　何にでも自分の話に持っていきたい人はいる。幸い、実生活で遭遇したことはない。伝聞やフィクションで語られるのを見ては、面白いところに頭を使っているなと思う。

　即座に会話の手綱を自分に引き寄せる手腕はある種の才能だ。話題から自分に持っていける部分をピックアップし、流れるように主導権を奪う。相対している側だったら心の中で舌打ちのひとつでもしたくなるだろうが、第三者として見ている分には面白がれそうだ。

　投資系の怪しいTwitterアカウントを見かけると「お、今日もやってんなァ」と感じる。断りを入れておくがそういったアカウントをフォローはしていない。Twitterのトレンドを辿った際、たまにそのテのつぶやきを見かけるのだ。

　トレンドに「生活困窮」が乗っていて、タップすると数多のツイートに紛れて「生活困窮すると辛いよね💦でも私のように月50万稼ぐようになったら人生変わるよ！」といった文面が。説得力を増すためにか、やたら桁の多い預金残高の写真や札束の写真が添えられている。

　あれらの牽強付会ぶりはすごいものだ。言わずもがな預金残高の写真は加工だし、札束の画像も拾いもの。アイコンは若い女性が多いが、それも拾いものだろう。怪しい投資の話しかしておらず、頻繁にLINEで友達登録するよう言いまわっている。登録すれば個人情報を抜かれるか怪しい投資の話を持ちかけられるかだ。

　そういったアカウントが規制されていないのもいかがなものかと思うが、規則の目をかいくぐってギリギリセーフのラインだったりするのだろうか。規則の抜け穴を探す暇があれば別の方法を模索すればいいのにとも思う。

　それに、詐欺まがいの怪しいプランをさも成功への近道かのように見せかけて情報リテラシーに疎い人を釣り上げようとする魂胆がまずいただけない。なるべく早く彼らが絶滅するのを願うばかりだ。

　唯一の長所（と呼んでいいか微妙だが）は、こじつけの才能だ。どれだけ自分に縁遠いトレンドワードでも、ものすごい話の持っていきかたで投資にこじつける。

　「睡眠時間」がトレンドに入ったなら「みんな睡眠時間短すぎ！私は寝すぎなのかな？これも月100万稼げてるからだけど」と騙り、「東京2000人」がトレンドにのぼれば「東京2000人とかやばくない！？…家から出なくても増やしていける方法を考えないとね」と画像を乗せ、Twitterに投げ銭機能がつくかもと他ユーザーがつぶやけば「Twitterに投げ銭機能ってほんと？でも私はいま十分稼げてるから大丈夫かな。秘訣を知りたい人はDMください」とつぶやく。……ちょっと文章の流れやリズムが「雨ニモ負ケズ」の一節じみてしまったが、こういう人間に私はなりたくない。

　挙げた例は実際に見たものに多少の改変を加えたものだ。実際はもう少しストレートな物言いのこともあれば、長めの文章で一見するとそうとは見えない厄介なものもある。複数のトレンドを組み合わせて強引すぎる展開を繰り広げるものも少なくはない。

　共通しているのはトレンドをうまく歪曲して自分の語りたい内容を詰めこんでいる点だ。手動でツイートしているのなら、こじつけるために頭を働かせているのかもしれない。必死にどう投資の話題にできるか連想ゲームを繰り広げている人が存在しているかと思うと笑える。

　ただ私が不勉強なだけで、自動的にトレンドを読み取ってそれっぽい文章を生成するプログラムが存在する可能性もあるが、それはそれでプログラム導入するより他にもっとコスパのいいやり方あったんじゃないの？と思いたくなる。

　絶対に投資に結びつかない単語ばかりがトレンド入りしたらどうなるのだろう。「フォッサマグナ」「モホロビチッチ不連続面」「モンテカルロ法」「暗号化アルゴリズム」らへんは3回くらい捻らないと投資の話に結びつかない気がする。どういう理屈を繰りだして投資に持ち込むのか、その泥仕合を見てみたい気も多少はある。絶対に投資の話に結びつけられない単語VSどんな話も絶対に投資に結びつける詐欺アカウントの戦い。

　とはいえ、悪質なアカウントの甘言を魅力的に感じる人がいるからこういった存在がはびこっているのもまた事実。経済的に困っていると心の余裕がなくなり、正誤の判断力も鈍りがちだ。そこにつけこむやり方は汚いし、そもそも経済的に困窮する人を出さない社会であるべきだ。

　少しでもこういったこじつけ投資詐欺アカウントの被害者が出ないよう、社会全体が良い方向に動くことを祈らずにはいられない。

　またいつ彼らと遭遇するか分からない。あなたがトレンドワードをタップしたときに彼らは成功者の仮面を被ってあなたの前に現れるだろう。あなたがトレンドをのぞくとき、投資詐欺アカウントもまたトレンドをのぞいているのだ。

　こう書くと彼らが好敵手みたいなふうに感じられるが、単なる害でしかないのでどうかお気をつけあれ。こじつけの仕方を笑い飛ばしつつ、間髪入れずTwitterへ報告するくらいの接し方がちょうどいいと思う。