選択は決断を鈍らせる
ここ一週間ほど、帰宅から就寝までの流れをルーティン化してみた。
これまでは日によってやったりやらなかったりすることもあったのだが、頭の中で段取りを組んで動くよう意識しはじめた。
そのルーティンは、帰宅後にすぐ運動し、シャワーを浴び、夕食を食べ、自由時間を過ごし、2時間ほど創作やら読書に充てて寝る。合間に家事が挟むが、だいたいこんな感じだ。
書き連ねれば煩雑ではなく大して見栄えもしない内容だが、やはりこれが「流れ」と化すとやりやすい。脳が考えずに身体を動かせる。
これまではその日の気分で動いていた。帰宅後すぐに仮眠を取り、その分遅くまで起きている日があったり、帰宅後すぐに夕飯を食べ、そのまま自由時間に突入し運動をしなかったり、はたまた夕飯もとらずに何時間もスマホとにらめっこしていたり。
いつの間にか寝る時間になり、その段になって寝るのが惜しく感じられ、ずるずる起きていて翌朝がつらく、仕事のパフォーマンスが落ちる悪循環もあった。
ありがたいことに仕事でも文章を書かせていただく機会が頻繁にあるのだが、寝不足で思うように言葉が浮かばずに苦しむ日もある。
不調を解消し少しでも実のある時間を過ごすために始めたルーティン作業だが、意外と性に合っている。流れさえ掴めば「次は○○か、じゃあ〇時に始めよう」と区切りをつけて動ける。
ルーティンを決めていないときは常に「どうしようかな」と自分に問いかけていた。スマホをいじりながら、「そろそろ夕飯作る?」「うーん、もうちょっと先でいいかな」といったぐあいに、自分と対話をしていた。「夕飯食べ終わったけど、次は何する? 読書? シャワー?」だったりもする。
この問いかけが意外に手強い。自分が自分に質問をし、自分は判断を迫られる。
決断は脳のエネルギーを大幅に消費する。
かのスティーブ・ジョブズがいつも同じ服だったのは大事な決断力を服を決めることに費やさず、仕事に全力投球するためだという逸話はあまりにも有名だが、まさに私はその失敗例を毎日再現していたわけだ。
厄介なことに、「次に何をするか」という些細な選択でさえも決断のエネルギーを使う。仕事での決断エネルギーが1回につき100キロカロリーとすると、次の行動を決める決断は5キロカロリーくらいだろう。しかし後者は圧倒的に頻度が高い。
次は何をする? 夕飯は何にする? お米を何合炊く? どの食材を使う? 今日はお風呂に入る? 入浴剤入れちゃう? 明日の準備はどこまで進める? ライン返信する? 夜遅いし明日返信する? ……日常に潜むささやかな選択は山のようにある。5キロカロリーと侮り、いつの間にか100キロカロリー以上を消費して、理由も分からず疲れ果てていた。
なので、無駄なカロリーを省くべくルーティン化し、脳のリソースを節約している。凡百のハウツー本が声高に言っていることを何を今さらと思うが、意外に侮れない。
決断を抑えた状態で創作活動をすると、ぽんぽんと言葉が生まれてくる気がする。プラシーボ効果だと笑うなかれ。小説を書くという行為だって、より良い言葉を取捨選択するための決断を何度も迫られる。良い作品を生み出したいと思うなら決断力を温存していたほうが良いに越したことはない。
このルーティン生活を試すにあたり「5秒ルール 最高の結果を出す人がやっている思考・選択・行動 50の習慣」(千田琢哉著、徳間書店)を参考にした。
5秒以内にやり始めるとやる気モードになる、やる気がなくなっても5秒だけ続けてみる、仕事のメールは5秒以内に仕分けする……など仕事で役立つ心がけや振る舞いについて述べられている。
この本の影響もあり、最初は早めに手をつけることに注力していたのだが、やろうと思って5秒以内に取り掛かると「やろうかな、どうしようかな」と逡巡する時間がなくなり決断力を浪費しないと気づき、より早く手をつけ決断力を温存するためにルーティン化を取り入れた次第だ。
仕事でもメールやチャットは即レスを心がけたところ、悶々とすることも減った。やはり先延ばしにすると何事も良いことはないのだと再認識した。
そんな感じで日々を送り、夜まで英気を養って創作活動を行っている。1週間頑張った結果、最終更新が4月で止まっている現代ファンタジー「万世の轍」がようやく更新できそうで嬉しい。今後もルーティン化を推進し、次は「デリバリーウィル」を更新すべく頑張ろうと思う。
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