気持ちが姿を変える時


 日記代わりのエッセイを書きはじめて早や数日、今のところ順調に更新できている。気分が乗っておらずとも書いていると次第にやる気が出てくるから感情とは不思議なものだと思う。


 継続が難しいのは言わずもがなだけれど、同じくらい難しいのが集中力を保って続けることだ。継続を重視するあまり、気持ちが入らないままズルズル続ける事態を危惧している。

 毎日続けると決めたのだから、でも気持ちが乗らないな、こんなもんでいいか……と妥協していくのが怖い。

 ……妥協していくのが怖い、と書くと、さもこれまでは妥協せずに物事を継続できているふうだが、恥ずかしながらわりと継続を重視するあまりに妥協コースになってしまうほうだ。

 3か月ほど前にリングフィットアドベンチャーと併用すべくフィットボクシング2を購入し毎日ボクシングに励んでいるのだが、まさにこれが妥協してしまっていた。


 フィットボクシング2はホーム画面で「○日継続中!」と継続日数が表示され、カレンダーに印がつけられる。妙に完璧主義な点が災いしたのと「どうせなら区切りのよいところまで」と欲を出したのが重なり、気分が乗らない日でもなんとかコントローラに手を伸ばす日が続いた。

 けれどもそういう日のボクシングは手打ちだったり注意力が散漫していたりで、継続するためだけの動きになっていたと反省している。ちょうどこの前100日連続を達成したので、これ以降はきちんと集中できる日に全力でやろうと考えを改めた。


 継続は素晴らしく見え、三日坊主は悪く思われがちだ。石の上にも三年ということわざは有名だし、短期間の離職は世間的にはよろしくないものと見なされている。

 そういう社会通念が自分の中に染み込んでいて、無理してでも続けようとするうちに気持ちがついていけず、ダラダラと続ける悪循環にハマる。あるいは、気持ちが切れて継続が困難になる。ならば、断続的であってもメリハリをつけて本気で取り組んだ方が良い。


 継続からの妥協では、気持ちがいつの間にか変化している。最初は「よし、やるぞ」だったのが、気づけば「ああ今日もやらないと」になっている。ひょっこりと顔を出した「~しないと」の考えは意外に根深い。そのくせ気づくのが遅れるから厄介だ。


 いつの間にか感情が当初のものから変化していることは往々にして多い。仕事で気を利かせてフォローをするうちに「助けてあげているのに」と思った経験がある。頼まれたわけではなく、自分の負担を減らすためであったり単純な好意であったりしたはずなのに、いつしか気持ちが姿を変えていて、それに自分で驚く。

 「気になる存在」が「大好き」になるのも、「ちょっとムカつく」が「殺したいほど憎い」になるのも、「慕っている」が「どうして私を見てくれない」になるのもよくある話だ。

 話で聞くぶんには、いつの間にかねえ、へええ、だなんて達観できるが、いざ自分の身に降りかかるとどこでどう気持ちが変化しているのかには気づけない。気づけばあっという間に感情は変貌を遂げている。


 自分を第三者の視点から冷静に見つめる分身が欲しい。短時間で絵が変わるアハ体験クイズのごとく、じっと自分を見つめて「いま気持ちが変わったよ!! 大丈夫!?」と声をかけたい。そうか、今はもう違う感情を抱いているのか、と自覚できれば身の振り方も変わってくるだろうし。

 だが、第三者の視点の自分ですらも、じっと対象を見続けるうちに妥協してナアナアな判断になるかもしれない。となると第三者の視点の私を見つめる別の分身が必要だ。そしてその分身を見つめるこれまた別の分身が……と、終わらないマトリョーシカができあがりそうな予感もする。


 やはり手っ取り早いのは日ごろから自分が何を考えているか自省することだろう。なのでこのエッセイも気張らず自分のやる気や気持ちを優先させる。今後も毎日更新するかもしれないし、断続的になる時期もあるだろう。今日まで連日更新できたことが翻って足枷にならないよう留意してマイペースに続けていければいい。

 日々の運動も、「集中してできるのはどっち?」と自分に問いかけて気持ちを確かめ、集中してリングフィットアドベンチャーなりフィットボクシング2をやりたい。だが怠惰な自分が「どっちも集中してできないから今日は運動しないでお菓子とアイス食べて寝よ!!!ね!!!」と声高に主張しそうで気は抜けない。

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