第1章 その10

   10


 TOYOSU―SYO屋上――夕暮れで明かりが灯るアーケード街の屋根が臨める。


 アーケード街――インカムをしたブラウン革ジャン姿の沖勇作を挟んで、右にショルダーバッグをかけたポニーテールの舞花と、左に今時ルックでショートボブヘア姿の零華が、肩を並べて歩いている。

「チーフに、みょうじつ、のっけから二人の仕事っぷりを見たいって、頼んだか? 零ちゃん」と、沖勇作。

「うん、オジ様。事務所に戻った時に、チーフがまだ手配後の処理をしていたもので。断ってますよ」と、零華。

「のっけって? 何時? オジちゃま」と、舞花。

「三時に、あそこのたい焼きオブジェの前で、待ち合わせね」と、零華が右斜め方向に向かって指を差す。

 その矛先に、台座に乗ったたい焼きブロン象のオブジェ。

「え? 三時って」と、舞花。

「そうよ、朝の三時よ」と、零華。

「ま、のっけからの時間。そして出荷作業時までの一連の流れを見たいんだ、俺はな」と、沖勇作。

「明日は、二人とも出勤するのは確認済みよ、オジ様」と、零華。

 左の零華を見て、基本クールな表情を緩める沖勇作。

 舞花が左に一瞬目を向けて、閉じた口を左右に歪める。

 真っ直ぐ前を見て歩く零華。

 雑踏では、周囲を行き交う人々でざわついていて、三人の声に迷彩偽装してしまうため、インカムを通じての会話だ。

 前から……明らかなる見た目二十代ヤンキーナンパ野郎の三人組が、沖勇作らの行く手を阻む。

「よおー。オッサンのくせしてビッジ二人も連れやがって」と、ヤンキーの一人が体を揺すってさらに近づく。

「一人、こっちにまわしてや、オッサン」と、もう一人のヤンキーも同様に顔を凄ませる。

 三人目は、後ろで前の二人に合わせるように、表情を明らかに作っている。

 が。諸ともせずに、シカト(無視)をかます沖勇作ら三人が……歩き続ける。

 シカトされたヤンキー三人組の一人が、舞花の腕を後ろから引く。

「よお、カノジョ! まずは飯食いつきあえよ」と、ヤンキーが強引に誘う。

 腰を抱くように手を回し、引きつけようとするヤンキー。

「アタシってら、空っぽ男子ってNGだし」と、ニコッとする舞花。

 腰に回されたその手をほどいて、掴んだまま距離を測って、いきなりの蹴りでキンテキ(男子の股間を攻撃する行為)をかます舞花。

「しゃあねえな。俺、こっちでいいや。マブいし」と、零華の肩をいきなり並んで抱くそのヤンキー。

 ……(言葉無く微笑を浮かべて)……零華がその手を掴んで、逆捻りしつつの腕ロックして、「私もよ。気が合ったわね、舞花ちゃん」と、すかさず締めつける。

「いててててて……ぇ、って」と、徐々に悲痛の表情を濃くするそのヤンキーが、「おい、サブ。助けろや」と、三人目のつるんでいるヤンキーに睨みを利かす。

 サブと呼ばれたヤンキーもどきが、手を向かわせる。も、キツネ目に睨まれて慄くサブ。

「ビビってんじゃね、サブ」と、そのヤンキー。

「チッ! さっきからスルー(無視する行為)しやがって。オッサンが。気に入らねえや」と、股間を抑えたヤンキーが、痛めつけられた腹いせで、静かに見守っていた沖勇作に、殴りかかろうと、ヤンキーが一歩繰り出した時!

 バヒューン!

