相棒②

 衝撃を受けて押し黙って震えている男に、急に興味を失い、おれは相棒に近付き話し掛ける。

「ゼロ、お前と組む事が有るとは思わなかったよ」

 ゼロは無邪気な顔をして「何で?」と微笑む。

「取り合えず礼は言っとくよ。煩い奴を追っ払ってくれてありがと。もう少しでゼンが殺しちゃいそうだったし」

 隣に居るゼンはまだ険しい顔をしている。

「もう、機嫌直してよゼン」

 耳元でゼロが何か囁くと、ゼンは渋々ながら殺気を収めた。


「ボスが何のつもりで、おれ達を組ませたか分からないが、よろしくなゼロ」

「さあ、また相棒を殺さない様に監視するつもりなんじゃない? ね、ショーゴ」

 いちいち勘に障る奴だ。でも、腕は確かなのは間違い無いし、性格が正反対なのは仕事には都合が良い。




「ゼロとショーゴ。本日付けでパートナーとなる事を命ずる」

 昨日の昼に呼び出しを受けて、副社長から言い渡された。

 殺し屋の組織のくせに、表面的は普通の会社になっている此処は、地上13階地下2階建てのビルの中。

 表向きは建築会社の所有で名前も会社から取られた。

『アース』――悪趣味な名だ。


 ゼロ=レイジは、つまらなそうに「ふぅん」と言ったきり黙り込んだ。

「何故です? 今までおれ達が組んだ事なんて無かったじゃ……」

 副社長は、まるで蝿を追い払うかの様に手を振り、出て行けと言った。


「社長命令だ、私にも分からん。それに、お前達には余り関わるなと言われてる」

『誘惑されて殺されては、叶わないからな』

 人を見下した様な目で見てる副社長に、不意に殺意が沸き上がる。


「所詮お前たちは、社長に媚売って出世したんだし、その綺麗な顔と身体が無きゃ、使い途がない」

 黙って聴いていたレイジがその時、デスクに腰掛け、副社長のタイを引っ張り耳元で囁く。


「そんなオレ達を抱いて、気持ちヨガッタのは誰だよ。なあ、副社長。ヤリたくないの?」

 うるんだ瞳で誘うレイジを、おれは止めると副社長は、何処か残念そうな顔で出て行け! と叫ぶ。

 ――やれやれ、前途多難だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る