第1章 その9

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 TOYOSUーSYO捜査課――

 神棚の下の大画面モニターに、フォークリフトでマグロが入った木箱を開かれたトラックの荷台へと積み込みをする内海――の映像が映り……流れはじめる。

 Uの字デスクに募った捜査課の面々は、鮫須保係長。真中透巡査部長。沖勇作警部補。全員がモニターを見ている。

 ツカツカと足早な足音が近づいて……観音ゲートを来るおみ足。ショルダーバッグを右肩にしてポニーテールのヘアスタイルは、若井舞花巡査だ。

 舞花の頭上に掛け時計、三時五分。

「ああ、もうやってるし、会議」と、四人が注ぐ視線を諸ともせずに自分の席に着く舞花。

「たった今、洗い直しを始めたところですよ、若井君」と、鮫須係長。

「最初から流し直してやってくれ、トール」と、沖勇作。

「はい、先輩。舞花さん。これを見て何か感じたら、遠慮なく発言するんだよ」と、真中。

「ああ、ええ、はい。トール先輩」と、舞花。

「どうした嬢ちゃん。トールアレルギーは解消したか?」と、沖勇作。

「ん、何時までも気にしていると、お仕事に支障をきたすし。ね、オジちゃま」と、舞花が返して、モニターを見る。

 ――内海が木箱をトラック荷台にフォークリフトで、やり直しも兼ねて積む――映像が作業執着を迎える。

「証言通りの作業内容で、所要時間十五分です、係長」と、真中。

「真中君。次、カツオの方も頼みますよ」と、鮫須係長。

 真中が手元のPパッドを操作する。

「え! カツオ? カツオって、オジちゃま」と、舞花が沖勇作を見る。

 が、食い入るようにガン見中の沖勇作の耳に、舞花の声が入り込む余地なしだ。

「もー、おこちゃまゾーンのオジちゃまったら」と、愛くるしいペットでも見るような顔つきの舞花がプチイジリして、モニターを見る。

 ――水下澄子がフォークリフトで、カツオが入った木箱をトラックへと積む――映像が流れて、面々が見る中――作用執着を迎える。

「所要時間十二分です、係長」と、真中。

「三分差だね。ほぼ同時間と言っていいです」と、鮫須係長。

「でもー……。うっちさんは、やり直しがあるし」と、舞花。

「ああそうだ、デカ長。でかした嬢ちゃん」と、沖勇作。

「どういうことかね、警部補」と、鮫須係長。

「男女の能力の差と言うか、資質的の差。つまり、内海がやり直さなければ……」と、沖勇作。

「フォークリフトの捌きの感じから、慣れているうっちさんなら、十分もかからないぜ。でしょ、オジちゃま」と、多少口真似も入る舞花。

「決めどころ、取るなよな、嬢ちゃんは」と、沖勇作。

「へへーえ。いいでしょ、バディなんだし」と、せせら笑う舞花。

「あの二人は、すっかり一糸も入る余地もない名コンビだね」と、鮫須係長。

「トール。俺の映像も出してくれ」と、沖勇作。

「はい、先輩」と、真中がPパッドを操作する。

 ――沖勇作がマグナムの弾を並べた後の映像がモニターに出る。

 ――低い角度で、隣り合った駐車枠の白線上に並んでいるマグナムの弾――の映像。

「デカ長。どうです? これを見て」と、沖勇作が問う。

「ううんん……」と、首を傾げるも、「お! この映像は!」と、気がつく鮫須係長。

 ――一定の距離間で、二つの弾が、ズレて見えたり、ピッタリと重なり合って一つに見えたりする――映像がモニターに映っている。

「そうだよ、デカ長。角度によってはピッタリジャスト位置がある」と、沖勇作。

「でも、オジちゃま。トラックでは隣に重なっていても見えちゃうんじゃ」と、舞花。

「ここを写すカメラは固定だぜ、嬢ちゃん。遠近法の誤差と、カメラがあるそばの柱に死角を利用したトリックだ」と、沖勇作。

「でも、でも、タイヤ止めでずらせないし」と、舞花。

「なら、手前のトラックを若干後方にずらして止めればいいだろ、嬢ちゃん」と、沖勇作。

「ああーあ、そうだね、オジちゃま。賢いし」と、舞花。

「なるほどですね、警部補。内海さんも、水下さんも、同じように。ですが、警部補。二人ともトラックの運転はしていないようですが」と、鮫須係長。

「二人とも中型自動車免許は習得していないようですよ。先輩」と、真中がPパッドを操作する。

 ――内海の運転免許証。普通車オートマ限定と、大型特殊自動車。

 ――澄子の運転免許証。普通車限定無しで、二輪中型限定と、大型特殊自動車。

 の、データがモニターに出る。

「やっぱり、オジちゃままの思い込みかな? おしかったね、オジちゃま」と、舞花。

「いいや嬢ちゃん。トラックのドライバーがいるぜ!」と、にやけたドヤ顔で立つ沖勇作。

 真中が頷き。鮫須係長が「ううん……」と、唸って胸の前で腕を組む。

 舞花が見上げる間にも、沖勇作が動く。

「デカ長。この時間、と。カツオの方も、トラックの出入りチェックしてくるぜ」と、沖勇作が颯爽と歩いて、観音ゲートへと行く。

「ああ、待ってぇ、オジちゃまー」と、舞花も立って、「行ってきます、係長さん」と、敬礼して、もう行ってしまった沖勇作の後を追って、ポニーテールを揺らして小走りに出て行く……舞花。