 と、信じられない重い銃声が轟く。

 怯んで反射的に目を瞑ったヤンキーが、ゆっくり……目を開けると。

 腰から零コンマの素早さでマグナムを抜いて、ぶっ放し! もう仕舞っている沖勇作がいる。

 と! 瞬間! 六人の半径二メートル範囲に、スケルトンブルーのドームシールドが張られ! 瞬時に消える。

 ヤンキーの行動に注目していた舞花も沖勇作も不自然な現象に気がついてはいない。

 しかも、周囲の人々が誰一人としてコンバットマグナムの銃声(空砲)に注目することもない様子。

(ここまで、世間って、無頓着?)と、思いつつ……首を傾げる舞花。

「じゃあ、せめて」と、絡んでいたヤンキーが舞花の尻をお触りする。

瞬時に、「いやぁぁぁぁぁぁぁ……あー!」の、悲鳴と共に渾身の左回りターンシュート(回し蹴り)を繰り出してしまっている舞花。

 対象ヤンキーが――推定距離二十メートルのたい焼きオブジェまで吹っ飛んで、背を打ち付けて伸びる。

 もう一人が、零華の手が緩んだ隙を見て、「俺も、オッパイくらい」と、胸を揉む。

「だから。空っぽ男子に、揉ませるオッパイはないって!」と、ショートレンジからのドロップキックをお見事に決める零華。

 もう一人の対象ヤンキーが吹っ飛ばされて――先に吹っ飛ばされて失神中のヤンキーの上に重なって、グロッキーになる。

「あんた、確かに、今……」と、サブと呼ばれた、半ばヤンキー崩れの男子が、「そんなの持っているって、本物さんなのか?」と、慄きビビッて、後退りして……「勘弁してください――」と、走り逃げる途中で、「僕は、その二人のパシリなんでぇ――すぅ――」と、逃げ足だけは早い。

「どうする、あれ」と、零華が指を差す。

 沖勇作が零華を見て、下唇を上唇で覆う表情を見せる。

「寝かせておけばいいし」と、舞花が向かっていた方へと歩き出す。

「そうね。お門違いも甚だしいね」と、舞花の横につく零華。

 何か? 共通の厄介者らをクリアした後の、女子同士の和解シーンがここに……。

 颯爽と歩きはじめる沖勇作。肩を左右で並べて、歩く零華と舞花。


 アーケード街――ブラウン革ジャンのポケットに手を突っ込んだ沖勇作を挟んで歩くショートボブの零華とポニーテールが左右に揺れる舞花の後ろ姿……。

 向かうアーケード街間口の外は、夜で、都心の絶景街明かりが煌めいてもいる。

「コンビニ立て籠もり強盗事件だってよ!」

「見に行こうぜ」

「栄えるかもな」

 と、明らかなるティーン男子ら三人がスマホを片手に、勢いよく追い越していく。

 耳にした沖勇作が、目で追う。


 コンビニ――ホコ天通りを正面に脇道の角にして建っている。

「すみません。強盗です」と、外にいるコンビニ服を着た明らかなるティーン女子がスマホで通報する。

「ああ、まだ! パートさんの……リスクを」と、手を伸ばして通報することを止めようとするコンビニ服の中年男性が、すでに遅しと手を垂らす。

「店長さん。通報あり寄りのありですよね」と、ティーン女子。

「まあ、しちゃったものは、仕方ない」と、店長が人質のパートの安否も気遣って言う。

 店長が歪めた顔で店舗を見る。ロゴ模様があるがガラスの壁に店内は丸見えで、コンビニ服の見た目アラサー女性を後ろから羽交い絞めして、首に商品の果物ナイフを掴んで、その刃を喉元に向ける。


 ――通報により駆け付ける一台の白黒ボディで赤色灯を輝かせたパトロールカー停車する。たちまちパトカーを大きく取り囲むように野次馬の垣根ができて、スマホカメラを向けるトーシロ栄え狙いマスコミ集団ができる。

