第6話:大怪獣バトル
人権と尊厳以外なんでもある街、
【第6話:
事の始まりは
「そういやさー。ここ最近妙ちきりんな実験施設が出来たっぽいんだよねー」
「妙ちきりん……?」
「そー。なんていうかぁ、典型的な悪い研究機関みたいな」
「なんだそれ。正義のヒーローに相対する悪の組織、みたいなやつか?」
「それそれ!」
意外にもほどがある、と言われればそれまでだが、この
そんな娯楽に出てくるような、典型的な悪の研究機関が、どうも
「まじでなにがしてェんだそいつら」
「情報が少なすぎるわね。ねぇ
「おーん……なんか変な実験やってるとかー」
「随分とあいまいな情報だな」
「しょーがないでしょー、なぁーんかまじで変な実験らしいもん」
「この街じゃ変な実験なんざ、変でもなんでもないだろ」
「そうねぇ」
「とはいえ、貴様がそこまでになるのは珍しいな。調べておいたほうがいいか」
「公僕は忙しいこって。言ってもそこまでじゃねぇだろ。その研究組織とかやら」
「あら、案外そうじゃないかもしれないわよ」
「お弓は呑気にいうよなぁ。ま、ウチに何かしらの利益が降っかかってくりゃ、万々歳なんだけどな」
「それはウチも同じよ。
「そりゃね! お金が降ってくればなんでもだいかんげーい!!」
「んじゃ、そろそろ代金くれや。今日はもう店じまいすっからよ」
「はいはい」
「はーい」
「毎度ありぃ」
と、返した。
◇
数日後。今日も今日とて
「女将、外にバカみたいな巨大生物がいます」
「ごめんなさい、もうちょっと状況の説明が欲しいわ」
いつもお弓の補佐をしている人物───
「ほんの数分前です。外に突然バカみたいな巨大な生物が現れたんですよ。なんというか、すごいあほ面の。例えるなら……そうですね、タコみたいな、イカみたいな。そんな感じです」
「造形の説明そんなに難しいの?」
「ええ。いっても
「あら」
そこで明らかに
「あら~……」
足は鶏、胴体はけむくじゃら、両手にはハンマー、両腕には鋏がくっついており、尻尾は蛇で顔はタコだかイカだかのあほ面。この世のものとは思えない、妙ちきりんな巨大生物がそこに存在していた。これは確かに気持ち悪い。しかも突っ立っているだけでなにもしてこない、というのがまた更に気持ち悪さを助長させる。長いことこの
しばらく見つめていると、騒ぎを聞きつけたのかほかの四皇も駆け付けた。しかし彼らはそれに恐れることはおろか、驚くこともなかった。むしろ造形の気持ち悪さに、若干ながら引いているようであった。あの何事にも動じない
「なんかでっかいのいるー!」
そんな中、変わらず目を爛々と輝かせ、嬉しそうに飛び跳ねる
「誰だよアレ作ったの」
「本当に大きいわよねぇ」
「いや大きいっつーかキショいっつーか」
「何もしてこないのが猶更気色悪いな」
そんな風に思い思いの感想を言い合っていると、突如その巨大生物はキラリと目を輝かせて、まるでスローモーションのように動き出す。そいつが動くたびに、街が揺れて立つどころではなくなる。やけに重い地響きが、
「オイコラ
「貴様何を言っているんだ、1人に押し付けて帰るつもりか」
「たりめーだろーが!」
「というか押し付けても帰れなくない?これ」
「立ててないものね私たち」
「だー! いい加減揺れ収まりやがれ!帰れねーじゃねーか!」
そう
「ハッハッハ! 九龍四皇ともあろう方々がなっさけない! とんだ肩透かしですなぁ」
「なんだそのテンプレみてぇなセリフ」
「誰が噛ませ犬ですとぉ!?」
「言ってないのよねぇ」
そちら側を振り向くと、いかにもな白衣を身に着けた連中が、にやにやと笑いながら四皇を見下していた。
「コイツは我々研究チームが作り出した最高傑作! その名も
「あの人頭イカれちゃってるのね」
「この街じゃそれ悪口にもならねーぞお弓」
「その通り! この街で最もイカレてるあなた方に言われる筋合いはないっ!」
「言い切りやがったぞあいつら」
「決めポーズまでやっちゃってるもんねー」
「果てしなくダサくないか」
「うるさいっ!」
心底心外だと言いたげなその研究者たちは、ともかく、と仕切り直しをする。
「我々の目的はただ一つ……あなた方四皇の座です! 我々がその座に座れば、この街はさらに発展を遂げ、ついには銀河に進出する!! ついでに気に食わない美形たちを叩き落したい!!」
「後者が本音ねきっと」
「ひがみダッセぇ」
「そんなこと言ってると、どうなっても知りませんよォ! 行くがいい
冷や汗をついに流し始めた研究者がそう叫ぶと、
「よっわ」
「うるさいっ……こちとら一介の研究者だぞ……がくっ」
「口に出すんかい」
すっかり気絶してしまった彼らを放置し、残る巨大生物と相対する四皇。しかし今手にしている武器では、おそらく長期戦になるであろうと踏んだのか、どこからか別の武器を持ってくる。巨大生物はそんなのお構いなしに、ブレーキがなくなったからか、破壊行動を激化させ、至る場所を壊しつくしていく。
「街がいつまで保つかわからんな。手早くつぶすぞ」
「わかってらァ」
「ふふ、この子を使うのも久しぶりね」
「いえーい! 今日は暴れていい日だー!」
「調子乗ってお弓んとこの食堂つぶすなよ
「もっちろん!」
「
誰かがそうつぶやくと、四皇はもう動き出していた。
◇
「疲れた、しばらく店休むわ」
「それにしても……」
あの硬さは異様であった。
「はぁ……今日はもうずっと寝ていようかしら」
あまりにもな1日であった。処理しきるには時間がかかりすぎる。お弓はなぜか自分の寝室で倒れていた
終
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます