あてのない探索

 翌日の朝、明智邸は不気味なほど静かな朝を迎えていた。

「結局、昨夜は妖魔が来なかったな」

 一浩は黄金の仏像が無事であることを確認して安心したが同時に不安を覚えた。

 今日も三チームに分かれて明智邸をパトロールすることになったのだが、今日は少しだけ変化があった。

「黄金の仏像の様子はどうですか?」

 鳳来寺冬姫が警備に加わったことだ。一人でパトロールしている状態の涼太と冬姫がとりあえず組むこととなり妖魔への警戒をすることとなった。


 明智邸の庭。

「冬姫さん、私のあとをついてきてくださいね」

 涼太は冬姫についてくるように促した。

「しかし、この庭園はよく手入れが行き届いている……瀬戸内海の小島にこのような立派な庭園があるとは思わなかった」

「明智氏が関西で超一流の庭師を招聘して作ったそうですよ」

 涼太は冬姫と雑談しながら庭を見て回ったが特に違和感を覚えるようなものは何もなかった。

「流石に白昼堂々と盗みに行く盗賊ではないと」

 涼太はそう呟きながら部屋で読書に戻ろうかと思っていると投野老人とすれ違った。

「こっちの様子はどうですか? 何か変わったことはないですか?」

「特に何もないですね……恐らく我々が油断した隙を狙うのでしょう」

「そうですか……あの盗賊は我々の精神力を削れるだけ削ってから犯行に及ぶ知能犯なのでしょうね。恐ろしいことです」

 そこに冬姫が投野老人に声をかけた。

「投野さん……蔵の中を見てもいいですか? 蔵の中に猪狩り用のトラバサミがあると聞きました」

「あぁ……あのトラバサミですか。ここ10年は使ってはいないから動くかはわかりませんが、トラバサミを何に使うのですか」

「トラバサミを庭に仕掛けて盗賊を生け捕りにするのです……妖魔とはいえ足をやられたらタダじゃすみませんよ」

 冬姫の提案に涼太は目を丸くした。

「罠を仕掛けるのですか……上手くいくといいんですが」

「やってみないとわからないですよ」

 冬姫の言葉に投野老人の心は動かされた。

「とりあえずトラバサミを仕掛けてみましょうか……罠にかかるかどうかはわかりませんが」

 涼太と冬姫と投野老人はトラバサミを庭に仕掛けるために蔵の中に入っていった。


◆◆◆◆◆


――亜門島に唯一あるコンビニ。


 緋月と柚はコンビニに買い出しに来ていた。

「こんな小さな島にもコンビニがあるんだね」

「地域の生命線として機能しているみたい……早く買い出しを終えて明智邸に戻ろう」

 二人はパン類とお菓子を買い物かごに入れていった。その様子を見た女子中学生らしき姿が静かに近づいてきた。

「こんにちは……見慣れない顔ですけど旅の方ですか?」

「まぁ……そんなところかな」

 緋月は女子中学生ににこやかに挨拶した。

「ウチの島は特に観光名所はないけど何しにきたんですか? ひょっとして鳳来寺さんちの人ですか」

 女子中学生は核心を突いた質問をしてきた。

「鳳来寺家の関係者なのはあってるけど……それがどうしたのかな?」

「実は鳳来寺さんちの関係者にあったらこの手紙をわ渡してほしいと頼まれたんだ」

 そう言って女子中学生は封筒を渡してきた。宛名は書いていない。

「誰から頼まれたの?」

「髪の長いサングラスをかけた変なおじさん」

 緋月と柚は息を呑んだ。ブシドージャーは思わぬ形で手がかりを得ることになった。

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