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 とにかくそれ以来、おれは真奈美が気になって仕方なくなった。マスミちゃんの中の人……と思うと、いやでも意識してしまう。


 そして……


 真奈美の方も、おれをからかうような言動が少なくなっていた。今まで気軽に話せていたのに、最近はどうにも会話がぎこちない。


 やっぱり彼女も、おれがマーシーと知って意識しているのか……


 こうなったらもう、真奈美に直接聞いて確かめるしかない。マスミちゃんの中の人なのかどうか……


---


「え……」


 LINE で真奈美を体育館裏に呼び出し、おれがさっそく問いかけると、彼女は目を丸くして絶句する。


 この反応は……やはり、図星ビンゴか……?


「……どうして、そう思ったの?」


 そう聞かれておれは、プライベートチャットの事を話した。すると、彼女は額に手を当てて大きくため息をつき、


「あちゃあ……やらかしたわ。あたしじゃない、って言っても今さら信じられないよね……」


 そう言って肩を落とす。


「そりゃそうだろ」おれはうなずいてみせる。


「……分かった。それじゃ、マスミに会わせてあげる」


「!」


 あっけらかんと放たれた真奈美のその一言に、おれは脳天からぶちのめされた気分だった。


 やはり、彼女がマスミちゃんだったのか……


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 日曜日。真奈美との待ち合わせ場所は、郊外の雑居ビルの前だった。おれが着いた時にはすでに彼女は玄関でおれを待っていた。


「ここの2階がマスミちゃんねるの撮影スタジオ。モーションキャプチャーの機材もある。親戚が経営しているからタダで借りられるの」と、真奈美。


「……なるほどな」


 おれたちは階段を上がり、スタジオのドアを開く。中は学校の教室の半分くらいの広さで、遮光しゃこうカーテンで囲まれたガランとした部屋だった。カメラやパソコン、スピーカーらしい機材が置かれている。


「それじゃ、ちょっと準備するね」


 言い残し、真奈美が部屋の奥のカーテンの向こうに消える。ヤベェ……ドキドキが止まらねぇ……


 やがて。


『ちぇすと―! マーシーこと松本雅也さん、マスミちゃんねる収録スタジオにようこそ!』


 聞き慣れたあの萌えボイスが室内に炸裂さくれつする。そして……


 カーテンが開き、全身黒づくめで所々ところどころ白いピンポン玉のようなマーカーの付いたキャプチャースーツとワイヤレスヘッドセットを装着した人物が姿を現した。


「ええええええ!」


 思わずおれは絶叫する。だって、その人は……













「……健人さん!」


 そう。真奈美の兄、健人さんだったのだ。


『そうでぇす! わたしがマスミの中の人でぇす!』萌えボイスでそう言ってから、健人さんはヘッドセットを外し、ニヤリとする。「驚いたか?」


 いや、驚いたなんてもんじゃない。


 まさか、健人さんが……マスミちゃんだったとは……


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