第1話 再会

突然の再会だった。


「やだ、坂井じゃん!久しぶりー!」


「………?」


「あー!忘れてるなぁ。私だよ、白石ぃぃ!」


中学3年生のクラス替えで、小6以来となる再会だった。


彼女は小学校卒業後、別の学区の中学校に行っていた、はずだ。


「やだ、なに見とれてるの?まぁしょうがないよね?こんな美少女が目の前にいるんだもんね?」


クククッと笑う彼女の顔を、ジッと見て、「…その、ガサツな言い方。間違いなく白石だ!」


ズビシッ、と指差すオレ。

ズッコける白石。


「ひどっ!」


彼女とは小6の頃、仲良くしていた。明るい性格で、いつも軽口を言いあっていた。


「いつコッチに?全然知らなかった」


「ごめんごめん。3年生からなんだけど、あまりに急だったんでさ、しおちゃん達にも一昨日連絡したばっかり」


そう言う彼女が「あの」白石だとは信じられなかった。

以前は、ショートヘアでメガネをかけた、ボーイッシュな子だったからだ。

今、目の前にいる女の子は、セミロングヘアでメガネをしていない。

しかも、大人っぽくなっている。気づかなかった。

とはいえ、目の前で笑っている女の子は、確かにオレの知ってる白石だった。


あまりにも驚いたが、簡単に近況をオレ達は話した。


現在オレは柔道部、の補欠。


白石は帰宅部で、ほとんど塾通いの日々だそうだ。彼女の夢は、検査技師。その為に頑張っているのだ。


「坂井は、最期の大会出られそう?」


「ちょっとチャンスあるんだ。」


実はレギュラーの1人が体調不良で、補欠組にチャンスが巡ってきていたのだ。

小学生の頃は、柔道場に通っていたのに補欠のオレ。だから自分で言うのもなんだが、オレが最有力候補、という訳だ。

その為、今まで以上に練習に熱が入っていた。


「白石…は、勉強大変だね?」


「ばかねぇ。気軽に呼び捨てでいいよ」


「そか」


「…まぁ、大変じゃないって言ったらウソだけど、やっぱり自分の夢の為だからね?ここが頑張り所でしょ?」


「偉いな。そういうとこは昔から変わらないのな?」


「ふふん!」

腕を組んで胸を反らし、鼻息を「ムフーッ」とだす彼女。

……相変わらず偉そうだなぁ。


「そういう坂井も相変わらず、柔道好きだね?尊敬するよ」


ちょっと動揺する。すかさず、


「あっ!顔赤いぞ〜?ほめられてうれしいの?ん?」


黙ってしまうオレ。


「ちょ、なに?やだ〜」


そう言って、白石は誤魔化した。


クラスの席順で、オレは白石と1番前で、隣同士になった。

これも何かの縁かな?などと考えていると、


「やっぱ、私たちって運命の仲なのかなぁ?」


……心を読むなよ。


「なんてね、よろしくね!」


「ああ。よろしくな」


小学校の頃を思い出していた。

あの頃も、こんな感じだった。他の友達より気兼ねなく、意気投合できる子だった。


オレは横をそっと見る。

大人びた彼女の横顔に、ドキッとした。


…きれいになったな。

その日は、その事ばかり考えていた。

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