衝突! 異端審問官と魔塔1
後日ウィリアから連絡があった。
薬を販売している組織のところに踏み込むので協力してくれないかと。
なかなかマクサロスの方も進展がなく暇を持て余していたのでジケは手伝うことにした。
エニにはやっぱり厄介首突っ込むじゃん、と呆れられた。
「相変わらず……フィオスちゃん可愛いですね」
指定された一軒家でウィリアと合流する。
そこにはウィリアを含めた異端審問官がいて戦いの準備をしていた。
ウィリアはフィオスのことをフィオスちゃんと呼び、可愛いといって撫で回す。
フィオスも嬉しいのかプルプルしてそれに応えている。
「久しぶりだな、ジケ!」
「お久しぶりです、バルダーさん」
隻腕の異端審問官バルダーは異端審問官の中でも枢機卿という高い役職にいる人なのだが、未だに一線で戦い続けている。
ガッチリとした鎧の下にはその年にはふさわしくないほど鍛え抜かれた肉体が隠されている。
「グルゼイは元気にしているか?」
「相変わらずですよ」
「そうか、元気ならよかった。まああいつが元気ない時はくたばる時ぐらいだろうな」
「死にそうな時でも悪態ついてそうです」
「はははっ、そうかもしれないな!」
たとえ元気がなくてもグルゼイは変わらなそうだとジケは思う。
むしろ普段から元気いっぱいという感じではない。
「協力に感謝する」
「こちらも手が空いていたので」
「ウィリアが君に良いところを見せるのだと張り切っているぞ」
「うふふ、やりますよ!」
いつの間にかフィオスを抱えているウィリアはやる気を見せている。
実際のところジケの協力が必要かと言われれば必ずしもそうではない。
異端審問官にも十分な人数はいるしバルダーという実力者もいる。
たかが犯罪者組織には負けないだろうと自負がある。
けれどもウィリアはジケに良いところを見せたくて協力を要請したのだ。
若干私的な理由も混じっているけれどジケがいてくれれば確かに心強いとバルダーも協力要請することに許可を出した。
「ウィリア、改めて説明してやりなさい。俺は準備を整える」
「はい!」
たとえ勝てると思える相手でも手は抜かない。
バルダーが他の異端審問官と同じく作戦に備えて準備をしに離れる。
「今回ですがスカーアモ商会というところに踏み込みます」
「スカーアモ商会ですか?」
「知ってるんですか?」
「ええ、少しだけ」
スカーアモ商会といえばシゴム商会が定期的に馬車を売っている相手である。
商人ギルドにも所属している商会ではないために実態がいまいち分からない商会だとジケは聞いている。
怪しい商会としてマクサロスが調査をしてくれているはずなのだけどそこに踏み込むことになるところをなんてと驚いてしまった。
「最近動きが出てきて薬を売っている尻尾を掴んだのです。製造までやっているのかはまだ不明ですが販売の方で引っ張って調べようと思っているんです」
もしかしたらマクサロスが調査を始めたために何かしらの焦りでも生まれて異端審問官に掴まれたのかもしれない。
とりあえず薬を売っていることはほぼ確定なので薬を売っていることで踏み込んで、薬の入手方法を調べるつもりであった。
異端審問官としては薬の入手方法はスカーアモ商会が製造をしていると睨んでいる。
「ご協力を要請はいたしましたが……ジケ君を危ない目には遭わせませんから! 安心して私についてきてください!」
「…………この人大丈夫なの?」
「普段はもっとしっかりした人だから……」
ウィリアがちょっとお調子者に見えてエニは心配している。
ただウィリアはジケに良いところを見せたいだけでそれほど抜けた人でもない。
ボージェナルでの時はジケに守られてばかりだったのでここで一つ年上らしくできる人だと思われたかったのである。
「まあ……うん」
ウィリアの気持ちが少し分かるな、とリアーネは思った。
ジケは大人びていてなんでもできる。
親しくなるほどにその凄さが分かる。
そんなジケにすごいと思われたり尊敬できるところがあるのだと見せたい気持ちはリアーネにもある。
「今のところ危ないことはないと思うので私についてきてくださいね」
ーーーーー
スカーアモ商会は町の外れに近いところにある。
黒い鎧を身につけた異端審問官たちは歩いているだけで威圧感があって、異端審問官だと知らない人もさっと道を開ける。
「煙? 急ぐぞ!」
スカーアモ商会に向かっていると煙のようなものが上がっているのが見えた。
ちょうどスカーアモ商会があるあたりから煙が上がっていてバルダーは嫌な予感を覚えた。
異端審問官たちが走り出して、ジケたちもその後ろをついていく。
「あそこがスカーアモ商会です!」
「総員、戦闘準備をするんだ!」
煙が上がっているのはスカーアモ商会だった。
異端審問官たちは武器を抜いて警戒を強める。
「ふんっ!」
バルダーがスカーアモ商会の両開きのドアを戦斧で破壊して中に飛び込んでいく。
「……なんじゃ? また助けが来たのか?」
「うっ……ひっ……助けて」
「あの人は……」
中の状況は異常だった。
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