マウスをクリックする沢村係長。

 ――モニターに四人の登録住所が映る。

 また、目を輝かす零華。

 手帳に書き込む沖勇作。「川崎……横須賀ぁ……保土ヶやあーに、……横浜ぁーってか!」

 零華を見る沖勇作。微笑み返す零華。同時に沢村係長を見る零華と沖勇作。

「では、当たって見ます」と、後ろを向く沖勇作と。零華。

「ああ……(手で呼び止めて)管轄、ここは神奈川!」と、沢村係長。

 振り向く沖勇作が「ああ、休暇中だ。ま、トールさんの許可を得たということで」

「ですので、自由行動いいですよね、素敵な係長さん」と、ウインクをする零華。

 でれーッと……笑みを浮かべる沢村係長。

「そいことで。シクヨロ」と、後ろ手に、ニヒルVサインをかまし出て行く沖勇作。

「まったく。あれ? この感じ? 懐かしいのはどうして、かな?」

 と、いなくなった戸口を一目し続けている沢村トオル係長。



 地上高架橋上を行く電車の中――車窓の外に、遠くに臨む稜線の、昼と夜の狭間のホライズンに包まれた東京の光景が流れている。疎らな客の車内で、母子の隣りに座って膝上に持ったスマホ画面を見ている若井舞花……。

「あの部屋は、あまりに……」と、呟き声を漏らす舞花。「あーあ。癒しの館行こ!」

 お母さんの横で、後ろ向きに座って外を見ている女の子が舞花を見る。微笑み返す舞花。



 神奈川県内――西の空が稜線の影に覆われた今井インターチェンジ入口を前にして、路肩の安全地帯に停車する……ヘッドライトを焚いた二台の単車。黒い単車の沖勇作が手で合図して。RGV1100の単車の零華が隣に……。

 メットを外さずしてインカム通信で話す零華と沖勇作。跨って向き合っているが!

「平塚のは、下部が黒のツートンだったなあー」と、沖勇作。

「うん。全部真っ赤よね、オジ様」と、零華。

「よーし。今日はこれくらいにするか。零華ちゃん」と、暗くなった空を見上げる沖勇作。

「明日に持ち越しということは、どこかにお泊り? オジ様」

「ああ。あそこでいいか? 俺は床でいいから」

 と、沖勇作が指を差した先に――『ラブホ・希浜』のネオン看板を着けたもっともらしい塀に開かれている出入口。

「うん、いいですよ」と、顔色変えずに即答する零華。

「ああ、別に、エッチしないからな」

「ええーそんなに魅力ないですか? 私は! オジ様」と、セクシーポーズする零華。

「いいや。有り過ぎだ! が、今はREDで頭いっぱいなんだ」

「あそこなら。車庫もありからこのままランデブーで」と、単車を走らせる零華。

「ほんと、だかんなあー。魅力ないわけじゃ、なくて……」と、ついていく沖勇作の単車。

 高い塀の狭間の入口に……ランデブー走行で入って行く桐溝零華と沖勇作の単車。



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