第13話:九龍レトロ
ここは
その四皇に異変が起こった。あくる日、全員が全員、同じような体の不調を訴えた。それに呼応するように、街も異常なほど静まりかえったのである。いつもならそこら中でガンギマった連中が乱交パーティーを開き、路地裏では老若男女問わずの暴行が繰り広げられている。それがどこにいっても見受けられなかった。いったいこれはどうしたことかと俄かに話題となったが、その直後、突如として四皇の体調が回復したとのうわさが駆け巡り、話題はあっという間に消え去った。
しかし、街の中心にある巨大な塔、
すべては、この
【第13話:九龍レトロ】
タワーを飛び出し、たどり着いたのはお弓が待ち構える食堂。中は明りのほとんどが消されていて、まだ日が昇っている時間だというのに暗かった。そしてそこを守るように固く閉ざされていた扉を、
「オイ随分とご丁寧な出迎えじゃねーか、お弓ィ! さっさと出てこいや!」
多少いらだちを含めてそういうと、どこからともなく笑い声が彼らの耳に入る。この笑い方は間違いなくお弓本人のもの。そう確信した彼らは、明らかに声の響きが違った場所に顔を向ける。そして次の言葉を待つまでもなく、
「……やはりですか。
そう、他ならないお弓の補佐である
「……四皇のあなた方が、止めに来ると思ってました。必ず。確かにあの方がしようとしてることは、自分でも不味いことだとは承知してるよ。でも……僕はあの方の補佐だ。主人を裏切るようなことはしない。してはいけない。それが使命だから。だから───今ここで、貴方達を足止めします」
瞬間、
「
慌てて
「っうぇ!?」
「下がってろ」
ぎょっとした顔を浮かべる
「燃えろ」
刹那、炎は剣を伝って薙刀を喰らい、更にそこから
「ぼさっとしてんじゃねぇよ」
その背後から音もなく、
「ッギ───」
串刺しのように杭を直接打ち込まれた衝撃と、飛び散った体の再生による痛みで、口から聞くに堪えない声が漏れ出る。背中から腹部へと杭は深く突き刺さっていて、とても痛々しい光景だ。その痛みに耐えている
杭を打ち込んだ
「
「早くその杭を引き抜いたらどうです。動かねば撃たれます」
その言葉の直後。
「いえーい!」
再びガトリングガンは回り始める。最早敵味方問わず、そこら中を撃ちまくる
「いつまでそうやっているんです」
「うる、っさい───」
「……こんなもの、思い切り引き抜いてしまえばいいのですよ。いいですか───歯を、食いしばりなさい」
何をするつもりだ、と聞く寸前で、
「─────!!」
あまりの痛みに、形容しがたい悲鳴が
杭が引き抜かれた
「ッ……フーッ……フーッ……」
「睨みつける余裕があるのなら、いまここで首を斬り落としてしまいますが」
「……君ってさ、ほんっとに」
「何か文句がおありで」
「ッチ……」
「まあ、首を斬り落とす前に、貴方からは山ほど聞かねばならないことがありますので。その薙刀捨て置いてくだされば───」
ちらりと
「……こちらは何も手出しをしません。貴方が知っている情報をすべて聞かせてもらいましょうか」
その言葉に、
「最初からそうしてくれりゃよかったんすよ……」
「するわけないだろ。僕は女将の補佐なんだから裏切ることはしない」
「その補佐だから裏切ることはしないってのが引っかかんだよ。どういう意味だこら」
「まず、僕たち補佐は、四皇の代替品なんです。四皇のうちだれか1人でも行動不能な状態に陥ると、その四皇の力を僕ら補佐が受けとって、新たな四皇としてその席に座る。もちろん、受け継ぐ能力の中には、かの街との思想リンクもありました。しかしそんな代替品を人間から作れるかと言ったら話は別です。あろうことかかの連中は精子と卵子のより分けから始め、
重々しく語る
「……女将の部屋で、たまたま見つけた書類をすべて読みました。ちょうど女将がこの前楽しそうに部屋で踊ってたので、気になって入ったら分厚い書類が足元に投げられてたんですよ。あの人、僕が入ったのも気づかないで踊ってたので、その書類を持ち帰って、すべて読みました。
