ヴィランの静かなる会合!
――都内某所。
下町の風情を残した住宅街の一角に小さな駄菓子屋が存在した。見るからにレトロな雰囲気の店舗はまるで時間が停止しているようだった。
その駄菓子屋に大禍社の幹部であるダッキが訪れていた。
「つい最近、代替わりしたとは話に聞いていたが先代は元気でやっているか?」
黒いスーツでキャリアウーマン風の雰囲気を漂わせるダッキはエプロン姿の女店主は柔和な笑顔で応対した。
「おばあちゃんは今、カリブ海へバカンスに行っていますよ……なんでも引退したから思いっきり羽休めをしたいとか」
「まったくあの人らしい」
ダッキは思わず苦笑いする。
「ところでダッキさん、仮にも大禍社の幹部が世間話をするためにここに来たわけではないんでしょう?」
「あぁ……そうだったな……少しばかり頼みたいことがあったんだ」
ここで二人の表情は真剣なものに変わった。
「頼みたいこと……ですか」
「少しばかり山狗会の動向を探ってくれないか」
「山狗会? 天狗の秘密組織をなぜ急に調べなければならないのですか?」
女主人はダッキに疑問を抱いた。
「実は深い事情は言えないがある幽閉されている妖魔を山から連れ出したい。しかし、山狗会と大禍社とは不可侵協定を結んでいて大っぴらに手出しができないのだ……
だからこそフリーランスで動ける存在が必要なのだ」
「なるほどそういうことでしたか……閉鎖的な山狗会の調査、この望月やちよにお任せください」
「よかった……お前が受けてくれなければどうしようかと思っていたところだったよ」
そう言いながらダッキは安堵の表情を見せた。
◆◆◆◆◆
――大禍社の秘密基地近くにある大衆向けの食堂。
上里春風と黒崎文香は夕食を取りに来ていた。
「はるかちゃん、夕飯誘ってくれてありがとう!」
「文香ちゃん、最近働き詰めで大変だったでしょう……それなのに潜入任務に向かうわたしを励ましのメールを送ってくるから、ちょっと労いたいなと思ったの! だから感謝するのはこっちだよ!」
春風は文香に感謝の言葉を率直に述べた。その姿は中の良い女友だちにしか見えなかった。
二人は大禍社に入社してから時間を見つけてはこのようにして一緒に食事をしたりアクティビティを楽しんでいるのだ。
気心が知れた仲同士、和やかな空気が流れる中、不意に春風の携帯に着信が入った。
「ん……誰からだろう」
春風は素早くLINEを確認した。着信相手は琴城緋月、ブシドーレッドだ。春風はどうしたんだろうと思いながら内容を確認した。そして春風は驚愕した。その内容はブシドージャーメンバー合同キャンプへのお誘いだったからだ。
(これから、わたしどうなっちゃうの〜!)
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