 パトカーの左右に二人の制服警官が出て、コンビニを見る。

 コンビニの正面のドアに、少しの隙間。嫌そうに身を悶えるパートさんに、「静かにしろ」と、微かに漏れ聞こえる目出し帽強盗の声。ナイフを喉元ギリまで突き立てる。

 店長さんが身振り手振りで、制服のお巡りさんらに状況を話す……。

 店長の後方に、ティーン女子も来ている。

 パトカーの拡声器マイクで、呼びかける警官の一人。

「おおい、投降しなさい」と、拡声器で訴える警官。

「今なら罪が軽いぞ」と、肉声で訴えるもう一人の警官。

「ううっせー! このオバサンぶっ殺すぞ!」と、コンビニ服を着たアラサー女性の喉元に、果物ナイフを突きつける目出し帽の強盗犯。

 羽交締めされた上に、ナイフを突きたてられつつも……「オバサン」の呼ばれ方に、表情を一瞬イラつかせるアラサー女子の目と口。

「あ、パートです」と、店長が警官に告げる。

「ウケのいいシングルマザーで」と、ティーン女子も、この場ではいらない情報を告げる。

頷く二人の警官。

「金出せえって、目だし帽をかぶった男が」と、ティーン女子が話す。

「ATⅯとレジなど、現金強奪が目的です」と、店長。

「商品のエコバッグに、鷲掴みでレジの現金を奪い。ATⅯの限って」と、ティーン女子。

「ATⅯのカギはここにはないと告げると。人質を取って、出るように」と、店長が話す。

 コンビニのガラスの中で、外の様子を窺っている目出し帽の強盗犯。

「おおい! どうするんだ? この後は?」と、怒鳴る警官。

「人質を解放して、出てきなさいな」と、拡声器の警官。

 表情は拝めないが、明らかに戸惑っている強盗。人質の喉元に当てていたナイフ位置が鎖骨あたりまで自然と下がる。

 拡声器の警官が振り返って、もう一人の警官と表情を歪ませあう。

「おつかれさん」と、沖勇作の声。

 労う声に反応するも、現場の店内を見続けている二人の警官。

 二人の警官の後ろに来た……沖勇作と、舞花に零華が、パトカーに身を隠す。

「上に、報告したか?」と、沖勇作が問う。

「ああ、沖警部補」と、振り向いた警官の一人が対応する。

「はい、警部補」と、現場から目を着ることないもう一人の警官が答える。

「状況は?」と、沖勇作。

「現金強奪が目的の様です」と、警官が話す。

「ATⅯのカギは無く、無事です」と、拡声器マイクを持つ警官が話す。

「レジの警報ボタンは知っていたようで、通報は、外に出されたアルバイト定員の女子からでした」と、警官。

「女性店員が人質に」と、拡声器を持った警官。

「他に客入りはなかった時間の様です」と、もう一人の警官が言う。

 差し伸べた手の方を見る沖勇作。野次馬の前列にいるコンビニ服の店長とティーン女子。

「了解。ま、何とかするぜ」と、両警官の肩をポンポンと叩いて、振り向く沖勇作。

「呼びかけろ」と、ニヒルVサインを残して、振り返る沖勇作。

 舞花と零華に、首を動かし……手の親指や人差し指を立てたり向けたりして……ジェスチャーで指示する沖勇作。

 が、近代っ子の舞花と零華に伝わらず、首を傾げる二人……。

「なに? それって」と、小声の舞花。

「ああ、アグレッシブな刑事ドラマ世代じゃなかったか」と、沖勇作。

「指示、かな?」と、舞花。

「私は、伝わったよ」と、零華。

 舞花が顔を顰めて、零華を見る。

「嬢ちゃんと零ちゃんは、ここから俺の合図を待て」と、沖勇作。

「うん、了解よ、オジ様」

「合図って? オジちゃま」

「これさ!」と、ブラウン革ジャンの上から腰を軽く叩く。

 頷く零華。

 首を傾げる舞花。

 パトカーの陰を利用して、トーシロマスコミの群れへと姿を消す。

 沖勇作の行動を目で追っていた零華と舞花が、コンビニを見る。百八十度対象的に顔を動かした際に、その途中で目を必然的にあってしまって……。

「どうする? 零華ちゃん」

