親友のお願い2
「うーん、今パッと思いつくようなツテはないな」
「そ、そっか……」
「でも他でもないお前の頼みだ、探してみるよ」
「ホントか!」
「ホントだよ。ただあんま期待すんなよ?」
ライナスの頼みなのだからミスリルを探すくらいどうってことはない。
ただしジケにもミスリルの心当たりなんてものはないのである。
回帰前だろうが回帰後だろうがミスリルが希少金属なことに変わりはない。
万年貧乏な貧民だったジケには包丁すらギリギリの代物だった時がある。
当然ミスリルなんてものは遠い世界のお話で、回帰前ならおとぎ話にすら思えたような存在である。
もちろん手にしたこともないのだから回帰前の知識を含めてミスリルがどこで手に入るかなんて知らない。
回帰前の酒場で聞いた話ではどこか遠い国にミスリル鉱山があって採掘作業として一年でも潜れば一生平民として暮らせるだけのお金が手に入るなんて聞いたことがある。
その代わりにとんでもなく危険で死者も出るような作業だとも聞いた。
今なら絶対にやりはしないが当時は近かったらやっていただろうなと思っていた。
「にしても……ミスリルなんて何に使うんだ?」
「武器一個分っていうからには武器作るんじゃね?」
「まあ……そうか」
ミスリルを手に入れて飾っておくなんてことはしないだろう。
少しの量ではなくわざわざ武器一個分なんて指定をしたのだから武器を作るのだろう。
「お前の武器作ってくれるのかな?」
「だったらいいな。俺もお前みたいなカッコイイ武器欲しいしな」
ライナスはチラリとテーブルに立てかけてあるレーヴィンを見る。
ジケの魔剣であるレーヴィンのことはライナスも羨ましく思っている。
技術は武器を選ばないとビクシムは言っていたけれど良い武器があれば良いのは当然のことだ。
「全ミスリルの武器なんてアホみたいなことになるぞ」
「アホみたいな武器……いいなぁ」
ミスリルは少し他の金属に混ぜるだけでも効果を発揮する。
普通ミスリルだけで武器を作ることはしないのだけど武器一個分ということはミスリルだけで武器を作ろうとしているのではないかと思った。
「金……足りるか?」
「……あ、分かんね」
それだけのミスリルを手に入れるには莫大な金額が必要である。
ライナスのこれまでの給料をかき集めても足りないだろう。
ビクシムからいくらかもらっているようだけどそれでも足りるかどうか分からないぐらいである。
「でもお前、俺があげたやつあんじゃん?」
「ないよ」
「えっ?」
以前ジケはパルンサンの宝物庫で見つけた魔剣をライナスにあげた。
そういえば持っていないなと今更気がついた。
「おま……失くしたのか?」
「んな……怖い顔すんなって! 失くしたんじゃないよ!」
流石にジケの顔が怖くなってライナスは慌てて否定する。
「じゃあどうしたんだよ?」
「師匠に取られた……」
「はぁ?」
「みんなに自慢して回ってたらお前にはまだ過ぎたもんだって……」
ライナスはガックリと肩を落とす。
魔剣は優れた性能を持つ。
ただ魔剣の切れ味に頼ってしまえば成長は阻害されてしまう。
自慢して回ってるのもなんかムカついたし、ちゃんと理由もありつつライナスの魔剣は没収されていた。
ジケもグルゼイから鈍い切れ味の剣を渡されて使えと言われたこともあるので似たようなものである。
とりあえず失くしていなくてよかったとジケはホッとする。
「いーよなー。俺は持ってんのに使えないってさ〜」
拗ねたようにライナスはフィオスのことをつっつく。
「まあとりあえず探すだけ探してみるからそう拗ねんなよ」
いくらになるかなんてミスリルを見つけてみなければ分からない。
しょうがないからミスリルは探してやる。
「ほんっとにありがとう〜!」
「抱きつくな!」
「……あんたたち何してんのよ?」
持つべきものは顔の広い親友であるとライナスがジケに抱きつく。
エニが家に帰ってきてイチャつく二人を見て怪訝そうな表情を浮かべていたのだった。
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