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「ついに美花に春が来たか」

 目を細める姉。

「男の子同士の恋愛ものにハマっていた時はどうなることかと思ってたよ」

「るっさいなあ」

「で、誰? もしかしてもしかすると神山?」

「違うっ!」

「照れなさんな。それで、デートはいつ?」

「明日」

「明日?」

「そう」

「ふーん。頑張れ、美花」

 私は買った服を大切にしまい、明日のデートのイメージをする。

「カップぐるぐる乗って、ジェット○○スター乗って、お化け屋敷に入って、アイスクリームを食べて、口の端に残ったアイスクリームを前田君が指で拭き取ってくれて、そして、そして……」

「美花、妄想力豊かだね」

「妄想力じゃない。想像力って言ってよ」

「どっちでもいいよ」

 考えれば考えるほどイメージは膨らんでいった。楽しくて楽しくて、明日のことを想像しているだけでも大満足だった。夜になっても私の想像は止まず、結局睡眠時間は三時間。朝起きたら目の下が少し黒くなっていた。

 そして――。


 駅前の時計台。そこに前田君がいた。

「前田君?」

「園部(そのべ)?」

 互いに私服なので確認してしまう。

「学校の制服姿とは違ってカッコイイよ」

「園部も。私服、可愛い」

「ありがとう」

「じゃ、行こうか」

 前田君に手を引かれ遊園地に向かう。ドキドキが手を伝って前田君に届いていないだろうか。そんなことを考えると余計に緊張してきてしまう。




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