四皇たちを睨みつけながら、言葉を強くして
「ンな風に言ってるっすけど。ほんとはどうなんすか? もっと考えてることあんでしょ? 素直にゲロってスッキリしたらどーすか」
「さっさと答えたほうが身のためだぜ。オラ吐け、んで寝ろ。疲れてんだろテメェ」
その言葉に観念したのか、ようやく
「……本当は、僕だって女将を止めたかった。けど、滅びを女将が求めているのなら、僕は従う。だけど。こんな形で女将を、この街を終わらせたくはない。今までの女将は本当に楽しそうだった。心の底から、この街の日常を楽しんでた。だから───」
「絶対に、
◇
最後の一言を聞いたのち、
「ねーぇ、唐突過ぎないお弓ぃ? いきなり街ごと滅ぼそうとかさー」
のんきに語尾を伸ばしながら、
そんな調子の彼女にしびれを切らしたのか、今度は
「貴様がしたかったのは、本当にこれか」
変わらずお弓は答えない。静かに笑うだけ。
「答えろ───
そういわれると、お弓の顔からすっと笑いが消えた。代わりに出てきたのは、虚無のようななんとも形容しがたい表情であった。
「……せやで、の答え以外要らんやろ。ウチはそれしか求めとらん。ええ加減終わらせな、延々とド外道共に搾取されるだけやし。ほならもう終わらせたろ思うたんよ。この街が消えりゃ、ウチらも消えるんや。街あってのウチら、ウチらあっての街や。もうええやろ。あんなクソに付き
ふぅ、と一息つくお弓。直後、頭上に数えきれないほどの黒い矢が、お弓以外の四皇たちにその矢じりを向けて音もなく現れる。
す、とお弓の目が開く。
「────街消える前に、無様に死んどきや」
その言葉とともに、たくさんの黒い矢が彼ら目がけて豪雨のように降ってくる。とっさに
「ッチ」
ボリボリと黒い矢をジッパーで食らいつつ、舌打ちをしてお弓を睨みつける
「何や余裕そやなぁ。増やしたろか」
瞬間唐突に黒い矢の量が倍に増えて降ってくる。だがその直前でそうなることを察知していた
「っ、やばいっす、あと少ししかもたねっす!」
「任せろ、すべて燃やす」
力を振り絞り、
「すべて燃え尽きろ」
まるで呪文のように
「やっぱ局長サマはお強いこって。ま、言うて序盤も序盤やし、こいで終わりやないんやけど」
「独り言大会してんじゃねーよ」
けらけらと笑いながら煽る彼女に、今度は
「ッチ、逃げてんじゃねーよ」
「後ろから襲われたらそら誰でも逃げるやろ」
「そこじゃー!」
「ああんもうしつっこいわぁ!」
ひらりとかわしたお弓を、悪態付きながら睨みつける
「こういう芸当もできますので。あまり舐めないほうがよろしいかと」
「うるさいわぁ、黙っててくれん?」
「貴女が黙ればよいのでは?」
その隙に
「っ痛ァ……」
「休んでる場合かァ?」
と、そこへ逃すまいと
「な……ッかなか、ええの持っとるやんけ……ッ」
「はァ? 今までさんざん見てきて何言ってんだ。つーか手ェ抜いてんだろ」
「……ふ、ふふ、ふふふ。そー、やな……せやで。アンタら相手に……今の、状態で、ガチでやるわけ……ないやろ……こっからや」
ふいににやりと笑うと、お弓は目も口もこれでもかとかっ開き、黒い液体のような何かがどろり、どろりと流れ出す。それらは地面に落ちていく度、じゅうじゅうと焼ける音を立て消えて行く。しかし落ちていく量が増えれば増えるほど、消えていくことはなくなり、次第に別のものへと変化していく。そしてその形が鮮明なものになると、突如としてお弓は妙な言葉を連ね始める。
『 ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが=なぐる ふたぐん 』
