赤と黒と多様性と好み
ランドセルのカラーバリエーションの豊富さを見るにつけ、今の若い子(幼い子と言うべきか)が羨ましい。
私が小学校の時分、男子は黒で女子は赤が暗黙の了解だった。それ以外の色を欲しがる子もいなければ、提案する親もおらず、「ランドセルは赤か黒」と世間一般に浸透していた。それが今や、豊富なカラーバリエーションから選べるのだというから素晴らしい。
好きな色を選べるのは素敵だなと思う。ピンク、紫、青にキャメル。百貨店でランドセル購入の時期になると、色とりどりのランドセルが飾ってあって見ているだけで楽しい。もし何かの力が働いて小学生に転生したのなら脇にかっこいい刺繍の入ったキャメルのランドセルを背負いたい。
いつからバリエーション豊富になったのだろう。10年ほど前にはちらほらとその兆しが見えていたように思うが、もう今は「選べるのが当たり前」の時代になっている。刺繍や内部のカラーリングも選べ、決めることが多くてそれはそれで大変そうだ。
6年間背負い続けるものの色を未就学児が決めるというのも大きな冒険だろう。親御さんのプレゼン能力も試される場かと思う。なにせ安い買い物ではないし。
統計を見ると男児は昔と変わらず黒が多数派のようだ。汚しやすいだとかキズをつけやすいなどの使用感上のねらいが黒を多数派に押しあげていると推察する。男児が暖色系を選ぶ割合はまだ低い。女児は紫やキャメル、オレンジ、水色とバリエーションに富む。
男児がピンク、女児が黒を選んだ例はあまり見ない。単に需要が少ないだけかもしれないが、もし「男の子がピンクだなんて」「女の子は明るい色が」というバイアスゆえであったら、ゆっくりとでもいいので解消されていけばいいなとも思う。
ランドセルの色の変化は、社会における「男らしさ」「女らしさ」の意識の変化とも相関があると感じる。赤と黒しかなかった時代よりも、「らしさ」の呪いは薄まってきた。良い傾向だ。多様性に関する意識が全体的に向上している。
色鉛筆の「はだいろ」も「うすだいだい」に変わった。長年「はだいろ」をあの色として認識していた身からすれば、「うすだいだい」に変更された経緯を知ってハッとした。「ああいうもの」と捉えていると、人種の多様性と色名の関連性になかなか気づけない。
しかし、いまだ根強く「ピンクは女の子」「青は男の子」の意識は残っている。が、いずれ変容していくものだとも思う。
色へのイメージは国柄や流行に左右される流動的なものだと認識している。日本で高貴な色とされる紫は他国でセクシーな色とみなされるところもあるし、純粋無垢な印象を与える白は、死者や霊を連想させるとする国もある。
それに、いま流行りの「くすみカラー」は少し時代をさかのぼれば垢抜けない感じで敬遠されていたはずだ。
戦隊ヒーローのレッドは男性が務めることが多いし、イエローは男性と女性どちらでも見られる。現在放映中の「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」はピンクに史上初めて男性キャラクターが割り当てられた。
また、男性アイドルのメンバーカラーでピンクやオレンジが設定されることも珍しくはない。
さらに10年少ししたら、色の定義も大きく様変わりしていることだろう。色がさらに細分化されるのか、古風な色合いが流行るのか、さらに色の持つイメージが変化するか。そのころランドセルのカラーリングがどうなっているかにも注目したい。
ゆくゆくは道を歩く小学生を見て「今年の流行りはシャンパンゴールドとセルリアンブルーかあ」とか思ったりするのだろうか。ちょっとワクワクする。
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