「どうするって……ぇ」と、舞花を直視したままフリーズしたかのように考える零華。

「アタシたちって、カムフラージュ? 交渉するのかな?」と、舞花。

「そうねぇ。じゃあ」と、パトカーボンネットに手を置く零華。


 コンビニの裏手――脇道から通用路地の裏口のドアの前に、沖勇作が忍んで来る。

 マグナムを抜いて、シリンダを開いて確認し、装填後に左指でシリンダを摘まんで、一発分回す沖勇作。


 コンビニ正面――

 パトカーのボディに身を隠しつつ、舞花がボンネットへと回り、零華が後方トランクへと屈んだ姿勢のまま行く。

「私が、出るから。援護してね、舞花ちゃん」と、ウインクする零華。

「え? 刺激してしまうし。で、持ってないし拳銃ぅなんて」と、舞花。

「平気。この美ボディ晒すから、そのすきに何とかしてね、舞花ちゃん」

「何とかって……ぇ無茶ブリぃーヌードでも出すの、かな」と、ブウ垂れ、にやける舞花。

 舞花が横目で左を見ると。もう零華が実行進行形状態で、毅然と前に出る。


 コンビニの裏手――

 ブラウン革ジャンの裾を捲って、ブラックジーンズのベルト通しにフックにぶら下がる三本の形状と太さが異なる針金を選ぶ沖勇作。

「こんなもんで、開くかって……」と、二本を選んで、鍵穴に差し込む沖勇作。

「警官がこんなことすれば、NGって、嬢ちゃんに弄られそうだが!」

 カシャっと、微かなロック解除音がする。

「緊急事態だしなあ。メンゴだぜ」

 ノブをそおっと回し……ドアをかけ……覗き込んだ沖勇作が、侵入する。


 コンビニの正面――パトカーの前に、グラドル系スタイリングポーズを決め込む零華!

「ねえ、犯人さん。どう?」

 少し開いたドア越しの店内で、人質にナイフを突きたてた犯人が叫ぶ。

「美形だが、今はそれどころじゃない。此奴ぶっ殺すぞ!」

 羽交締めされ、ナイフを向けられたアラサー女性が、怖がる。

「で! これから、どうしたいのーおー」と、ポップス系の節をつけて訊く零華。

「じゃ、ツイン美形フラッシュダンシングだし!」と、舞花も出て来きて、零華にツインとなるポージングを決め込む。

「オタクらは何だ?」と、声を張る犯人。

「しょうがないなー」と、腰をくねらせアイドルチックなパフォーマンスダンスをしはじめる舞花。

「俺を安全に逃がせば、このオバサンを……」と、言葉を詰まらせる犯人。

 正面を向きあっている人質アラサー女性の顔が、「オバサン」の声に歪む。

「え! あ。負けないよ。私だって」と、舞花のふりを気にしつつ、オリジナルな即興ダンスをはじめる零華。

「それじゃぁ、あり寄りになしだし」と、場違いダンス合戦を零華に仕掛ける舞花。

 グラドル系決めポーズ合戦が、アイドル系ダンシング合戦へと移行している。

 野次馬トーシロマスコミの映えネタ――向けられた無数のスマホ!


 コンビニの中――

 コンビニの裏口のドアを閉めた、身を屈めて移動する沖勇作。

 事務所兼従業員控室の部屋から、開いたドアの向こうに、ジュースコーナーの飲料系冷蔵庫のバックヤードが見える。

 沖勇作が……バックヤードから、様子を窺う。

「やめろーおまえら! 洒落じゃないんだ。……此奴ぶっ殺すぞ!」と、犯人。

 店内には誰もいない。

 ガラス越しの表で、舞花と零華がアイドルチックなダンス合戦をしている。

 見た沖勇作が、思わず吹き出しそうになるのを、堪える。

 内ドアから更なる店内へと足を進める沖勇作……陳列棚に身を潜めて上を見て、防犯ミラーで犯人の位置確認をする。

 外に美形女のパフォーマンスに気を取られているのは明らかだ。

 もう少し棚陰を利用して……近づき、声をかける沖勇作。

「おい! こっちだ」と、颯爽と出る沖勇作。

 いきなりの登場に、驚きつつも振りかえる犯人が、ナイフを突き出したとき。

 ドドヒューン!