言葉を終えた瞬間、彼女の姿は異形の者に成り果てていく。短く切りそろえられていた黒い髪は、地面につくほど長く、そして不気味なほどに美しい黒髪に。いつもしゃんと伸びていた背筋は、まるで老婆のように折れ曲がり、その姿はまるで化け物。顔つきもとてつもなく歪んでしまっていて、本当に同一人物か疑いたくなるほどの変わりようであった。周りには黒いなにかでできあがった、タコ足のようなものが幾つも気味の悪い動きを披露している。
『繧?▲縺ア豌励↓蜈・繧峨s繧上= 陦玲カ医☆蜑阪↓豁サ繧薙←縺阪<』
お弓だったものから発せられる声や言葉は、この世のものとは思えない、非常に耳障りな音の集合体。しかしその音の集合体が、自然と理解できてしまう自分たちの耳や脳が、さらに気持ち悪いと感じる。だが彼らはその理由を何よりも
「……そちらがその気ならば。我々もそうしようか」
「はァ。結局こうなんのかよ」
「むぅ……アイツに体かすの嫌なんだけどぉ! でもしょうがないんだよねー……」
ちらりと彼らは補佐達のほうに視線をやる。その意図を理解できた彼らは、おとなしく眠っている
『 ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ くとぅぐあ 』
『 いあ いあ はすたあ はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ あい あい はすたあ 』
『 にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! 』
それは異形の神を喚ぶ呪文。ひとりはかつて抉られた左目を封じていた眼帯を外し、ひとりは心臓部に埋め込まれたジッパーを開き、ひとりは身に着けていた服をすべて脱ぎ捨てる。
あらわとなった左目には果てることのない炎が宿り、開かれたジッパーからはぶわりととてつもない風が吹き荒れ、全裸となったつぎはぎだらけの体はばらばらとなる。そのばらばらとなった体だったものからは、土砂崩れのように土と思しきものが大量にあふれ出て、やがては食堂を飲み込み、ついには全く新しい土地を作り出す。
体から生み出された新しい土地には、かの
消えることはない炎に包まれた球体の集合体のような何か、何かローブのような布切れをまとった極めて形容しがたい出で立ちの者、宇宙のような顔が煌々と輝く真っ黒い人型。それらの視線と思しきものはすべて、目の前に存在している異形の者に向けられていた。
『髱「蛟偵↑縺薙→縺励d縺後▲縺ヲ』
『縺輔▲縺輔→邨ゅo繧峨○繧医≧』
『繧ゅ≧濶ッ縺?h縺ュ蟋九a縺ヲ』
彼らにしか通じない言語のようなものが響き渡ると、会話らしきものに満足したのか、真っ先に睨みつけている先の異形の者───
『逞帙>縺ェ縺薙?驥朱ヮ?』
そう発した
『谿句ソオ縺ァ縺励◆縺』
伸びてきた腕と思しきものが、
『縺雁燕邨先ァ矩ヲャ鮖ソ縺?繧』
『繧?°縺セ縺励o』
瞬間、
「───♪」
人語とはまた違う、まったく異なる言葉を発すると、今度はその背後から突然石壁がものすごい勢いで頂上まで伸びてくる。瞬間、石壁によって押し上げられたある人物が大鎌を構え、隙を見逃さずに
「……今、こうなってしまった以上。私にできることは、せいぜい怯ませることくらいですが」
お願いします。それだけ言うと、石壁とともに予期せぬ乱入者は下層へと下って行った。怯ませる、その言葉通りに
『縺雁燕縺ョ螟「迚ゥ隱槭b縺薙%縺セ縺ァ縺?』
その場に存在している風という風を集め、ひとつの杭を作り出す。狙うはただ一つ。かの者の核となる心臓部のみ。
『
一言ともに杭は打ち込まれ、黒い塔とともに新たな土地は塵芥と化し、消え去った。
◇
「おーい、いつまで寝てんだ。起きろ」
どこかもわからぬ場所で、耳に聞きなれた声が響く。どうやら自分自身に向けて話しかけているらしい。面倒くさいと思いつつも、ゆっくりと視界を開ける。ぼんやりとだが目の前の光景が映し出され、完全に開けると、3人の知り合いが表情豊かにのぞき込んでいるのが分かった。
「……」