 TOYOSU―SYO屋上――本日の午後は、薄曇りの天気で俄かに陰っている崖下の近代風長屋の大屋根。


 豊洲市場警備室――二人の警備員がモニター監視している。

 内線電話が鳴って、一人の警備員が出て、頷き、受話器を置く。

 ドアを普通に開けて、沖勇作が入って、続いて舞花も入る。

 内線電話を取った警備員が振り向く。

「ああ、豊洲署の者だが。昨日の朝から今日の昼までの駐車場出入りした車両のチェックをしたいのだが」と、沖勇作。

 警察IDを見せている舞花。

「たった今、魚市場チーフから連絡がありましたよ、刑事さん」と、警備員。

「ここではなので、これにデータコピー、お願いします」と、舞花がショルダーバッグからPパッドを出して、起動させて、差し出す。

「はい」と、Pパッドを渡された警備員が、もう一人の警備員に、モニターを見つつ渡す。

 受け取ったもう一人の警備員が、USBジャックケーブルをつないで、コピー作業する。

「アイコンはこちらで作成するので、普通のフォルダアプリでいいですよ」と、舞花。

 首を傾げた延長で……舞花を見る沖勇作。

「アタシだって、それなりにデータ処理できるし」と、舞花。

「何も言ってないぜ、俺」と、沖勇作。

「アタシがいれば平気だし、オジちゃま」

 クールな笑みを浮かべて舞花を見て、データ処理中のPCモニターに目をやる沖勇作。

 ――コピー完了――

 の、コマンドウが画面に出て、吸い込まれるように消える。

 警備員がPCから安全に抜く処置をして、ケーブルを抜き取ったPパッドを舞花に返す。

「ありがと、警備員さんたち」と、舞花が沖勇作を見る。

「では、チーフにも断っている隣の小会議室を使いますよ」と、沖勇作。

 モニターを見たまま頷く二人の警備員。

「もー挨拶の時ぐらい、こっちむいて……」と、舞花。

「いいんだ。此奴ら、プロだ。デカが来ても必ずどちらかはモニター監視している」と、沖勇作。

「だったら。4トントラックで何か気になったことあります? ここ三日の間で」と、舞花が問う。

「いいや、なにも」と、内線電話を取った方の警備員が口だけで対応する。

「俺たちは、昨日は居なかったもので」と、データコピーした警備員が答える。

 この際も、一途モニターを見たままの警備員二人。

「なあ、嬢ちゃん。こういうのをプロ根性ってんだぜ」と、沖勇作。

 小首を傾げる舞花。後頭部から生えたようなポニーの尻尾が揺れる。

「さ、お邪魔様、行こうぜ、嬢ちゃん」と、沖勇作がドアに手をかけ開ける。

「ああ、待ってオジちゃま」と、舞花も沖勇作に続き、「お邪魔様でした」と、Pパッドをショルダーバッグに仕舞う。

 沖勇作がドアを出て、間もなく舞花も出て行く。

 ドアがカシャっと閉じる。


 小会議室――以前にも使った小部屋の会議室は、ドア対面にブラインドが下がる窓が一つ。コの字に組まれた三人掛け可能なテーブルが三つ。コの字が空いた正面壁にはブリーフィング用モニターで、専用パソコンが一つ置いてある。

