第2話-1

【2189年 10月11日午後11時48分】

【日本国 名古屋 トリエルミン前】

「ゆい、あいつ何?」

「いやわかんない。」

「鉄骨齧ってるよ?」

「やば。クロ3の精神治療部行きだね多分。」

咀嚼音。

「え?」

ただでさえ白い河原木かわらぎゆいの顔から暖かい色が消えていくのが分かる。

「ビル、喰えてる...?」

徐々に恐怖の波が人通りの多いトリエルミン広場の中を押し寄せていく。一斉にとはいかない。このような恐怖の行き所がない場合、人間は足がすくんで動き出せない。

「こっち来ないよね?大丈夫だよ...」

「iufweuiewvf」

「え?」

刹那、河原木ゆいの腕が無くなった。というより正確に言えば喰われた。


・「地人」の出現。


ビルを齧っているだけでなく自分にも危害が及ぶ可能性があるということが分かりたちまちトリエルミン前は混乱の渦と化した。信号を無視して車道に出て逃げ出す者。ひたすらビルの屋上など高いところに逃げていく者。周りの者に助けを求める者。危機の脱し方は人によってそれぞれである。


「時刻は10月11日午後11時53分。緊急のニュースです。名古屋のトリエルミン前で一般人の河原木ゆいさん23歳が何者かに腕をかみちぎられ意識不明の重体です。未だ腕をかみちぎった男の情報は定かではありません。名古屋にお住いの皆様、特に新名古屋駅付近の皆様は落ち着いて屋内に避難をしてください。」

「しかし、ご安心ください。」


「現場からの報告によるとクローバーの3の治安統括部が現場に到着したとのことです。」


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