第7話:休暇
生命を宿し、何かしらで生計を立てている以上、どうしようが休暇というものは必要になる。学問に励もうとも、仕事をしようとも、ただ自堕落に生きていても。体力、精神、その他諸々。何かしら一つは休暇を求めて体にサインを発信する。それはこの
だから、この街には『休暇日』という恒例行事のようなものが、一定の周期で設けられている。その休暇日こそ、
【第7話:休暇】
さて、この休暇日。設けられたのはきちんとした理由がある。事の始まりはこの街が、巨大な街として機能し始めた直後の出来事であった。まだそれこそ四皇たちが、四皇として存在する前───というよりかは、なる直前で4人が、強大な力をつけてきたころの話といったほうが合っているだろう。その頃はまだお互いに面識すらなかったものの、何やら力がずば抜けて強い奴らが3人ほどいるらしい、という噂だけは全員が耳にしていたという。それぞれに思うところはあったものの、どうにかして会おう、という考えは4人全員に存在していなかった。「自分の利益以外どうでもいい」と考えている連中なので、仕方ないといえば仕方ないだろうが。
しかし
しばらくにらみ合いが続いた後、何が癪に障ったのかは不明だが、
ただ用事をさったと済まそうとしていただけなのに。早く帰って新しい
「……お前、な、なにやってんだ?」
当事者以外全員が思っていたであろう言葉を、
「ウチも混ぜろや、ドサンピン共」
そこから先はもうひどいものだった。左がなくなったことにより、若干の動きの遅れはあったものの、お前の目玉も抉ってやると言わんばかりに
その後、正気に戻った彼らが目にした光景は、ほとんど更地と化した
「……なあ、もうどっかで休もうぜ。疲れた」
これからやらなきゃなんねえことは、休んだ後にやろうぜ。
◇
これがきっかけとなり、また四皇のかつての戒めとして、休暇日が街全体で設けられた。この日に関しては、薬剤も、乱交も、その他悪事も、すべてが禁止事項となる。つまりはこの街にとってのある意味最も息苦しい日。なんせ労働ですら禁止事項の一つに挙げられているのだ。いったい何をすればいいのやら、というのが街で暮らす大半の住民の意見だが、これを設けたのが絶対的な権力者たちである四皇であるから、安易に口出しはできない。この日ばかりはおとなしく静かに過ごすのみ。結果、街の大通りも中心地区も、いやというほど、不気味なほどに静かになるのだ。何せ人が1人もいないのだから。
「休暇日最高……」
そしてここに、この休暇日を優雅に過ごしている者がいた。そう、
「店主殿。休暇日のところ失礼しますが。少し厄介なことがあります」
「あ? おい
そうしているうちに、部屋の外から何やら第三者───補佐の
「研究組織、施設、その他を調査した結果なのですが。面倒なことになりまして」
「……オイ、これ」
「はい。そうです」
パラパラと書類をめくっていく手が、ある場所でぴたりと止まる。そして記載されたとある文字を、指先でなぞる。その指は確かに震えていた。
「四皇の皆様全員の、かつてのお父上とお母上がトップにいます」
終
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