 ドアを開けてブラウン革ジャン姿の沖勇作が一歩入る。

 バッグを肩掛けした舞花が、入ろうとするが、ポニーテールの後ろに気配を感じて振り向くと、魚市場でチーフと事務職をしていたショートボブヘアの女子がいる。

「え!」と、驚く舞花。

 ドアを一歩入ったところで振り向く沖勇作。

「あのお、お飲み物は何がいいですか?」と、女子。

「ああ、いいや、いいよ。お構いなく」と、沖勇作。

「ん。公務中だし」と、舞花。

「ああ、まあそうなんですけれど、ね」と、女子。

「でもどこかで見たような……」と、沖勇作。

「ああ、あ! いいや、何処にでもいますよ、こんな女子って」と、女子。

「じゃあ、仕事するから」と、ドアを閉じようとする沖勇作。

 この会話の間にも踏み入れた舞花が、ポニーテールを揺らして振り向き愛想を振る舞う。

「ああ、私、チーフさんからお世話するようにと」と、女子。

「あ! 君って。パーラーにいたキリカちゃん、だったりして」と、沖勇作。

「あ! オジちゃまジゴロ。ビンゴだし」と、舞花。

「ああ、バレてしまいましたか。流石刑事さんたちね」と、女子。

「それじゃ、お仕事するし」と、中へと行く舞花。

 笑顔をふるまってドアを閉めようとする沖勇作。

 真っ直ぐ直視した状態で去ろうともしない女子。

「何か? 他に?」と、沖勇作。

 半ば強引に入る女子。

 沖勇作が開いたドアノブをキープしつつ、「ここからは部外者退場だ」と、紳士的出てのジェスチャーをする。

「私、実は、公安の工作員なの」と、いきなりのカミングアウトする女子。

「え!」と、テーブルの上にバッグを置いた舞花が驚く。

「公安?」と、沖勇作。

「うん。本名は、桐溝零華、永遠の二十七歳です」と、その女子、桐溝零華が自己紹介する。何処から出したか、ドラマフィルムの一コマを切ったように、警察IDを見せる。

「そうなんだ。公安の工作員って、何をしているの?」と、舞花。

「まあ潜入中なのだろうが、事案は?」と、沖勇作。

「それは、必要に応じて……」と、桐溝零華(以降、零華)。

「どうして? 同席するなら目的を教えてだし」と、舞花。

「これから車両の出入りチェックをするのでしょ」と、零華。

 打ち合わせなく、素直に頷く舞花と沖勇作。

「なら、映像チェック後に、どこまで話すかを決めるわね」と、零華。

 キョトンとした目で、零華を追う沖勇作。

 薄笑み浮かべたままの顔は不動で……歩み寄った窓のブラインドを、紐で、外が見えるようにして佇む零華。

 外には茜色の外光に包まれた東京湾絶景が臨める。


 東京湾――豊洲市場の街と、左後ろに豊洲署ビル。茜色に変色している。


 豊洲市場小会議室――零華が開いたブラインドが閉じていて、外光が遮断されている。

