懇願
「そこのおにーさん。
ほら、そこの、そこのおにーさんってば!」
うわぁ、めんどくせぇ。これ、
酔っ払い特有の絡みだろ。俺は聞こえないフリして鍵を鍵穴に差し込んだ。
カチャリと回し、息を呑む。
生きてるんだからほっとけばいいだろ。
声はちょっと聞き覚えあるけど、
関わったらやばいやつだし。
部屋に入ろうと思ったら入れなかった。
俺の足元にまとわりついてきた女。
顔を見たら滅茶苦茶美人だった。
思わず、息を呑む。
頬が紅潮してチークを塗ったみたいになってる。顔色はいい。
「おにーさん。介抱してよぉ...」
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