 コンバットマグナムから放たれた弾丸が、犯人のナイフをはじく。

 マグナムを構える沖勇作。

「もう一発行くか? 観念しなよ」

「警察拳銃じゃないよね、それって」と、犯人の人質を抱えていた手が緩む。

「うううりゃあああ……」と、女性の唸り声がその場に立って!

「オ・バ・サ・ンンんん……じゃねえよ、この甘ちゃん男子がぁああああ……あ」と、血の底から繰り出されてきたような、アッパーカットが目だし帽犯人の顎に諸にヒットする。

 天井まで、とは言い過ぎだが、そんな境地になってもおかしくはないように、犯人が上昇してレジカウンターに吹っ飛んで、グロッキーとなる。

 唖然とする沖勇作。

「ご、ッ協力、感謝です」と、唾をのむ沖勇作。

 ギロッと目を剥いた境地のママ沖勇作を見るアラサー女性パート。

「お姉さん」と、裏に手を回しマグナムを収める沖勇作。

「いいえ! どういたしまして」と、にっこりと微笑むアラサーパートの女性。

 沖勇作が、外に向かってOKサインを出す。


 アーケード街――を歩く三人は、今時イケ女二人と肩を並べる沖勇作。その頭上では、透けたアクリル屋根の上は真っ暗な空。

 閉店を迎えて閉じ始める商店のシャッター。頭上の照明機器が薄暗くなって、サンドイッチ状態で下を歩くポニーテールの舞花とショートボブヘアに零華に挟まれた状態で歩く沖勇作を俯瞰で映している。

「ねー零華ちゃん」と、舞花。

「うん? なあに、舞花ちゃん」と、零華。

「そういえば、どうして潜入してるんだっけ?」と、舞花。

「御免ね、舞花ちゃん。言えないの。舞花ちゃんならわかるでしょ」

「極秘、かな?」

「うん、そういうこと。でも、時が来たら、協力者になってもらうかも」と、零華。

 上を見る沖勇作。

「そういえば! のした兄ちゃんたち……」と、沖勇作。

「なに? オジちゃま」と、舞花が沖勇作を見る。

「私がさっき、あの警官らに。オジ様」と、まっすぐ前を向いたままで歩く零華。

「さっき、ナンパの兄ちゃんたち、やった時……」と、沖勇作。

「ああそうそうだし。撃ったよね、オジちゃま。ⅯYNCB撃ったよねー」

「ⅯYNCB?」と、真っ直ぐ見たまま瞬きを小刻みにする零華。

「ああ、それそれ」と、沖勇作。

「あんな騒音、一瞬でも……」と、右人差し指を顎に付けて上を見る舞花。

『騒ぎにならなかった(し)』と、語尾違いだが舞花と沖勇作の声がジャスト被りする。

 小刻みに瞬きしていた零華が、またまっすぐ前を見て歩く。

「忙しんじゃ? 関心ないのでは? 都会人って」と、素っ気無い零華。

「ま、そんなもんか、都会人っていう巷は」と、沖勇作。

「また査問モノだし、オジちゃまは」

「平気よ、舞花ちゃん」と、零華。

「どうして? 零華ちゃん」と、舞花。

「それはね。それは、内緒」と、零華。

 頭を掻きかき……話の流れはどうでもよく、ひたすらアーケード街を抜けようと歩く……左右にイケ女二人に挟まれた沖勇作。

「ねえ、恋人あるきしていい? オジ様」と、沖勇作の左腕に……零華。

「え、あ、ズルいし」と、その右腕にしがみ付く舞花。

 左右からの凭れ女子に、歩きづらそうな沖勇作。

「悪い気はしないんだが、なあ」と、呟く沖勇作。

 ますます引っ付く舞花と零華。

「歩きづらいんだがなぁ」

 それらの行為行動を許すように、なされるままの沖勇作らの後ろ姿。

 その先のアーケード切れ目の豊洲署五階建てビルの窓明かり……が、垣間見える。



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