 零華がモニターをパソコンで用意する。

 舞花がPパッドをUSBケーブでセットする。

 アイドル若しくは主役スキル女優外見のイケ女らを、座って……眺めている沖勇作。

「オジ様も何か手伝ってくださいね」と、舞花の呼び方から学んだ零華。

「ああ、無理ぃ。かえって手間になるから、あれでいいし。ねーオジちゃま」と、舞花。

「へええ……分かり合っているのね、歳の差カップル?」と、セットし終えて、席に着く零華

 チッ! と、自然と舌打ちをしてしまったことすら気づかない舞花が、目を流す。

 俄かに笑うしかない沖勇作。

「じゃ、流すし、オジちゃま」と、舞花がPパッド画面をタッチする。

「車両が出入りするゲート口は、入口専用と出口専用となっている」と、零華。

「潜入してどれくらいなんだ、零ちゃんは」と、沖勇作。

「そうね。いいかな。貴方方なら、話しても」と、語り始まったら止まらなくなる零華。

「潜入は三月ごろから。とあるルートから情報を得て横領がここで起きるって……」と、事を話す零華。

 顔を見合わせる舞花と沖勇作。

「……三年前から都心で小出しに横領案件が疑わしく、贅沢品が消えているのね。でも、狡猾で立証もないままなの。今年の年明けに、今度はここの青果市場で、おとめベリー、キロ単価一千円が、100トン分、消えて。今度はマグロとカツオも、同様に消えている……」と、熱弁ゾーンに入っている零華。

 沖勇作は興味津々のお子ちゃまゾーンで訊いている。

「……本庁から公安に潜入依頼が……」と、零華。

「本庁の担当は?」と、沖勇作。

「うん。捜査三課のお(き)」と、言いかけたところで横槍を受ける零華。

「ああ、待った」と、舞花が止める。

 沖勇作と零華が、舞花をガン見する。

「長そうだし。今は、こっちだし」と、モニター一時停止状態の映像を指差す舞花。

 沖勇作が、舞花を見て、しっぽりと頷く。

 舞花がPパッドをタッチ操作して映像を壁モニターに流す。

 ――二台目のTOCHIGI2022529表示の4トントラックが、出口ゲートを時間差で通る――映像を発見する舞花。

「あれ? オジちゃま」と、指を差し占める舞花。「同じ法令4トントラックだしー」

 立ち上がりモニターに近づく……沖勇作。「嬢ちゃん。戻して、スローでだ」

「ラジャーだし、オジちゃま」と、舞花がPパッドを捜査する。

 壁モニターの映像が……逆再生されて……午前十時十分に、TOCHIGI2022529表示の保冷4トントラックが一台出て行く――スロー再生の映像。

 通常の再生状態で映像が流れ――午前十一時五分に――完コピ(完全同じ)TOCHIGI2022529表示の保冷4トントラックが一台出て行く――映像がスローで流れ……。

