3
とにかくそれ以来、おれは真奈美が気になって仕方なくなった。マスミちゃんの中の人……と思うと、いやでも意識してしまう。
そして……
真奈美の方も、おれをからかうような言動が少なくなっていた。今まで気軽に話せていたのに、最近はどうにも会話がぎこちない。
やっぱり彼女も、おれがマーシーと知って意識しているのか……
こうなったらもう、真奈美に直接聞いて確かめるしかない。マスミちゃんの中の人なのかどうか……
---
「え……」
LINE で真奈美を体育館裏に呼び出し、おれがさっそく問いかけると、彼女は目を丸くして絶句する。
この反応は……やはり、
「……どうして、そう思ったの?」
そう聞かれておれは、プライベートチャットの事を話した。すると、彼女は額に手を当てて大きくため息をつき、
「あちゃあ……やらかしたわ。あたしじゃない、って言っても今さら信じられないよね……」
そう言って肩を落とす。
「そりゃそうだろ」おれはうなずいてみせる。
「……分かった。それじゃ、マスミに会わせてあげる」
「!」
あっけらかんと放たれた真奈美のその一言に、おれは脳天からぶちのめされた気分だった。
やはり、彼女がマスミちゃんだったのか……
---
日曜日。真奈美との待ち合わせ場所は、郊外の雑居ビルの前だった。おれが着いた時には
「ここの2階がマスミちゃんねるの撮影スタジオ。モーションキャプチャーの機材もある。親戚が経営しているからタダで借りられるの」と、真奈美。
「……なるほどな」
おれたちは階段を上がり、スタジオのドアを開く。中は学校の教室の半分くらいの広さで、
「それじゃ、ちょっと準備するね」
言い残し、真奈美が部屋の奥のカーテンの向こうに消える。ヤベェ……ドキドキが止まらねぇ……
やがて。
『ちぇすと―! マーシーこと松本雅也さん、マスミちゃんねる収録スタジオにようこそ!』
聞き慣れたあの萌えボイスが室内に
カーテンが開き、全身黒づくめで
「ええええええ!」
思わずおれは絶叫する。だって、その人は……
「……健人さん!」
そう。真奈美の兄、健人さんだったのだ。
『そうでぇす! わたしがマスミの中の人でぇす!』萌えボイスでそう言ってから、健人さんはヘッドセットを外し、ニヤリとする。「驚いたか?」
いや、驚いたなんてもんじゃない。
まさか、健人さんが……マスミちゃんだったとは……
---
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます