ホルモンに左右される
しばらく間が空いてしまった。数日おいた理由がタイトルの通りである。ホルモンにやられていた。食べる方ではなく、分泌されるほうの。
女性ならではの弊害……という表現が適切かは分からないが、毎月のホルモン分泌によって体調が左右される人は少なくはない。私も例に漏れず、ホルモンに左右されがちな一人だ。
女性とホルモンは切っても切れない。月経や排卵に伴い、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌され、気分の乱高下や身体の不調をもたらす。不調の幅や期間も人によって異なる。日によっても調子が違う。
一生に分泌されるホルモン量はティースプーン1杯程度と言われるが、わずかな量のホルモンにずいぶん長いこと苦労させられている。
私は身体の変化はそうでもないが、情緒的な面で大いに影響を受ける。非常に気分が落ち込み、「自分なんか」と自己肯定感が下がる。ただ、その周期さえ抜ければ回復し、終わるたび「なんだったんだろう、あの時期は」と思う。それを毎月繰り返している。
落ち込む気持ちをうまく流す術はいまだ確立できていない。前回役に立った対処法が今回も役に立つとは限らない。そろそろ来るぞと身構えて自分を甘やかしていてもどうにもならないときは本当につらい。
自己肯定感が下がると何かを創造する気もなくなるから困りものだ。価値の低い自分が書くものなんて……と無気力と化す。ティースプーン1杯にも満たないホルモンのせいでこれほど大変な思いをしなければならないなんてと時折嫌になる。それでも折り合いをつけて生きていかないといけないから面倒だ。
自分を奮起させてなんとか創作を断行していた時期もあったのだが、周期を抜けてから見直すととんでもなく(自分比で)質の悪いもので驚いた。以降はあまり無理しないようにしている。
ホルモン関連で厄介なのは万能な対策がないことだ。人によって症状も対処法も違うから、軽い症状で済む人には重症の人が理解しにくい。そのせいで溝が生まれもする。悪いのはホルモンのせいなのだという共通意識があればよいのだけれども。
今でさえ大きく左右されるホルモンだが、更年期を迎えたら私はいったいどうなるのだろうと不安になる。閉経を間近にしてホルモンの分泌がさらに乱れ、別人のように性格が変わり感情的になる人もいると聞く。更年期障害を苦にして精神を病む人もいる。かつてともに働いていた人は、頭痛がひどくつらいと言っていた。重だるい痛みが頭を支配し、感情にも影響を及ぼすと。
更年期障害は男性にも訪れると近年になり解明され、男性もまた悩む人がいる。女性より言いづらいのか、明言する人は少ない印象を受けるが、自分のコントロールできる範囲でないなら素直に表明した方が何かと楽になるのではと思う。
嫌な気分と向き合うたび、今からこうなのでは更年期はどうなるのかと不安になってしまう。少しでも影響が少なく済むように健康的な生活を心がけているが、対策をしてもどうしようもない部分もある。
ホルモンは人間のコントロールできる範疇の外にあると思う。そう思えば、何か嫌なことがあっても「人間なんてティースプーン1杯にも満たない分泌液に情緒を左右される存在なのだから、と妙に悟りかける自分もいる。
長い一生を共にするのだから、無理のない範囲でうまくホルモンと付き合いたい。「まったくホルモンのクソ野郎が」と毒づくよりも、「なんだい今月はずいぶん荒ぶっているねホルモンくんや」と声をかけてみようと思った次第だ。
自分がホルモンに翻弄されているのではなく、乱れるホルモンの様子を達観するやれやれ系主人公になりきれば少しはこの不調とも楽しく向き合えるのかもしれない。来月はそんな心持ちでホルモンによる不調を迎えてみようと思う。
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