声を出そうとするも、かすれて形にならない。おまけに体も言うことを聞かないようで、うまくジェスチャーすらも取れない。その様子に気づいているのか、最初から知っていたのか、のぞき込んでいたひとりが口を開く。
「随分おっそいお目覚めだな。ったく感謝しろよ。トドメ刺した後ここまでテメェ連れてくんのに一苦労したんだぜ」
「治療も結構時間かかったもんね」
「とにかくだ。テメェには酷かもしれねぇが、言いたいことは山ほどあんだこっちは。一方的に吐かせろや」
そう言うと頭をガシガシとかいて、ちらりと隣にいた眼帯をした人物───
「貴様は先走りすぎた。先走りすぎた故に本来使わずとも済んだあの姿を使わざるを得なかった。そしてその結果がこれだ。このザマだ。街と心中するつもりならば、我々を先に殺してからにしろ。大馬鹿者が」
それだけ言うと、次はお前だとシスター服を着た人物───
「んー、なんて言うかあ。楽しけりゃそれでいいんじゃない? 別に街消しても楽しくないじゃーん。だって楽しいこと出来ないんだもん。そんだったらあ、あの人たちぶち殺した方がよぉっぽど楽しいと思うよぉ? ねー
顔をぱっと明るくさせて話を振ると、ケッと悪態つきながらも、
「そー言うこった。二度と面倒なこと引き起こすんじゃねえぞ。事後処理にどんだけ時間かかんのかテメェいくらでも知ってんだろ。仮にも四皇なんだからよ」
アホンダラ。そう言って手にしていた煙管で床に伏している彼女───お弓の額をぺしりと叩く。少し煩わしそうな表情を浮かべるも、はあ、と彼女はため息をついたのみ。分かりましたよ、と言いたげな顔に変わった。
「さてと。コイツの目が覚めた事だし。さっさとアイツらを全員処分しとかねーとな」
話を終えて満足したのか、
今回の騒動がどういう結末に転がろうとも、連中の思い描いているエンターテイメントになってしまうのは嫌という程理解出来た。実際お弓を今いる場所に連れていくときでさえ、どこから聞きつけたのかは知らないが、狂喜に満ちた電話がひっきりなしにかかってきたらしい。その度に無言で切ったり、もしくは着信拒否をしたりと対策はしたのだが、あらゆる手段を使ってでも彼らと連絡を取ろうとしてきている。尚、現在彼らがいる場所はありとあらゆる電波が届かない、遮断された場所であるのである程度は静かだが。
しかしそれもいつまで続くか分からない。なればこそ、さっさとその問題にカタをつけてしまおう。それがお弓が眠っている間に出された結論であった。
「そだねえ。でもさあうちらで殺しにいってもさー、それはそれであの人たちの本望ってことにならない? 多分すんごい喜んで死ぬと思うよお」
「そこだ
「であれば、適任がいるだろう」
少し眉を顰めて
「適任? どこのどい───……ああ、いたわな」
「というより、あの者達しか居ないだろう」
「んえ? ……ああ! 確かにぃ」
「───四皇補佐である
ひとつ呼吸を置いて、
「
◇
未だに崩れることなく存在する旧九龍城。その中に存在する研究施設では、今日も今日とて謎の実験が繰り広げられていた。その中心となっているのは、外道にも等しい、研究者とは名ばかりの鬼畜共。彼らの今の話題は、
「漸く悲願が叶った!」
「これだよ、これが見たかったんだ!」
「それぞれが造りあげた
「これこそ研究者冥利に尽きるな」
「しかしまだ終わらん。あの街と我々の
「もし彼らが死んだとしても、万が一のドールは正常に動いているようだし、安心して見届けられるわね」
「素晴らしい、素晴らしいビッグイベントだった!」
そうして盛り上がっていると、突如として研究室の扉が開かれる。興奮のあまり、そちらに思いっきり顔を向けると、そこには彼らが先程まで話題にしていた
「もしや我々を殺す気かな? いいとも、本望だとも! 手塩にかけた作品に殺されるのなら、喜んで受け入れよう!」
狂喜に満ちた声でそう叫ぶが、2人はにやりと笑って口を開く。