「ストップ、嬢ちゃん」と、沖勇作が食い入るように見る。「傷や塗装の具合まで……」

「あ! ゼロが黒潰しハートだし、オジちゃま」と、指差す舞花。

「流石に目ざといのね、舞花って」と、遠慮しらずのタメ口トークをぶちかます零華。

 ……薄笑みを浮かべる沖勇作。

「カツオの方も見てみる?」と、舞花がPパッドを操作する。

「ああ」と、沖勇作が返事する。

 舞花がPパッドをタッチ操作し終えて、流した目で零華を見る。

 無表情で、視線をモニターに注いでいる零華。

 モニターの映像が早送りになって……今日の五時の地下出荷場出口ゲートの防犯映像が一時停止で、壁モニターに映る。

「嬢ちゃん、七時から……」と、沖勇作が指示しようとする。

「いいえ、オジ様。九時十分からで充分ね」と、零華が口を挟む。

「ううん?」と、テーブル角にいつの間にか腰かけている沖勇作が上半身を捻って零華を見る。

 一瞬だが、零華の目がブルー愛と状態だった世に思えて、首を傾げる。

「なに、オジ様。私を好きになったの? やってもいいよ、エッチ!」と、零華。

「いやいやいや。ありがたい申し出だが、ここでは……」と、舞花に目をやる沖勇作。

「遠慮しないで、終わるまで、アタシ、出てるし」と、角口でそっぽを向く舞花。「ふん!」

「それでは舞花とエッチ合戦する? オジ様相手に」と、零華。

「まあそれも、いいかも。ジゴロオジちゃま、タフそうだし」と、舞花が徒な目つきで沖勇作を見た視線のままで……零華を見る。

「会議室で、社内恋愛エッチシーンは、後だ」と、壁モニターを顎で示す沖勇作。

「ああ、そうだし。つい、捜査課ではありえない、女子同士のエッチトークにハマってしまったし、アタシったら」と、ちょこっと舌を出す舞花。

 柔らかめな眼差しの薄笑みを舞花に注ぐ……零華。

 上唇で下唇を覆った舞花がPパッドを指差す。

 頷く沖勇作。

 Pパッドをタッチする舞花が、壁モニターを見る。

 零華も壁モニターを直視する。

 捻っていた上半身を正面に戻しつつ……「じゃあ、九時から頼むぜ、嬢ちゃん」と、正面を見る沖勇作。

 壁モニターに防犯映像が流れ出す。九時から通常再生映像が……同じような同型トラックも数台出て行く中――TKNHOTEL22020530の4トントラックが映る。

「オジちゃま。九時三十三分!」と、驚き顔で零華を見る舞花。

「アラサー女子間近の勘?」と、目を剥くような顔の舞花。

「私、超能力があったりしてね」と、舌を出す零華。

「やっぱ、ビッジのくせに、だし」と、舞花。

 こんなやり取り状態の女子トークには、首を突っ込むとろくなことにならないのが分かっているかのように、二人の会話のキャッチボールのボールの行き先を目で追っているばかりの沖勇作が、小刻みに三回ぐらい頷く。

 壁モニターでは――TKNHOTEL22020530の4トントラック――映像が一時停止している。

 食い入るように見る沖勇作。

「ああ、被ってるし、オジちゃま。老眼?」と、舞花。

 沖勇作が、首を振り向かせて、舞花の一からモニター全体が見えるように身を引く。

 映像にもう一台の――TKNHOTEL22020530の4トントラック――が出て行く。一時停止! 九時五十分!

「Oが、クロ潰しハートね」と、零華が舞花に、ドヤ顔を放つ。

 ――TKNHOTEL22020530の4トントラックも、Oが黒潰しハートマーク!

 零華に向かって、「イー」する舞花。

 受けた零華が、即座にそっぽ向く。

 そんな空気感の様子を窺いつつも……ブラウン革ジャンの懐からスマホを出して、指タッチする沖勇作。

「ああ! 勇希!」と、沖勇作がスマホを耳にあてる。

「勇希?」と、クエスチョン顔をする零華。

「ああ、勇希警部補か」と、沖勇作。

 ……舞花が頬杖ついて、掴みどころのない表情を気まぐれに歪ませている。

「……(勇希が話をしている間)……」

「新たなカツオの一件も兼ねて捜査で、駐車場カメラを」と、沖勇作。

 ……零華が真っ直ぐ視線を沖勇作に注いでいる。

「……(勇希が話をしている間)……」

「え? 来ている、ってえー」と、沖勇作。

 頬杖ついた舞花が目を零華に向ける……と、零華も舞花を見る。

「……(勇希が話をしている間)……」

「ああ、Pパッド通信で共有されているのか。俺にゃあ皆目だぜ」と、頭を掻く沖勇作。

 分かり切ったような笑顔で三回頷く舞花。

「……(勇希が話をしている間)……」

「でな、勇希。REDMATTER張った夜に、4トン保冷型トラックを見たよな」と、沖勇作。

 立ち上がる舞花が明らかに……零華に向かう。

 立ち上がって零華も……舞花を迎え撃つ。

 椅子に床をする音に、電話中の沖勇作が、見る!

 薄笑み浮かべた顔で、目深に見詰め合う……零華と、舞花。

 スマホを指タッチして電話を切った沖勇作が、舞花と零華を見る。

 顎を引いて強張る顔を擦る沖勇作。

「くわばらくわばらだぜぇ」


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