レゲエすげえかっけえ


 レゲエと縁遠い人生を送ってきた。

 そもそもレゲエの定義すらあやふやな認識だった。wikipediaいわく、レゲエは1960年代後半のジャマイカで発祥したポピュラー音楽で、2018年にはユネスコの無形文化遺産に登録されている。4分の4拍子の2・4拍目をギターのカッティング奏法え刻み、3拍目にドラムのアクセントを置く、ベースがうねるようなベースラインを奏でるといった特徴がある、らしい。

 レゲエとラップの違いも曖昧だったので調べたところ、ラップはメロディをあまりつけずにトラックに韻を踏んだりしながら歌詞を載せる。対してレゲエは韻を踏む量は少なめだという。(参考:レゲエとヒップホップの特徴と違い | 日本語ラップ.com (nihongo-rap.com)


 ヒップホップ系の音楽があまり好みではなく、なんとなく距離を置いていたのだが、このたびレゲエに触れてその技術に感服したので書いてゆく。


 きっかけになったのはTHE FIRST TAKEというYoutubeチャンネルだ。その名の通り、アーティストの一発撮りパフォーマンス動画を投稿している。名立たるアーティストやアイドルまで、往年の名曲から最新ソングまで網羅されている。

 先日、そのチャンネルにレゲエDee jayのCHEHONチェホン氏が登場し、代表曲の「韻波句徒インパクト」を歌い上げた。それをたまたま再生し、目を奪われた。


 ヒップホップ系の音楽を敬遠していた理由のひとつに「何を言っているか聞き取りづらい」があったのだが、CHEHON氏の発声は明瞭で通っていて、字幕をオフにしていても歌詞が聞き取れた。

 滑舌が良い……というのはレゲエを歌う方なら当たり前なのだろうが、レゲエそのものを聴き慣れていない身からすればとても衝撃的だった。よくこのアップテンポで噛まずに滑らかにはっきりと歌えるものだと思った。

 しかも懸命に歌詞を追うのではなく、余裕すら感じられる。原曲からTHE FIRST TAKE用にアレンジされている部分もあり、そつなくアレンジをこなす姿が格好良かった。


 良いものを聴いたなあとホクホクしていると、少し経ってからまたTHE FIRST TAKEのチャンネルに再びCHEHON氏が現れた。歌ったのは「Champion Road」で、この曲は総合格闘家の平本蓮ひらもとれん氏の入場曲にも採用されている。

 「韻波句徒」がどこか余裕漂う印象なのに対し、「Champion Road」は闘志がバチバチと漲っている。会場で聞いたらめちゃくちゃにテンションが上がる自信がある。


 2曲ともロックを好む私にドストライクで、聴けば耳に残り頭にも残った。レゲエってよく知らなかったけどすごくかっこいいな、と思った。


 クラシックや民謡は音楽の授業で学ぶが、レゲエやヒップホップは学ばなかった。実際にどんな曲があるか知っていたらもう少し早く興味を持てたのに……それに、レゲエに興味を抱いて真似するうちにものすごく滑舌が良くなっていた可能性も……と勝手に学校の音楽教育に見当違いな苦情を抱きつつも、偶然の出会いに感謝した。


 何度も再生するうちにCHEHON氏の動画がおすすめに表示され、いわゆるラップバトルのショート動画もいくつか見た。即興で言葉を考えていると思うと驚くばかりだ。韻を踏みつつリズムに乗るなんて考えただけで頭がこんがらがりそうだ。私なら韻を踏むのに30分は欲しい。即興で言葉が出てくるなんて、その瞬間の脳内を見て見たい。無数の単語が飛び交っているのかもしれない。

 でも俳人や歌人もある種やっていることは同じだよな……レゲエDJって現代の歌人じゃん……しかもその場でサッと作れるタイプの……すご……と、脳内で畏敬の念が沸き上がった。


 これまで「なんとなく騒がしい感じ」としか認識してこなかったレゲエの印象が大きく変わると同時に、好みの曲と巡り合えてとても良い経験をした。iphoneに2曲とも入れて通勤時に聞いている。なんだか自分がすごく強くなった気分になりおすすめだ。少しずつフレーズも覚えて来たので口ずさむこともあるが、当然のように舌がついていかない。歌い上げる技巧のすばらしさには脱帽するしかない。完璧に歌えるようになったら楽しいだろうな。


 もしこれを読んでいるあなたがレゲエというジャンルに関して同じような認識を持っているのなら、ぜひYoutubeで見てほしい。そんな感じで、最近レゲエに感動したよ、という報告兼おすすめ動画紹介のエッセイは終わる。

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