「だぁーれが殺すっつったよバァァーカ」
「確かに殺すつもりでは来ているが、殺すのは我々ではない」
その瞬間、天井から石壁が降りてきて、思いっきりひとりの別の研究者を押し潰した。ぐちゃっという聞くに絶えない音が鳴り、そのまま念入りに石壁はそれをすり潰す。
「───え」
「何よそ見してんすかクソ野郎」
驚きのあまりその光景から目を離せないでいると、突然後頭部に思い切りのいい蹴りが入り、状況把握が出来ぬうちに新たな石壁によってぐちゃっと押しつぶされた。
「上出来だ、
「別のとこで褒めて欲しかったっすね……ま、いいすけど」
予想もしていなかった人物によっての殺害現場に、残りの研究者達は呆然と立ち尽くすのみ。どうやら全く目の前の光景に理解が追いついていないらしい。
と、そこへ間髪入れずに、ひとつの弾丸が別の研究者の頭へと命中する。その弾は見事に脳幹を貫き、撃たれた研究者は力なくその場に倒れる。そしてその隣にいた伴侶と思しき人物に向けても、またひとつの弾丸が眉間を貫いた。弾丸が飛んできた場所を見れば、そこには少し派手な男物のチャイナドレスを着た、男か女かもわからぬ出で立ちの人物が、アンチマテリアルライフルを構えている。そこから手を離し、煽るかのようにピースをして笑顔で舌を出していた。
「全く、戦闘に関してはずぶの素人で助かりましたよ」
さらに静かな声が響いたと思えば、次の瞬間には研究者2人の首が綺麗に刈り取られていた。大鎌に乗せられた生首2つを、武器の主である人物は顔を歪めて、まるで汚らしい虫を払うかのように地面に落とした。
最後に残ったのは、かつて自らの娘を旅館に
その2人の首筋に、背後から薙刀がピタリと当てられる。本来、ひとつの薙刀が当てることの出来る首筋は1人。しかし何故か今、薙刀は明確にふたつの首筋にピタリと当てられている。それはどういうことか。
「……武器はひとつとは限らないんですよ」
背後にいる人物が、2本の薙刀を手にして立っているからである。それも、切り落としやすいように、右の薙刀で左にいる人物を、左の薙刀で右にいる人物を明確に捉えている。
「聞きたいこととか、やり返したいことは、確かに沢山あります。山ほどあります。四皇である主人達に命令されて、ここにいます。けども僕らは、その命令を今まで下された命令より快く受けました。かつて主人達が受けた仕打ちが許せない。何よりも、許せない。四皇の言葉を絶対とする補佐だから───僕らだから、アンタ達が憎くて、憎くて、憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて!! ここに居るんですよ!!」
直後、2本の薙刀によって、空中に2つの生首が舞った。
◇
「お疲れ」
どしゃっとその場に膝をつく
「いや壮観だな。この景色見せてやりてえよ」
「写真でも撮っておけ。
「任してくださいっす」
血や内蔵、脳漿などが飛び散って見るに堪えない光景が広がっている研究室だったものをぐるりと見回して、笑いながら
「何はともあれ、目下の問題はこれで解決しましたね」
「───♪」
「あとはまあ、街の方か。あの戦いで少なからず被害っつーか、半分消え飛んでるっぽいけどな……」
「それは追追やって行けばいいだろう。3分の2が消し飛んだ時ですら、速いペースで復興したのだから、容易いだろう」
「そーだな。んじゃ帰るとするか。どーせこの城も後でぶっ壊すんだし」
その一言で、その場は解散となる。しかし未だにその場に座り込んで立てない人物が1人。立とうとしても、足が言うことを聞かないらしい。がくがくと震えている。その様子に気づいたのか、
「立てねえのか」
「……はい」
「……肩貸してやるから、おら体重こっちに預けろ」
薙刀は
彼らにとっての新たな門出は、もうすぐそこに。
終
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