ヴィランが戦隊ヒーローに潜入してみた
夏川冬道
疾風の上里春風
ヴィランが戦隊ヒーローに潜入してみた
上里春風は秘密結社大禍社の一員である。大禍社は妖魔の互助組織であり人類社会の裏で暗躍するヴィラン組織であった。
「上里春風、お前に任務を与える」
その日、キャリアウーマン風の女性ダッキに春風は呼び出されていた。
「ダッキ様、密命は何でしょうか?」
春風はダッキに下される密命にごくりと息を呑む。
「上里春風、お前には刀神戦隊ブシドージャーの周辺に潜入して動向を監視してこい」
それを聞いた春風は驚いた表情を見せた。
「ブシドージャーの周辺に潜入って、危険じゃないですか?」
「ブシドージャーの動向がわかれば大禍社が得をすることができる。危険だがやりがいのある任務だ……それでいいだろう」
「了解しました。上里春風、この任務やり遂げてみせます!」
「いい結果を期待している」
ダッキは春風に期待の言葉をかけた。そしてその言葉を聞き遂げると春風は上司の部屋から退室した。
◆◆◆◆◆
「ブシドージャーの動向調査かー、不安だけどやるしかないか」
春風は大禍社の秘密基地の自室に戻ると不安な気持ちを振り払うようにひとりごとを言った。
すると大禍社支給の携帯から着メロが鳴った。慌てて春風は携帯の画面を手に取るとそこには同僚の黒崎文香からの着信メール出会った。
『はるかちゃん……次のミッション、ブシドージャーの動向を調査するんだって? 潜入任務はとても大変だけど頑張ってね♡』
手短な文章だったが春風は元気づけられる文面だった。
「よし! 潜入任務ガンバルゾー!」
春風は潜入任務を遂行するために決意を新たにした。
◆◆◆◆◆
翌日、いよいよ潜入任務当日である。バスの中で春風はあらかじめ大禍社から支給された資料を読み込んでいた。
刀神戦隊ブシドージャー。古代日本に伝わる不思議な力『霊力』を継承した現代のサムライたち。退魔の強い力を持っている大禍社にとって警戒すべき相手。
「読めば読むほどすごい相手のところに潜入するんだなぁ」
春風は思わず苦笑いした。
そんな春風を乗せたバスはやがてブシドージャーのアジト付近に停車した。春風はバスから下車してしばらく歩く。やがて、古いお屋敷が見えた。ここがブシドージャーのアジトらしい。流石に春風も緊張した表情になる。少し深呼吸してから春風は意を決してお屋敷の呼び鈴を押した。
するとすぐに中年男がにゅっと扉から顔を出した。
「君が新しく入るお手伝いさんかい?」
「はじめまして上里春風です。よろしくおねがいします」
「上里さんね……よろしく頼むよ」
中年男は会釈すると春風を屋敷の内部に案内した。
「自己紹介が遅れた……わたしの名前は大久保懐左、この屋敷の主人である琴城常陸様の名によりこの屋敷の管理を任されているものだ」
懐左は簡単な自己紹介を移動しながら行うとお屋敷の応接間に通した。春風は息を呑んだ。そこにはブシドージャーのメンバーが待ち受けてたからである。
「み、皆さんはじめまして上里春風です。よろしくおねがいします」
緊張しながらブシドージャーのメンバーに自己紹介する春風。緊張でブシドージャーのメンバーの自己紹介は聞けたものではなかった。
なんとか顔合わせを終えた春風は、一旦持ち場に戻ろうとした。
「上里さん、ちょっと来てください」
と声をかけられた。確かブシドーグリーンだったような気がする。
「葉月涼太さん、何でしょうか」
なんとなく嫌な予感がした。
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