レイジ③

「レイ、そんな悲しい顔するな。遅くなっても良いから俺の部屋に来いよ」

「べつに、昔の事を思い出していただけさ」

 もう、忘れた筈だったのに。オレ、まだ気にしてたのか?

 急にゼンが、オレの後ろを見て眉間に皺を寄せ立ち上がった。


「ゼロに何か用があるのか? さっきからジロジロ見やがって」

 問われた男は、新入りの傭兵上がりの様で。

一緒に居る男は必死で止めていたが、ゼンよりも20㎝位高くて明らかに年下に見えるオレらは弱い奴らだと決めた様だ。


「なあ、止めとけって。お前が勝てる相手じゃない」

「何言ってるんだ? コイツらの何処が強く見えるって? 」

 その言葉に食堂に居た連中は、凍り付いた様に静かになった。

 馬鹿な男はその事に気付かずに、一緒に居た相棒が逃げて行ったのも分からぬまま。


「なあ、そこの綺麗な兄ちゃん。ソイツより俺にしないか?」

 満足させてあげるぜ。下卑た笑いを張り付けオレに近寄って来る。

 オレは、殺気を漂わせているゼンの首に絡み付いてキスをする。


「ねえ、お兄さん残念だったね。生憎間に合ってるから。 ね、ゼン。もう、一回やろ……」

 ゼンはせっぱ詰まった顔でオレを見て言う。

「レイ、誘うなよ……」

 その顔を見てたらホントに欲しくなる。

 周りが固唾を呑んで見守る中。不意に声を掛けられた。

「公共の場で何してるんだ?」

 振り返るとそこにヤツが居た。


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