明るく開き直る心持ち


 創作論は面白い。プロ・アマチュア問わず、その人がどういう指針を持って創作活動をしているのかを知るのは楽しい。プロによるアドバイスや添削といった類もその片鱗が見えるから興味深く拝読している。

 1か月ほど前には、Twitterで中島梓さんの『小説道場』を引用したツイートを見た。引用で解説されている描写に関する指摘に興味を持ち、さっそく『小説道場』を手に取った。


 『小説道場』では中島先生が読者から寄せられた小説を添削し、その実力によって段位や級を与える。先生が講師であり、授業をするテイでつづられている。発刊が90年代初めごろということもあり今ではコンプライアンス的にいかがなものかという表現も時おり見かけるが、総じて読者(投稿者)への愛のある鞭は的確で分かりやすく胸に落ちる。

 くだんの引用されていたツイートでは、無闇やたらに風景を描写するなという指摘があった。タバコを吸う描写に何行も使ってはいけない、「煙草を吸った」で済ませて他のもっと描写を裂くべき場面にページ数を使うべき、と。

 投稿主の小説に「カメラ・アイ」が抜けているとも先生は指摘し、フィルム20枚しかないカメラで結婚式を撮影する際、サラダの写真に2枚も使うか?と説いている。

 確かに!と私もツイート主同様に目から鱗が落ち、『小説道場』を1巻から読み始めた。今ちょうど2巻目を読んでいる。


 読み進めるうちに感じたのは、自分が書いている小説にも中島先生がおっしゃる修正点が非常に多いことだ。説明しなくてもいいことに行を割いていたり、人物の造形がきちんと伝わらない書き方になっていたりする。もし自分の小説を道場に出していたらと慄然とする。

 楽しんで書いている分には気づかない。楽しく書くことも大事だが、一歩引いて「どうすれば分かりやすいか」を意識しないといけないなあと感じた。


 また、漫画『ワールドトリガー』作者である葦原大介先生による「設定の作り方」も非常に興味深かった。こちらもTwitterで見かけたものだ。ジャンプSQ.編集部が画像を付してツイートされていたので、リンクを貼らせていただく。カクヨムの仕様上直接リンクに飛べないようなので、気が向いた人は別タブで開いてご一読ください。


https://twitter.com/JUMP_SQ/status/1510829800583143427



 これを読み、「『ワールドトリガー』すごすぎ……そりゃあんなに面白いもの……」と思う反面、「私、やっちゃいけないこと、けっこうやってる」と血を吐く思い(漫画的表現)であった。作り込みや構成の段階でもっと考えないといけないなあと自戒しきりだ。


 が、ただ打ちひしがれているのももったいない。恥ずかしさもこみ上げるが、恥ずかしさから作品を非公開にするのも違う気がする。ここはいっそ明るく開き直り、直せる箇所は直して、ここから紡いでいく話はこれらの創作論を参考にしていこうと思う。アマチュアが最初から完璧なものを出そうとしても途中で挫折するのがオチだ。今から話の構成を変えて書くとなると私は確実に挫折する。

 ここはいっそ明るく開き直り、途中から気をつけて書くようになりましたという感じに方向を転換したい。そのためにもインプットとアウトプットをバランス良く行い、着実にステップアップしていければいいなと思っている。

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