明智氏の受難
亜門島の片隅に和を感じさせる屋敷があった。鳳来寺家の別荘には劣るが歴史の長さを感じさせる。しかし、屋敷の主人である明智氏は苦悩に満ちた表情を隠せなかった!
「私の黄金仏像が……明智家に代々伝わる黄金の仏像が狙われるとは!賊に盗まれたら先祖に申し訳が立たぬ!」
「ここまで苦悩に満ちた表情は長年仕えておりますが見たことはありません!」
明智家に長年仕えている投野老人は明智氏の表情を見て青ざめた!
「しかし、鳳来寺家から呼び寄せたブシドージャーは頼りになるのか?」
「さぁ……妖魔といっぱい戦っているらしいですから黄金仏像の護衛には十分ではないでしょうか」
投野老人は護衛に不安を見せる明智氏を励ますように希望的観測を口にした。それでも明智氏の不安は解消されなかった! 投野老人は明智氏の様子を見ておいたわしやと思った!黄金の仏像を奪いに行くという予告状が届いてからこんな調子なのだ!
◆◆◆◆◆
「どうも、黄金の仏像の護衛に来ましたブシドージャーです」
「ようこそいらっしゃいました……明智氏は寝室で休ませております」
夕方過ぎに明智氏の屋敷にたどり着いたブシドージャーだったが明智氏は神経質気味だったので投野老人が応対していた!
「しかし、大胆な犯行予告状を出すなんて随分な自信ですよね」
涼太は投野老人に素朴な感想を述べた。
「予告状を出した妖魔は絶対に黄金仏像を盗み出せる自信があるのでしょう……」
「ブシドージャーに任せてください……黄金の仏像を守ってみせます」
緋月は黄金の仏像を守り抜くことを宣言した。
◆◆◆◆◆
とりあえず、ブシドージャーは三つのグループに別れて黄金の仏像を警備することになった。
緋月、柚グループ、
「ひーちゃん、妖魔を捕まえようね」
「柚は危ない真似をしないように」
一浩、夏姫グループ。
「お母様はどうして明智家の黄金の仏像の警備の依頼を引き受けたのかしら?」
「わからないが、花月様にもなにか考えがあるのだろう」
涼太。
「警備の仕事は暇ですね……本でも読みながら異変が起きるのを待ちましょうか」
涼太は余裕そうにギリシャ建築についての本を読んでいた。
そんなブシドージャーの様子を見た明智氏は不安不安で仕方なかった。
結局、その日の夜は何も起こらなかった。
◆◆◆◆◆
「ブシドージャーが警備とは聞いたが間抜けそうな面構えじゃないか……計画には変更はない。黄金の仏像を計画通りに盗んでやるぜ」
闇の中で何者かが呟いた。
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