悪魔の所業2

「それ加えて悪魔も魔道具を作り、人に与えることがある」


 魔法的な技術があれば人でも魔道具を作れるのならば悪魔でも魔道具を作れる。

 ただし悪魔は己の力に誇りを持っている。


 人間が扱うような魔法を補助する魔道具など悪魔には必要ではない。

 そして人のためになるような魔道具など作るはずもない。


 となると何を作るのか。

 自分の好きなものを作るのである。


 自分の能力や力を誇示するような特殊な魔道具を作るのだ。

 魔道具が持つ効果は様々なのだが、多くが破壊的な効果を持っている。


 その代わりに呪いにかかったり代償を払うような魔道具もあったりして人間にとって危険なものもたくさんある。

 人の命を代償として魔法、あるいは魔力を封じるなんていう魔道具が神のものなはずがない。


 そして仮に人が作ったものだとしたら希代の天才によるものだ。

 ダンジョン産ということも考えられる。


 しかしダンジョン産の魔道具は多くの場合効果が分からず魔塔に調査依頼が来たり流通に乗るので知られることになる。

 魔法を封じる魔道具などという強力な効果を持つ魔道具魔塔が放っておくはずがない。

 

 もっとも可能性が高いのは悪魔の魔道具である。

 悪魔の魔道具は悪魔が作って時にどこかに捨てられるように見つかったり、時に悪魔が人間に与えたりする。


「あのような効果を持つものはワシも知らん。となれば悪魔の魔道具に違いなかろう」


「その予想は間違っていないと思います」


「ウィリアさん」


 建物の中の調査を終えたウィリアが神妙な面持ちで出てきた。


「中に悪魔教の印が」


「じゃあ……」


「私たちの予想は間違っていなかったということになりますね」


 ウィリアたち異端審問官は悪魔教が関わっていると思って捜査に乗り出していた。

 悪魔教の印があったということはウィリアの予想は間違っていなかったのである。


「つまりあの秤も悪魔が作ったものの可能性が高そうだな」


「そうですね。悪魔教の男が持っていた不思議な魔道具でしたらほぼそうかと」


 悪魔教の男が持っていたことと効果の高さ、代償の大きさを考えると悪魔の魔道具であることは間違いないといっていい。


「中では色々見つかっていますけど金目のものはありませんでした。先に持ち出して逃げたようですね」


 薬を作っていたような痕跡は見つけられたがピンクダイヤモンドを含めた金目のものはなかった。

 戦いの最中になのか事前にそうするつもりだったのかは知らないけれど持って逃げてしまったようだ。


「ならばまだワシらに手伝えることもありそうだな」


 ピンクダイヤモンドを持って逃げたのなら追跡魔法が使える。

 悪魔の魔道具の影響を受けて魔法が消えていなきゃ追いかけることは可能になる。


「……まだ追いかけっこは続くのか」


 ここまで来たのにピンクダイヤモンドを取り戻せなかった。

 悪魔教も面倒なことをしてくれるとジケは小さくため息をついたのであった。

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