襲撃3
今回ジケたちは馬車できているのだがバーヘンや魔塔の魔法使いたちも馬車に乗っている。
異端審問官は馬に乗っていて、シダルケイから送られた護衛の兵士たちも馬での移動だった。
森を馬車で抜けるのは難しい。
そこで馬車を一部の護衛と魔塔の魔法使いたちに任せてジケたちは襲撃してきた男たちを追うことにした。
魔法を封じる秤の男でも来ない限りダンデムズたちを倒すことは無理だろう。
「ふふふ……ケフベラス、良いとこ見せるぞ!」
ただジケたちは馬車移動ではないので馬が足りない。
そこで異端審問官の馬に乗せてもらうことにしたりと工夫した。
エニはウィリアと同乗し、ユディットも異端審問官の馬に一緒に乗せてもらっている。
ニノサンは同情を拒否したけれど馬よりも早く移動できるので問題ないと言い切った。
確かにニノサンなら普通に馬に追いつけそうだ。
そしてジケはリアーネと一緒に行くことになった。
リアーネも馬車に乗っていたので馬なんか連れてきていない。
けれどリアーネには魔獣のケフベラスがいる。
大型の獣型の魔獣なので一応騎乗することもできるのだ。
別にバルダーあたりに乗せてもらってもよかったのだけどリアーネがうちのに乗ってけよというので乗せてもらった。
顔は怖めなケフベラスだけど意外と甘えん坊で真面目な良い魔獣である。
ケフベラスに乗せてもらうと思いの外に毛は柔らかくて温かい。
ハッハッとした呼吸に合わせて上下する感覚はちょっと面白いと思う。
「それじゃあいきましょうか!」
カイトラスたち護衛の兵士たちは本当にいいのだろうかと少し不安そうであるが、ジケが行ってしまえばついていくしかない。
「ははっ、よく掴まってろよ!」
リアーネはジケの後ろに乗る。
リアーネの方が大きいので自然とジケが包まれるような形になる。
鼻息洗いリアーネがズシッとジケに体重をかけると後頭部に柔らかいものが当たるなと少しドキッとする。
「ケフベラス、出来るだけ揺れないように頼むぞ!」
ケフベラスが走り出して森の中に入っていく。
思ったよりも揺れる。
「相手の逃げ方は雑ですね。こちらが追いかけてくるとは微塵も思っていないようです」
素早くあちこちに視線を向けながら相手の逃走経路を予想しているのはウィリアである。
戦力としてはやや弱めになるのだがウィリアの専門はこうした状況分析にあった。
細かな痕跡にも気づく卓越した目を持っている。
その目を活かして相手が逃げた方向を予想して森の中を抜けていく。
「このまま真っ直ぐ進みましょう」
バラバラに逃げていた相手が段々と集合していっていると痕跡を見ながらウィリアは思った。
ただそんなに逃走速度は速くない。
馬で追いかければ簡単に追いつける。
「……あちらの方です!」
森を抜けて草原に出た。
森よりも痕跡は少なくなるけれどウィリアの目は誤魔化せない。
「すごい能力だな」
初めてウィリアを頼もしいと思った。
痕跡を見抜く目とそれを瞬時に分析する能力は簡単に身につくものではない。
ウィリアが持つ天性の才能である。
「見えてきたぞ!」
だいぶ先に人の集団が見えた。
身なりからして襲ってきた奴らに間違いない。
「どっかに馬とか繋いでんのかな?」
素早く移動するためには馬などを使うのが普通であるが敵は走って逃げていた。
使わずに隠密に行動することも考えられるけれど広い草原を走って移動する意味は薄い。
となるとどこかに馬を隠しているのだろうとリアーネはつぶやいた。
ジケたちを襲撃するのに馬を離れたところにおいて待ち伏せしていたのだ。
「我々にお任せください!」
追跡に気づいた相手が部隊を半分ほどに分けた。
半分はそのまま逃げ、半分は時間を稼ぐようにその場に残って武器を取った。
カイトラスたち護衛の兵士がジケたちよりも先に走っていって戦い始める。
強さ的にはさほど違いはなさそうだけど人数的なところから護衛の兵士たちの方がそのまま勝ちそうだ。
護衛の兵士たちに任せて先に進むか、それとも一緒に戦うか微妙なところである。
「俺たちも戦うぞ!」
ジケは共に戦うことを選んだ。
逃げていった相手も徒歩であるし多少離れても追いつくことはできる。
人数有利があるといっても足止めをしようと必死に抵抗する相手と戦うと怪我をする可能性が大きい。
ここはジケたちも戦って被害を少しでも減らしながら素早く相手を倒すべきだと考えた。
「おらっ!」
大きな剣を手にリアーネは敵に突っ込む。
まるで馬にでも乗っているかのような安定感で剣を振るって敵を倒す。
ケフベラスに乗っての戦いもこなれているようであった。
一方でジケは振り落とされないように必死にケフベラスの毛に掴まる。
片手にフィオスも抱えているものだから落とさないようにも全力である。
ただフィオスは激しく動いているのが楽しいようだ。
「う、うひょ!?」
馬よりも柔軟にしなやかに動くケフベラスの動きはかなり激しく目が回る。
よくリアーネは平然と戦っていられるなと感心するし、魔獣との共闘もこうした形があるのだなと身をもって知った。
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