第3話 夏の前

2週間後

ギプスはとれて包帯で固定し直したので、右手は多少使えるようになったが、白石はその後も、1ヶ月間ルーズリーフを書いてくれた。


オレはバインダーにファイルした。

何度見返しても本当にすごい。そう思える書き方だった。


肩も少しずつ回復して、2ヶ月後。

やっと包帯も全部取れた。

折れた所に緊急手術した傷痕がまだある。


傷を指先でそっと撫でてみる。

悔しい思いが溢れてくるが、それを押しとどめた。


もう終わったんだ、と。


今年、柔道部は大会予選落ち。

オレの怪我の後、もう1人のレギュラーも怪我をして、別の補欠が入ったものの、実戦慣れしていなかった事から、負けてしまった。


俺にとっての部活は本当に終わった。

更には、オレの柔道に対する思いも消えてしまった。小学生の頃から、あれほど一生懸命に、夢中になっていたのに、なんとも気が抜けてしまった。


その代わりというのも変だが、ひー君がバドミントン個人の部で優勝し、学校が一時お祭り騒ぎになった。

友達として嬉しかったし、何よりひー君が、「イッチー。仇はうったゼ!」と言ってくれたのが、嬉しかった。

さらに、ただでさえ女子にモテているひー君は、近隣の学校の女生徒からも人気者になった。


白石が、

「日野っちは相変わらずモテるねー。それに比べて…」

そう言ってオレを見た。


 …ほっとけ。


「……まぁ、だからしおちゃんとは、ダメになったんだけどね」


「は?! なになに?ひー君と、伊東ってそんなんだったの?!」


はっとして、頭の後ろで手を組み、

ソッポを向いて口笛をふく白石(音出てねぇよ)。


……おせーわ。まぁ、別に不思議には思わないけど。

アイツら同じ塾に通ってたし、2人だけでいるところを、時々見かけた事もある。付き合ってるとかじゃなく、仲が良かったのは確かだ。


期末テスト

オレは白石の注釈ノートのおかげで、成績は、いつもより良かった。


そんなこんなで、夏休み前のイベントは全て終わった。

後は進学先の決定だけだ。


ノートの件で、何か白石にお礼がしたいと言ってみたら、

「なら、夏休みにみんな誘って遊びに行こうよ!」

となったので、かつての仲良しグループに声をかけていった。


男子組の西田(西やん)と日野(ひー君)は同じ学校だからすぐ声をかけられたが、

大城と伊東はそれぞれ別の学校だから、スケジュールを合わせるのが大変だ、と思ったが、すんなり決定した。

女子組は普段から連絡を取っていたからだそうだ。


オレ以外は、みんな頭が良い(容姿も)のに、どうしてか気が合って、よく遊んだ仲だ。


この頃、俺達は全員ケータイを持っていた。

今のスマホほどでは無いものの、ショートメールが使えたので重宝した。

連絡先を交換して、短いながらも以前の様にみんなと活発に連絡できる様になったのは、嬉しかった。


そしてプールへ行こう、となった。

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