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 遊園地に着くと最初にカップぐるぐるに乗った。前田君が少し酔ってしまったようだが、続いてジェット○○スター。これは完全に酔ってしまってトイレで吐いたそう。

「度胸あるとこ見せないとな」

「無理しなくてもいいよ」

 私はと言うと、意外と酔うことはなかった。逆に楽しくなっていた。

 前田君の弱い部分が見れて、少しほっとした。走るのは速いけど、こういうのは弱いんだ。

 次はお化け屋敷。

 ……。あまり怖くなかった。前田君も怖がる様子もなく、ただの散歩だった。せっかく飛び付くチャンスをうかがっていたのに。

 アイスクリームを買ってベンチに座る。私はわざとクリームを口の端に付け、前田君を見つめる。

「園部、アイスクリーム、付いてるぞ」

 前田君の指が私の口に触れる。その指が拭き取ったアイスクリームを自分の口に運ぶ。間接キスだった。私が間接キスをしたわけではないのに、バクバクと心臓が高鳴る。

「間接キス、だね」

 前田君は気づいて頬を染める。互いに俯きながら時が流れる。

「帰ろうか」

 気恥ずかしさを隠すためか私の手を引くと遊園地の出口に向かう。


 帰り道。

「今日は楽しかったね」

「ああ、俺も楽しかったよ。でももうカップぐるぐるとジェット○○スターは勘弁。一生乗らないかもな(笑)」

「前田君にもダメなところあるんだ」

「人間だからな、一応」

「そっか」



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