スカーアモ商会の正体
スカーアモ商会の正体は悪魔教であった。
前にスカーアモ商会の建物にいた男たちに話を聞いた気だるげな表情をした異端審問官が生きていた人たちをお話をして情報を聞き出した。
秤の男はビヒョンといい、悪魔教の中でも悪魔と接触することがある司祭と呼ばれる立場で男たちはビヒョンに集められた悪魔教の崇拝者であった。
ビヒョンが特に集めていたのは魔力が弱い者や魔力を持たない者。
おそらく魔力が少ない者ほど秤の影響を受けないからではないかと考えられた。
「フクリサという男、元傭兵のようですね」
色々な情報が出てきて異端審問官だけで調べるにも限界が出てきた。
そこでジケの勧めもあってマクサロスに協力を依頼することになった。
異端審問官からの情報提供を受けたマクサロスは素早く情報を処理して関連することを調べ始めた。
ビヒョンという男については何も出てこなかったけれどジケと戦ったフクリサという男についての情報は出てきた。
「元傭兵……」
「そちらの方面では多少名の知れた存在だったようです」
フクリサは金で雇われればなんでもする傭兵だった男で、腕が立つために界隈では名前が知られていた。
なのでマクサロスが調べてみるとフクリサという男の話は簡単に見つけられたのである。
有名な傭兵なのにどうして魔力がなかったのか。
それは魔獣を失ったからであった。
金で雇われて戦う最中に魔獣を出して戦ったのだが、魔獣が相手に殺されてしまったのだ。
魔力を与えてくれる魔獣がいなくなってしまったから魔力がほとんどないのである。
魔獣を失った人は再契約という新たな魔獣と契約することも可能なのだが、フクリサは再契約をせず魔獣を殺されて以降姿を消していた。
まさか魔力がないことに目をつけられて悪魔教にいるとは誰も思いもしなかった。
「調査のために雇っていた専門家にも見てもらいましたが薬を作っていたことは間違いないでしょう」
さらにお屋敷の中には薬を作っていたと思われる設備が置いてあった。
ほとんど黒であろうと思われたのだがマクサロスが薬などの調査のために雇っていた専門家が設備を確認して薬を作っていたのだとはっきりした。
「どうして馬車を定期購入していたのか分かりました」
薬を作っていたことに関わってシゴム商会から馬車を購入していた理由も判明した。
薬を作るためには特殊な毒草が必要となる。
町の近くにある山からその毒草は採れ、かなり強力な毒を持っている。
鎌で採った瞬間から毒草の切り口から毒が染み出してくる。
その輸送のために馬車が必要だった。
普通の荷馬車を使わず馬車を使っていた理由は周りから見えないようにするため。
しかし染み出した毒は馬車を劣化させてしまう。
表立って活動している組織なら劣化した馬車でも問題はないのだが、毒草の存在を隠したいスカーアモ商会にとって目に見えるほどに馬車が劣化してしまうのは避けたかった。
なので定期的に馬車を交換していたのだ。
「こうなるとシゴム商会は薬の販売も行っているのでしょう」
シゴム商会は定期的にスカーアモ商会に立ち寄り、スカーアモ商会は薬を作っていた。
さらにシゴム商会の商会長シゴムは不思議なほどにお金を持っている。
このことを考えてみるにシゴム商会はスカーアモ商会から薬を受け取って売り捌いているのではないかと思われた。
「無理にでもシゴム商会を調査する必要があるかもしれませんね」
薬を裏で売り捌いていたのなら許すことはできない。
ジケはマクサロスが静かに怒りを抱えていることを感じた。
もはやシゴム商会はマクサロスから逃げることはできないだろうなと思った。
「ジケ君の方もまだ終わっていないのですね?」
「ええ、そうです」
ビヒョンとフクリサは逃げてしまった。
お金や金目のものを持っていったようでジケのピンクダイヤモンドも持っていかれてしまったのである。
追跡魔法はまだ生きていて追いかけることはできるのだが追いかけねばならないという面倒さがある。
ジケが聞いた話ではかなりの速度で移動しているようでバーヘンとダンデムズたちが追跡を続けていた。
「何を探しているのかは聞きませんが……見つかるといいですね」
「そうですね」
最悪盗まれてもいいとは思っていたのだけれど相手が悪魔教なら話は別である。
悪魔教に盗まれてしまうとどんなことに利用されるか分かったものではない。
ピンクダイヤモンドのせいで何か事件が起きたらと考えるとジケも気が気でない。
これは絶対に取り戻さねばいけなくなってしまった。
「ひとまずこの情報はフェッツに渡してシゴム商会の方を詰めてもらいましょう」
「分かりました」
「いえいえ、ここ最近刺激がなかったのでなかなか面白い事件でした。私はこちらの方で薬の広まりを調査しますので何か分かりましたらフェッツの方に報告します」
「何もかもありがとうございます」
「ぜひとも恩にきていただければ私としても嬉しいです」
「今のところ息子になるつもりはありませんよ?」
「おやおや、それは残念です」
さして残念でもなさそうにマクサロスは笑った。
こんなことで息子になると言われるとマクサロスの方が驚いてしまう。
友人関係、あるいは師弟関係とも違う不思議がマクサロスとの間にはある。
ただ悪くない関係だなとジケも笑ったのであった。
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