いるということは2
「少しだけ聞いたことがあります」
むしろ先ほど聞いたばかりである。
「でしたら話は早いです。その薬ですがどうにも悪魔教が関わっていて資金源になっている可能性があるんです。私たちはその調査に」
「なるほど」
薬の話がこんなところに繋がってくるなんてジケも驚きだ。
悪魔教がどんな連中なのかいまだに全容を把握し切れてはいないが、ボージェナルでの実験施設の規模を見るに相当なお金も必要である。
何かしらの方法でお金を稼いでいることはまず間違いない。
真っ当に稼いだお金を流すこともできるだろうが真っ当に稼いだお金の流れというのは他からも調査しやすい。
裏のお金を裏で使いたいなら裏で稼ぐということも必要になるのだ。
違法な薬となれば売る方も買う方も秘密にせざるを得ない。
危ないことをやっている悪魔教が手を出してもおかしくはないのである。
「本当に悪魔教なんですか?」
「来たばかりでまだ分からないんですけど、そこそこ危ない組織が関わってるみたいです」
「……気をつけてくださいよ?」
「今回はお父さんも来ているので大丈夫ですよ。むしろあの人は何か危ないこと起きれって思ってるぐらいです」
「あの人ならありそうですね……」
ウィリアの言うお父さんとはバルダーという異端審問官のことである。
戦斧を背負った体つきのいい老年の異端審問官バルダーのことはジケの記憶にもよく残っている。
やや暗い雰囲気のある異端審問官の中でカラッとした豪快な性格をしている人だった。
ジケの師匠であるグルゼイと旧知の中でウィリアの養父であり上司に当たる。
今は一緒にいないがバルダーも調査に同行してきているらしかった。
バルダーは隻腕だったがそれでも非常に強くてジケは全く敵わなかった。
身の回りにいるデカいジジイ強い奴ばっかりだなとふと思ったりする。
「ともかく悪魔教を追ってきた結果この町に辿り着いたんです。悪魔教と関わりがある証拠はまだありませんが仮になくとも違法な薬を扱うのは許せませんからね!」
異端審問官は正義の味方というわけではない。
悪魔教が悪いことをしているので結果として異端審問官が良いことをしているという形になっている。
しかし悪魔教と関係なければ何もしないというほど極端でもない。
調べてみて関わるのが適正でなければ他の然るべきところに情報を渡すこともあれば、そのまま解決までしてしまうこともある。
ウィリアのように誰かを助けようとする人もいるし悪魔教と関わりありませんで簡単に終わらせることはしない。
「もしお力が必要になりましたらご協力のお願いをしてもいいですか? あ、これは私の個人的なお願いですが……」
「もちろん、何かあったら喜んで力を貸すよ」
「ありがとうございます!」
悪魔教には色々と縁がある。
あまりいい縁ではないので悪縁とでもいおうか。
ヤバい連中だしウィリアが困っているのなら喜んで手を貸すつもりだ。
協力者でもあるが異端審問官についてジケはよく分からない監視対象にもなっているのでちゃんと悪魔教とは敵ですよってアピールにもなる。
「ジケ君も怪しいものは買ってはいけませんよ?」
「もちろん買いませんよ」
ウィリアはちょっとだけジケのことを子供扱いする。
別に悪い気分じゃないのでそのままの関係でいたいものだとジケは微笑んだ。
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