あっさり正体バレ!? ブシドーグリーンの思惑!
上里春風はピンチに陥っていた!潜入任務でブシドージャーのアジトに潜り込んでいたのだが突然ブシドーグリーン、葉月涼太に声をかけられたのだ! 春風は正体がバレたと思ったのだ!
「葉月さん、わたしに何の用事でしょうか……」
春風の不安をよそに飄々とした様子で涼太は春風を見た。
「なぁに、時間は取らせませんよ。まぁここでは人目があるので裏庭で話をしましょうか」
涼太はそう言って、場所を変えることを提案した! 春風は涼太についていくしかない。
――琴城邸、裏庭!
こじんまりとした小さな裏庭に涼太と春風は立っていた。
「葉月さん、要件とは一体なんですか?」
春風はおずおずと涼太に要件とは何かと聞いた。
「単刀直入に言います。僕と手を組みませんか?」
春風は意外な提案に面食らった!
「手を組むとは一体何ですか?」
「言葉通りの意味ですよ……大禍社の回し者さん?」
やはり上里春風の正体はバレていた!
裏庭全体に張り詰めた空気が走った。
「……どうしてわたしが大禍社のスパイだと知っているのですか?」
春風は極めて落ち着いた口調であろうと努めたが声がやはり震えていた。
「上里さん、取って食うわけではないですからそんな怖い顔をしないでくださいよ。僕は妖魔に対する嗅覚が鋭いのです」
「嗅覚?」
大禍社に所属する妖魔は普段は人間社会に溶け込むために妖力を抑制しているはずだ。涼太は春風が僅かに発した妖力で妖魔だと感知したのか?
「そうです……僕は嗅覚が鋭いのです。まぁそんなことはどうでも良い話でして、本題に入るのですが……僕は探し人があるのです」
ここで涼太は真剣な表情を見せた。
「探し人?」
「実はここだけの話ですが僕の母は幼少のみぎりに行方不明になっていまして……それ以来、父と二人暮らしをしていましてね。それだけなら割とよくある話なのですが」
「もしかして……葉月さん」
春風は思わず息を呑む。
「えぇ……お察しの通り、僕の母は妖魔なのです。僕が高校生の時、父から秘密を打ち明けてくれました」
ブシドーグリーンこと葉月涼太は人間と妖魔のハーフであった!
「僕は母が今どこで何をしているのかを知りたい……それには妖魔の協力が必要なのです」
「でも、協力といってもわたしは大禍社の下っ端で大した権限は持ってませんよ?」
「それは承知の上です……別に裏切れとか二重スパイになれと言っているわけではないです……ただ妖魔のことは妖魔に聞くのが定石と考えたのです」
春風は少し考え込んだ。葉月家には複雑な事情がありそうではあるが、部外者の自分がおいそれと首を突っ込んでいいものだろうか?
「もちろん、タダ働きにはしませんよ……上里さんが協力してくれるなら、カレーを作ってあげます」
「えっ?」
春風は思わず面食らった。
「僕はカレー作りが趣味なのです……もし上里さんが僕の母親探しに協力してくれるならいつでも上里さんが食べたいときにカレーを作ってあげますよ」
「もう少し、考えさせてください……でも、葉月さんの作ったカレーが気になる」
二人の間に気まずい沈黙が流れる。そこに、大久保懐佐がにゅっとやってきた。
「上里さん、裏庭にいたのですか……これから掃除用具などの場所を説明をしようと思っていたのですよ」
「上里さん、どうやら時間切れのようですね……いつでも返事を待っています」
そう言って葉月涼太は一足先に裏庭から去っていった。春風は思わずキョトンとした。しかし今は懐左のことを最優先にするべきだと考えた。春風は懐左の後についていった。
◆◆◆◆◆
その後、上里春風は何事もなく琴城家のお手伝いとしての役目を務め、大禍社の秘密基地にある自分の部屋に戻ってきた。今日は疲れたので軽くシャワーを浴びてリラックスすることにした。
しかし、そんなときに限ってメールの着信が来るものである。慌てて春風はメールを確認した。着信相手は黒崎文香だ。
『はるかちゃん、潜入任務初日はどうだった?慣れない任務だから大変だったでしょ?何か不安なことがあったら私がなんでも話を聞いてあげるから何でも愚痴でも不安を言ってね』
文香は潜入任務のことを心配しているようだ。春風は葉月涼太のことを言おうと迷った。しかし、デリケートかつプライベートな事情のことを言いふらすのはどうかと思い返信に書かなかった。
「……これからどうしようか」
春風はため息をついた。
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